ヒーロー/靴をなくした天使

Hero

Stephen Frears / Dustin Hoffman,Geena Davis,Andy Garcia,Joan Cusack / 1992

★★★★★

これは大傑作

 スティーヴン・フリアーズ(『グリフターズ/詐欺師たち』)の落ち穂拾いのつもりで見たら、これが大傑作だった。現代風の味つけをしたフランク・キャプラという感じで、全体的なストーリーだけでなくクライマックスのシーンでも『群衆』が意識されている。

 主人公のダスティン・ホフマン(『マッド・シティ』『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』『スフィア』)が非常に良い。彼のフィルモグラフィーを見て驚愕したのだが、彼の映画俳優としてのキャリアは、1980年代に入った時点ですでにダメになっていた可能性がある。1998年の『スフィア』から遡っていくと、1997年の『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』、1996年の『スリーパーズ』(映画はそこそこだが、ホフマンは大したことない)、1996年の『アメリカン・バッファロー』(未見)、1995年の『アウトブレイク』(映画もホフマンもだめ)、1992年の本作、1991年の『ビリー・バスゲイト』(かろうじて合格点かもしれない、というレベル)、1991年の『フック』(映画はあまりよくないし、ホフマンは「怪演」ではあるけれどもねえ)、1990年の『ディック・トレイシー』(映画はそこそこ、ホフマンは大したことない)、1989年の『ファミリー・ビジネス』(映画は厳しく、ホフマンはあまりよくない)、1988年の『レインマン』(頑張っていることは認めるが)、1987年の『イシュタール』(おふざけ)、1982年の『トッツィー』(頑張っていることは認めるが)。そして、1979年の『アガサ/愛の失踪事件』(これはまとも)、1979年の『クレイマー、クレイマー』(まあ良い)、1978年の『ストレート・タイム』(これは良い)、1976年の『大統領の陰謀』(これも良い)、1976年の『マラソンマン』(傑作)、1974年の『レニー・ブルース』(傑作)、1973年の『パピヨン』(好きだ)、1972年の『アルフレード アルフレード』(良い)、1971年の『ケラーマン』(未見)、1971年の『わらの犬』(傑作)、1970年の『小さな巨人』(70年代テイストだが好きだ)、1969年の『ジョンとメリー』(好きだということで許してください)、1969年の『真夜中のカーボーイ』(あまり好きではないがやはり良い)、1967年の『卒業』(まあね)、そして劇場未公開のデビュー作、1967年の『ダスティン・ホフマンの100万$大捜査線』となる。

 思わぬことにダスティン・ホフマンの出演作一覧になってしまったが、このリストを見ると、1982年の『トッツィー』以降の彼は、どう頑張ってもアメリカ映画を代表する俳優とは言えないことが一目瞭然である。大物になってしまったがゆえに、出演作に不自由が生じている典型例だと思う(ロバート・デニーロも同じ)。その中で、この『ヒーロー/靴をなくした天使』だけは良い。それだけでも賞讃に値することだ。

 この映画では、アンディ・ガルシア(『NY検事局』『絶体×絶命』までもが良い。率直に言って、いままで見たどのアンディ・ガルシアよりも良く、これはジェームズ・スチュワートに並ぶ名優なんじゃないかとさえ思ってしまった瞬間がいくつかあった。ジーナ・デイヴィスは相変わらず良い。贔屓目でなく、クライマックスからエンディングまでの一連の登場場面は神業と言うべきものだった。その他、ジョーン・キューザックを含めて、脇役も万全である。

 私は、(いままでに見た)フランク・キャプラの映画の中では『群衆』が一番好きなので、かなりのバイアスがかかっているものと思うが、その要素だけでなく、細かいところでの現代的な演出や編集がきわめて優れている大傑作である。

DVDメモ。日本版。

予告編。

2000/11/9

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