アメリカン・ヒストリーX

American History X

Tony Kaye / Edward Norton,Edward Furlong,Beverly D'angelo,Jenifer Lien,Elliott Gould,Stacy Keach / 1998

★★★★

失敗作だが見応えあり

 監督のトニー・ケイは映画はこれが第1作。編集段階で映画会社と衝突し、主演のエドワード・ノートンに編集が任された。その後のいざこざで、監督が映画会社を訴えたといういわく付きの映画である。

 そういうわけで、この映画は完成品とはいえない。そのことが、この映画の根本的な問題の原因なんだと思われる。その根本的な問題とは、主人公のエドワード・ノートンとその弟のエドワード・ファーロングがなぜレイシストから転向したのかがまったくわからないということだ。いちおう反レイシズムをテーマとしているこの映画では、これは致命的な欠陥である。

 それにもかかわらず、この映画は強烈に見応えがある。とにかくエドワード・ノートンが凄い。それ以外の要素が全滅だといってもいいぐらいなのに、エドワード・ノートンが出ているところは軒並み良いんである。この人は若い頃のロバート・デニーロやダスティン・ホフマンと並び称される役者になることは確定した。20年後にいまのデニーロやホフマンみたいになっていると哀しいけれども。

 なお、この映画のエドワード・ノートンは、普通の青年→強烈なレイシスト→改心した男という変化をする。そのいずれもが物凄い説得力を持っているだけに、こういう風に変わってしまうのには相当な理由があるんだろうと思ってしまい、その理由が説得力をもって描かれていないせいで、余計に違和感が大きくなるのである。彼がインテリジェントな男であるという設定になっていることが余計に事態を悪くする。

 弟のエドワード・ファーロングについては、どっちにしろ最初からあんまり物を考えていない少年なので、それほど問題にはならない。この鈍さが演技なのか地なのかが分からないところがちょっと不気味ではあった。

 なお、この映画は「魅力的なレイシスト」を描いているという点で貴重である。その手の映画で魅力的だったのは、コスタ・ガヴラスの『背信の日々』(1988)。白人優越主義者のグループに潜入するFBI捜査官をデブラ・ウィンガーが演じていたが、そこにいたトム・ベレンジャーが、レイシストなんだが、魅力的なのである。しかしあの映画とは違って、本作は、エドワード・ノートンがレイシストであることそのものが魅力的だという、相当に腰の据わった設定だ。実にもったいない。

2000/11/26

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