13ウォーリアーズ

13th Warrior,The

John McTiernan / Antonio Banderas,Diane Venora,Omar Sharif / 1999

★★★★

これは面白い

 ジョン・マクティアーナン監督。マイケル・クライトンの原作『北人伝説』の映画化。

 西暦10世紀、アントニオ・バンデラス演じるアラブ人が、北欧の男たちとともに村を守るという傭兵もの。まったく期待せずに見たのだが、これが非常に良かった。ジョン・マクティアーナン復活か? と思ったのだが、本作はマクティアーナンが途中で投げた映画らしく、実際、同年に公開された『トーマス・クラウン・アフェアー』は最悪である。

 考えてみれば、マクティアーナンの監督作品は、『ノーマッズ』(1985)、『プレデター』(1987)、『ダイ・ハード』(1988)、『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)、『ザ・スタンド』(1991)、『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993)、『ダイ・ハード3』(1995)、本作、『トーマス・クラウン・アフェアー』(1999)となっており、1990年代に入ってからは失敗作と呼ぶべきものばかりだったのである(『ザ・スタンド』は未見)。1980年代の3本も、個人的には『ノーマッズ』と『プレデター』がどちらも文句なく5つ星であったのに対し、『ダイ・ハード』は、ところどころ鋭い演出があったにせよ、全体的なパワーは落ちていた。公開時に見たときは、「一般受けする映画を作ろうとしたんだ」と思って自らを納得させていたのだが、いまから振り返れば残念ながら衰退の最初の兆候だったのだろう。

 本作は、彼の作品の中では『ダイ・ハード』に続く4位に入る佳作だと思う。いろいろと細かい問題はあるにせよ、10世紀の北欧という(非ファンタジー系の映画にしては)中途半端な時期のドラマが、これだけ堂々と描かれていることだけでも賞讃に値する。アントニオ・バンデラスが珍しく良いのだが、北欧の戦士たちを演じる、あまりなじみのないヨーロッパ系の、決してステロイド増強体形でない役者たちの存在感が素晴らしい。『プレデター』を思い出したせいで点が甘くなってしまったのかもしれないのだが、「無骨な勇気」という、口に出すのが恥ずかしい根源的な感性に訴えかけてくる映画だった。

 アラブ系ムスリム知識人が異教徒の蛮人たちに混じって戦うという興味深い設定がほとんど活かされていない、というよりも活かす積もりが最初からない剛直な脚本ではあるが、それゆえにかえって奥深さが出ていたような気がするから不思議だ。ふつうだったら、アントニオ・バンデラスの軟弱さとヴァイキング戦士たちの力強さ、一方アラビア人の知識と教養と蛮人たちの無知、みたいな対立関係をもっと強調し、両者が対立しながらも融合して素晴らしい力を生み出していくというアプローチが採られそうなこの設定を、ごくあっさりと流して、単に彼らは戦う。そしてこの戦いのシーンに説得力がありさえすれば、そうやってあっさりと流した部分がかえって抑え目の高度な演出に見えるという因果関係である。実際私は、この映画でほとんど描かれていない部分をいろいろと想像してしまって、いまではこの映画をその実体以上に豊かなものと思いこんでしまっているようだ。

 なお、この映画では、映画のなかで話される言葉に関して驚くべき解決方法が採られている。主人公はアラブ人で、北欧人たちとは話が通じない。映画の最初の時点で、アラブ人は英語を喋り、北欧人たちはスウェーデン語(だと思われる)を喋っているのだが、両者の間のコミュニケーションは(通訳を介して)ギリシャ語で行われる。さて、主人公は通訳なしで北欧人たちとともに旅をする。この先、コミュニケーションはどうなるのかと心配していたら、凄いことが起こった。北欧人たちの会話に少しずつ英語が混じってくるシーンでもって、主人公が彼らの言語を理解するようになったというプロセスを描いているのである。それ以降、映画のなかの会話は英語だけになり、最初のうちは強かった訛りが徐々にプレーンな英語になっていく(ように私には感じられた)その変化は、主人公がスウェーデン語(だと思われる)をよりよく理解できるようになったことの象徴なのだと思われる。

 私はいままでこういう解決方法を見たことがなかったので、非常に驚いた。そういえば言葉がらみでいまでも印象に強く残っているのは、『おかしなおかしな石器人』のギャグだった。この映画、石器時代が舞台なのでセリフがないのだが、唯一、アジア人の風貌の役者が英語を喋るんである。

2000/12/24

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