ハーモニーベイの夜明け

Instinct

Jon Turtletaub / Anthony Hopkins,Cuba Gooding Jr.,Donald Sutherland,Maura Tierney,John Ashton / 1999

これは見事に外している

 ジョン・タートルトープ監督作品。この人は失敗作を作らない人なのかと思っていたが、この作品は見事に外した。弁護になるかどうかわからないが、脚本と配役がダメ過ぎる。

 アフリカの山奥で行方不明になっていた霊長類学者のアンソニー・ホプキンスが、森林警備隊の隊員を何人か撲殺したということで、アメリカ本国に移送されてくる。ゴリラと一緒に生活していたためか、言葉を喋らず、原始人のように振る舞う彼の精神鑑定のために、野心的な精神科医のキューバ・グッディングJrが刑務所に送り込まれる。と、ここまでの説明を読んだだけで、この映画がどのように進展するか、おおよその想像はつくだろう。そしてその想像はたぶん正しい。「まさかそんなことまではしないだろう」と思って敢えて想像から外したかもしれない要素(刑務所における精神病患者の処遇の改善、娘との和解など)もちゃんと盛り込まれている。

 「野心的な精神科医のキューバ・グッディングJrが」という箇所から、この映画には、キューバ・グッディングJrが最もうっとうしくなるタイプのシーンが後の方になって出てくることがわかると思う。しかし厄介なことに、この映画のキューバ・グッディングJrは、シナリオ上はそう設定されているけどぜんぜん「野心的」に見えず、いつものとおりのキューバ・グッディングJrなので、彼が「改心」してもぜんぜん感動的ではない。まったく知らなかった秘密をいきなり打ち明けられて困惑した、という感じだ。『ザ・エージェント』のトム・クルーズの野心には説得力があったということを改めて思った。

 アンソニー・ホプキンスは、そうとう恥ずかしいセリフを喋らせられている。それは、ふだん彼が演じる知的な人間というイメージからはかなり逸脱したものなので、最後までこの学者がいろんなセリフを本気で言っているのか疑念に苛まされた。結局これも精神科医やその他の人々を混乱させるための嘘なんじゃないか、と。要するに、彼が考えるようになった諸々の事柄をまったく考えることなく生態学者になった、という人が存在するとはちょっと考えにくいのだ。宇宙物理学者が宇宙に出て地球が丸いことを知った、みたいなところまでは行かないにせよ。

 まあそれでも、見応えのあるシーンが少しはある。特に、失敗することが目に見えているアフリカでのシーンに、ほんの少しでもリアリティを持たせられていることは賞讃に値するかもしれない。動物園のシーンもかろうじて成功しているようだ。一方、「刑務所における処遇」関連と、キューバ・グッディングJrが絡む部分のほぼすべては目をそむけたくなるほど悲惨。

2001/1/30

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ