真夜中のサバナ

Midnight in the Garden of Good and Evil

Clint Eastwood / John Cusack,Kevin Spacey,Jude Law,Alison Eastwood,The Lady Chablis,Kim Hunter / 1997

★★★★★

これは凄い

 クリント・イーストウッドの監督作品。出演はしていない。『トゥルー・クライム』の項に書いたように、このところのイーストウッドは自分自身に少々無理な役を当てはめて、かえって映画に害を与えていることが少なくないように思うが、本作にはそのような問題がない。でも、どこがいいのかと問われると説明に困る。この映画、話がまともに進行せず、あちこちで無駄な脱線を起こす。その無駄なところが見ていていちいち気持ちよいのである。

 ストーリーはずいぶんと違うが、最近見たスタンリー・キューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』を思い出した。本作のジョン・キューザックはあの映画のトム・クルーズのようにモラル上のジレンマを(それほど)抱えておらず、異様な世界を徘徊し、それらの世界に対してまともに反応する。このまともなところがモラリストのイーストウッドたる由縁ではある。この映画のジョン・キューザックは、いままで見たなかで一番といっていいほどチャーミングだった。

 そういえばこの映画のジョン・キューザックは『ヒマラヤ杉に降る雪』のイーサン・ホークにも似ている。裁判のシーンの作り方ひとつを見ても、イーストウッドがスコット・ヒックスとは段違いの腕前の映画作家であることがわかる。

 ケヴィン・スペイシーはまともな方。殺される若者の役にジュード・ロウ。映画の中で果たす役割が明確に定義されていない感じなのに、なぜか存在感のあるアリソン・イーストウッド。しかし一番強烈だったのは、ザ・レディ・シャブリという芸名/役名の黒人で、この人とジョン・キューザックのいくつかある掛け合いは映画史に残る美しい場面だと思った。なお、キャストの一覧を見ていたら、キム・ハンターの名前があった。パーティーにいた老婦人の役だろうか。

2000/12/17

 このザ・レディ・シャブリは本人らしい。原作は実際の事件を扱ったノンフィクションだが、その登場人物がそのまま自分の役を演じたとのこと。ちなみに、映画の脚本は原作をかなり改変したもので、結果として実際の出来事からずいぶんと乖離しているらしい。イーストウッドがどのように変えたのか興味深いので、原作も読んでみたい。

2000/12/31

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ