ヒマラヤ杉に降る雪

Snow Falling on Cedars

Scott Hicks / Ethan Hawke,Youki Kudoh(工藤夕貴),Rick Yune,Max von Sydow,James Rebhorn,James Cromwell,Sam Shephard / 1999

★★

ちょっと凝りすぎ

 監督のスコット・ヒックスは『シャイン』で有名になったオーストラリア人。本作はデヴィッド・グターソン(『死よ光よ』)の原作(『殺人容疑』)の映画化である。

 私は原作はあまり好きではなかったのだが、この映画も原作と同じような印象を与えた。アーティスティックな指向性に才能が追いついていない、ということだ。本作は、何人かの役者による素晴らしい演技と奇麗な映像が、下手な「アート指向」によって台無しにされているきわめてもったいない作品である。IMDBのユーザー・コメントでは、テレンス・マリック(『シン・レッド・ライン』)との類似性を指摘している人が何人かいたが、それはマリックに対して失礼というものだ。テレンス・マリックが優れているのは、あれだけ美しい映像とフィロソフィカルなテーマを盛り込みながら、そのせいで映画を台無しにしないという微妙なバランス感覚を備えている点にある。そういうバランス感覚が欠けていると、この『ヒマラヤ杉に降る雪』みたいになってしまうということ。

 マックス・フォン・シドー(弁護士)、ジェームズ・レブホーン(検事)、ジェームズ・クロムウェル(裁判官)、サム・シェパード(父親)、ダニエル・フォン・バーゲン(死んだ男)などが凄く良い。イーサン・ホークも珍しく良い方だ。ハリウッドのメジャー・デビューとなった工藤夕貴は、うーむこれでいいんだろうか。彼女だけでなく、この映画に出てくる日系人全般に、なんというか日本人を含む日系人全般のアメリカ映画というフィールドでの未熟さを感じてしまった。ちゃんとしたメソッドを学ばないと、演技の下手さがエキゾチックさで覆い隠されるような役しかできないんじゃないかと思う。彼女の少女時代を演じる鈴木杏は良かったが、あれはベトナム戦争映画に出てくるベトナム人少女の描き方であり、その文法に沿ってなんとか形をつけたという感じが濃厚。

 なお、この映画の音楽の使い方は稀に見るひどさだった。重厚な映像と重厚な音楽を組み合わせたら、何か意味のあるものができあがるという勘違いの現われ。

DVDメモ。日本版

予告編。メイキング。監督による音声解説トラック。

音声解説トラックは非常に興味深い。頭脳先行型で、映画そのものよりも面白いと言えるかも。

2000/11/21

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