ダンシング・ヒーロー

Strictly Ballroom

Baz Luhrmann / Paul Mercurio,Tara Morice / 1992

★★

ポテンシャルはあったが、下手

 『ロミオ&ジュリエット』のバズ・ラーマンのデビュー作。社交ダンスの大会に優勝することを目標として育てられてきた青年が、本物のラテン・ダンスに目覚めて大胆なステップを踊るという話。

 面白くなりそうな要素がいっぱいあるのに、次々とぶち壊しにしてくれるフラストレーションのたまる映画だった。主人公を演じるのは、シドニー・ダンス・カンパニーのトップダンサーだったポール・マーキュリオ。その踊りが美しく撮られていたかというと難しいところだ。この映画の根本的な問題は、彼の恋人となる女性(タラ・モーリス)のスペイン系の一族が踊る踊りの方がずっと魅力的だということである。ポール・マーキュリオとタラ・モーリスの代わりに、彼女の両親が出場すればいいのにと思ったことだった。しかし、彼が目指すダンス大会は、もとよりそういうスペイン系移民の出場が許されるような場ではないのである。

 まあ映画なんだから、そういうことはどうでもいい。説得力があればそれでいい。で、どういう風にすればこの映画に説得力が持たせられたかというと、ひとえに、最後に主人公のカップルが踊るシーンが、ポール・マーキュリオがタラ・モーリスの父親にラテンのステップを踊るシーンよりも美しければよいのだ。しかしこれが、映像として駄目なだけでなく、コレオグラフィーとしてもひどいことになっている。ここのコレオグラフィーは、彼女の父親から学んだラテンのステップを、彼が得意としていた社交ダンスのステップと融合させたクリエイティブなものになっていなくてはならなかった。そうなっていないから、上パラグラフに書いたような、「これじゃ本物のスペイン人が参入してきたら軒並みやられるんじゃないだろうか?」という疑問が生じてしまう。これはまた、クリエイティブなステップを踊ったことで傷を負った父親のリベンジを行うというメイン・テーマとも不整合である。ポール・マーキュリオは結局、別のカルチャーからステップを借りてきただけで、そこには何のクリエイティビティもないのだ。

 『ロミオ&ジュリエット』と同様に、MTV的な編集や広角レンズによるクロースアップの多用はうまく行っていない。しかし、前述の、ポール・マーキュリオがラテンのステップを習うシーンとか、彼の父親が一人静かに踊るシーンなど、魅力的な場面はいくつかあった。そういうのがうまく映画に統合されていないのが、かえってまずいとは言える。

 なお、やはりオーストラリアを舞台にした『エイミー』では、エイミーの母親のレイチェル・グリフィスがやはりスペイン系オーストラリア人で(たぶん2世か)、ラテンのダンスをベン・メンデルスゾーンと踊る場面があった。あの場面は、派手なステップはなくても非常に魅力的だった。私はオーストラリアにおけるスペイン系移民の位置について詳しく知らないのだが、気に留めておこうと思う。

2000/11/21

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