スティグマータ/聖痕

Stigmata

Rupert Wainwright / Patricia Arquette,Gabriel Byrne,Patrick Muldoon / 1999

★★

訳のわからないストーリー

 監督のルパート・ウェインライトは作品を2本ほど撮っている人のようだ。本作はバチカン陰謀オカルトもの。

 申し訳ないが、ストーリーがよくわからなかった。アメリカに住むパトリシア・アークエットにスティグマティズムが起こったので、バチカンからガブリエル・バーンが派遣される。これにトマス福音書みたいなアラム語の福音書のバチカンによる隠蔽工作が絡む。それはいいんだが、さらにパトリシア・アークエットが憑依(ポゼッション)とポルターガイスト現象にも襲われるのはこれはいったい何なんだ? この映画に描かれている3つの超常現象を統一的に取り扱うのはちょっと難しい。

 そもそもアークエットに憑依するのは、南米で死んだ神父の霊だということになっている。しかし、それがなぜガブリエル・バーンに絡むのか? そもそもスティグマに見舞われた人は信仰上の苦難に見舞われるのだが、死んだ(正しい立場の)神父の霊が取りつくのがいったいどうして信仰に対する誘惑となりえるのだろうか? また、この映画で起こるポルターガイスト現象は、アークエットに対する苦難というよりも、バーンに対する挑発の機能を果たしているように見える。ところがクライマックスで、バチカンの手先がアークエットを殺そうとするときには、やたらにこのポルターガイストが大人しく、助けに駆けつけたバーンがようやく危機を回避したとたんに元気になるんである。まことにキリスト教は理解するのが難しい。

 というのは冗談で、映画の製作者がまともに物を考えていなかった可能性の方が高い。スティグマだけでは映像的にぱっとしないので、他の似た感じの概念も混ぜてみた、ということなのだろう。この映画の中の一連の出来事を、論理的に一貫性のある形で理解しようとすれば、次のようになる。1) バチカンが発見して隠蔽した福音書の真正さは不明である。2) 神父はバチカンから放逐されたことを物凄く恨んでいた。3) その恨みがパトリシア・アークエットに取りつき、バチカンの使者を呼び寄せるためにスティグマを意図的に作った。4) ガブリエル・バーンがやってきたが、神父の霊はバカなので、バーンがどちらかといったら自分の味方であることがわからない。5) 神父の霊はポルターガイスト現象も引き起こすことができるので、これを使ってアークエットとバーンをいじめる。6) バチカンの手先(枢機卿)に対して神父の霊が効果的な反撃をできないのは、まさに、枢機卿がキリスト教会の中での神の僕だったからである。枢機卿がアークエットを殺そうとして成功しそうになる場面は、いわゆる正統的な意味でのエクソシズムに近いのだ。

 つまり映画のエンディングが何をどう示唆しようとも、枢機卿が彼女を殺そうとしたのは正しい判断だったとしか思えない(正しくないとしても、大きく間違ってはいない)。彼女に憑いていたのは左遷された神父の怨霊であり、この神父がエルサレム共同体以前の「原始的キリスト教」、あるいはイエス・キリストその人の権威の下にあったとは限らないのである。

 そうじゃないんだとしたら、何の関係もないパトリシア・アークエットをこんなにひどくいじめるのはなぜかという問題が別に生じてくる。「キリストの受難の再現である」という説に対しては、アークエットに最後まで無神論からキリスト教に転向した様子が見られないということが反論となる。だからこの憑依霊は、ガブリエル・バーンがバチカンのスキャンダルを暴くきっかけを与えるために、アメリカの無神論者にとりつくという非常にまわりくどい手段をとった、ということになる。

 なお、バチカンのエリート神父であるガブリエル・バーンが(正式な名称を忘れたが、奇跡/聖人を認定する部門に所属している)、カトリック教会が重要な文書を隠蔽しているという陰謀説を知らなかったという設定にはかなり無理がある。もしかしたら彼が化学者出身であるということが言い訳に使われているのかもしれないが、そうだとしたら相当な甘ちゃんということになる。真偽のほどは別にして、この手の陰謀説は広く囁かれており、それに対するカトリック教会側からの反論も行われている。

 あら探しはこれぐらいにしておこう。うっとうしいこけおどし映像の映画ではあるが、スティグマによる出血場面はちょっとばかし怖かった。ポゼッションとポルターガイストの要素を削除して脚本をもうちょっとまともにすれば、そこそこ怖いものに仕上がっていたかもしれない。パトリシア・アークエットの荒れた感じは悪くない。ガブリエル・バーンは「役選びに節操がない」の一言につきる。パトリック・マルドゥーンが、出番は少ないが、アークエットの恋人役で出ている。

DVDメモ。日本版

予告編、未公開映像、監督による音声解説トラック

音声解説は面倒なので聞かなかった。未公開映像には、削除されたいくつかのシーン(古典的なポルターガイスト現象のシーンがある)に加え、別のエンディングが収録されている。このエンディングではアークエットに最後の脇腹の傷が出現し、バーンの腕の中で死を迎える。その場面だけでなく他のところでも思ったことだが、「病院に連れてってやれよ!」。

2001/1/17

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