グラディエーター

Gladiator

Ridley Scott / Russell Crowe,Joaquin Phoenix,Connie Nielsen,Oliver Reed,Richard Harris,David Hemmings / 2000

★★★★

久しぶりに見たローマ史劇

 リドリー・スコット監督のローマ史劇。ローマ史劇が大好きな私としては見るのがずいぶんと怖かったのだが、あまりにまっとうなことに驚いた。

 考えてみると、リドリー・スコットは1990年代に入って失速しており、前作の『GIジェーン』などは、しばらくの間トニー・スコットだと思いこんでいたぐらいである。ちなみに一番好きなのは1987年の『誰かに見られてる』。リドリー・スコット流の美しい映像にセクシーさが感じられた珍しい映画だった。

 主人公の将軍/剣闘士を演じるラッセル・クロウはやはり凄い。この役をアーノルド・シュワルツネェガーやドルフ・ラングレンがやっていたら、と想像するだけで、この人がいかに貴重かがわかる。憎まれ役のホアキン・フェニックスは、この映画のおかげで、もはや「リヴァー・フェニックスの弟」と表現する必要はなくなった。映画は『スペースキャンプ』(1986)が初出演で、『ラスキーズ』(1987)、『バックマン家の人々』(1989)に出ていたようだ。まったく覚えていないけど。非常に複雑な役柄を見事に演じ切っている。姉の役のコニー・ニールセンは撮影前から古代ローマ史オタクだったそうだ。

 グラディエーター上がりの商人を演じるオリヴァー・リードは、撮影中に死去して、これが遺作となった。最後の方で死ぬシーンは、別のシーンのショットと代役をうまく編集して作っている。恥ずかしいが、『赤ちゃんよ永遠に』(1971)が好きだった。あと『家』(1976)とか。皇帝のリチャード・ハリスもこれまた懐かしい。不覚ながら見てるあいだはわからなかったが。1970年代の一連の作品はどの映画でも素晴らしいのだが、敢えて1本を挙げるならば『ワイルド・ギース』(1978)。ああいう死に方をする人じゃないと思っていたからショックだったことよ(映画はあんまり面白くないと思うけど)。しかし、それ以上に懐かしかったのは、コロシアムで司会をやってるデヴィッド・ヘミングス。いまとなってはわかりにくいかもしれないが、70年代のデヴィッド・ヘミングスは大スターとはいえないにせよ中堅役者の物凄く渋くてかっこいい男だった。『ジャガーノート』(1974)とか『サスペリアPART2』(1975)が有名だが、私が一番好きだったのは『パワープレイ』(1978)。あ、もちろん60年代には『欲望』(1966)、『バーバレラ』(1967)、『キャメロット』(1967)などの問題作に連続して出ていた人です。最初のうちがちょっと凄すぎて失速した、というタイプだが、失速状況でもいい映画にいい役で出ていた。

 本作はアクション・シーンが非常に弱い。殺陣/コレオグラフィーという概念が事実上なくて、撮影・編集の小細工でなんとかするという志の低い内容。そのせいで、冒頭のローマ対ゲルマンの戦闘も、グラディエーターたちの戦いもぜんぜん面白くない。どうしても最近見た『13ウォリアーズ』を連想してしまい、別にあっちだって小刻みなショットを積み重ねてはいたんだが、やっぱりリドリー・スコットはアクション映画監督ではないんだなと思ったことだった。しかし、微妙なニュアンスをたっぷりとふくんだ脚本を、中心点にいるラッセル・クロウがしっかりと支える形でじっくりと描いていく「歴史大作」としての貫禄は十分にあった。戦闘シーンがダメだったのが本当にもったいない。

 あと思ったこと。1960年代以前の歴史大作ものを見て感じる「壮大さ」は、もはや実現不可能なのかもしれない。どれだけローマの街の壮大な景色が広がっていても、「ああ、どうせCGIとの合成ね」と思ってしまうのだ。『クレオパトラ』みたいな映画を見たときの「何であんな遠いところまでエキストラを配しているんだ!」というような驚きは、結局はそれが特殊撮影でないという観念に支えられていたのだった。CGIの進歩とともに貴重なものが失われたということを痛切に感じた。なお、この文脈でいままで私が一番驚いたのは、ソ連版の『戦争と平和』(セルゲイ・ボンダルチュク監督)だった。

DVDメモ。日本版

監督、撮影、編集による音声解説。

 この音声解説は非常に良い。いろんな意味でリドリー・スコットを許したくなった。

2000/12/27

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