スチュアート・リトル

Stuart Little

Rob Minkoff / Hugh Laurie,Geena Davis,Jonathan Lipnicki,Michael J.Fox,Nathan Lane,Chazz Palminteri,Jennifer Tilly / 1999

★★★

とにかくCGIは凄い

 監督のロブ・ミンコフは『ライオン・キング』の共同監督の人である。脚本はM・ナイト・シャラマンのものをベースにしているらしい。E・B・ホワイトの子供向けファンタジーの映画化。

 ハツカネズミのスチュアートが、ヒュー・ローリーとジーナ・デイヴィス、そしてジョナサン・リプニッキ(『ザ・エージェント』の子役)のリトル家に養子として引き取られてくる。そこで起こるいろいろな騒動を描くという話。ネズミが人間の言葉を喋り、人間の家に養子に来ても誰も不思議に思わないような世界が設定されている。

 とにかく、このネズミのCGIは凄い。動物のCGIを使った映画で爬虫類ものが先行したのは技術的な理由からだったわけだが、この映画はついに哺乳類の体毛や骨格までをも再現するレベルにまで到達してしまった。CGIと実写を混在させる技術も高度。ちなみに、私がこれまで単純にCGIで驚いた映画は『トロン』(1982)と『ジュラシック・パーク』(1993)だったが、この『スチュアート・リトル』は3回目のブレークスルーのように見える。また、実写とアニメを混在させる技術という点では、『ロジャー・ラビット』(1988)も衝撃的だった。

 そして、ブレークスルー的な作品の例に洩れず、この『スチュアート・リトル』もテクニカルな面に集中しすぎて、映画としてのクオリティが犠牲になっているように思えた(『ロジャー・ラビット』はちょっと例外だが)。よく考えられている脚本なのだが、それの実現の仕方に余裕がない。84分という時間制限もあるが、スチュアートの出演料が高すぎる(CGのコストが高すぎる)ために、彼の出番をぎりぎりまで絞らなくてはならなかったという事情があったものと思われる。つまり、脚本やストーリーボードを煮詰めすぎた弊害が出ている。また、監督のアニメ出身という弱点がもろに出ているように思う。

 ストーリー上、重要な役目を担うネコたちに、『ベイブ』で使われた動物の表情をCGIで作る技術が使われており、この分野がどんどん進歩しているのがわかる。この映画のネコたちは、アニメ的に作られているネズミたちとはまた違ったリアルな表情を持っている。

 スチュアートの吹き替えはマイケル・J・フォックス。ニセの母親ネズミはジェニファー・ティリー(『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』では人形の吹き替えをやっていた。この映画のネズミの中では、この母親ネズミだけが実在の人間、すなわちジェニファー・ティリーその人をモデルにして作られたそうだ)。ネコの吹き替えはネイサン・レイン(そういえばこの人は『マウス・ハント』に人間役で出ていた)、チャズ・パルミンテリなどがやっている。いずれも芸達者で素晴らしい。のだが。純粋なセル・アニメーションや、それを擬したCGアニメーションとは異なり、リアリスティックな指向性を持つアニメ、特に実写との合成が行われているものでは、声優の芸達者さが必ずしもポジティブに働かないということがはっきりと見えてしまった例でもあった。特殊効果が見事にリアリスティックで、それと声優の演技が見事にマッチしていればいるほど、そのキャラクターは普通の人間の俳優と同列の存在に近くなっていく。すると、声優のオーバーアクティング気味の演技が、人間の俳優のオーバーアクティングと同じ意味合いを持ってしまうのである。

 本作では、それぞれの声優はうまく仕事をこなしているものの、全員がスラップスティックなカートゥーンの出演者のような躁的演技をしている。この点で、キャラクターの配分をうまくやっていた『ベイブ/都会へ行く』は優れていたと改めて思う。『GO! GO! ガジェット』はスラップスティックなアニメを人間が演じるという試みだったが、あれはマシュー・ブロデリックとルパート・エヴァレットの怪演に支えられていたのであり、本作のネズミやネコは、定義上、スラップスティック性を支えるだけの「怪演」を行うことはできない。

 なお、このストーリーからは異人種養子ものを連想した。ジェシカ・ラング主演の『代理人』"Losing Isaiah" (1995)は、白人夫婦が黒人の少年を養子にとったために起きるさまざまな問題を描いた映画だったが、この映画のスチュアートは白いけれども有色人種のメタファーである。脚本がインド系のナイト・シャラマンであることからさらに深読みすれば、ネズミはアジア系、ネコは黒人で、家猫は使用人のメタファー。養子斡旋所のコーディネーターが発する"species"という言葉がもろ"race"に置き換え可能だと気づいた時点で、あまり楽しめなくなってしまった。

DVDメモ。日本版

音声解説トラック、メイキング、未公開シーン、CGIの紹介などたくさん。

 メイキングはちょっとふざけている。スチュアート・リトルを演じているネズミを実在のネズミとして扱う偽ドキュメンタリー仕立て。音声解説トラックは、監督とCGI担当者、そして美術関係者の2通りが入っている。映画を作った人々の技術的な方面へのバイアスが如実にわかる内容だった。アニメーションの製作者という意識からどうやって抜け出せるかが今後の勝負だろう。

2000/12/27

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