ハート・オブ・ウーマン

What Women Want

Nancy Meyers / Mel Gibson,Helen Hunt,Marisa Tomei,Lauren Holly,Bette Midler,Alan Alda,Judy Greer,Ashley Johnson / 2000

★★★★

さすがにうまいが、ちょっと脚本に問題あり

 ナンシー・マイヤーズ監督作品。大傑作の『ファミリー・ゲーム/双子の天使』に続く監督第2作である。メル・ギブソンを主役に据えたロマンティック・コメディ。マッチョなメール・ショーヴィニストだった彼は、ちょっとした事故から、世の中の女性が頭の中で考えていることを聴けるようになる。相手役はヘレン・ハント。

 本作は、完全に女性のみをターゲットにしている珍しい映画だ。普通のロマンティック・コメディならば、いちおうは男女双方を観客層として狙うのだろうけれども、本作は「ハーレクイン・ロマンス」のレベルにまで達するフォーカスト・マーケティングの結果という感じがする。ひたすら、主役のメル・ギブソンのセミ・ヌードやコスプレを含む肉体的魅力と、女性にとっての理想の男としての(脚本上の)設定を、女性(および一部の男性)に楽しんでもらいましょうという映画。

 メル・ギブソンは時代錯誤的なスクリューボール・コメディ的演技を見事にこなしている。特に表情が多彩で、彼が特殊な能力を身に着けるまで、また身に着けてからドラマの本筋に入るまでの流れは実に快調だ。しかし、これは凄い映画なんじゃないかと思っていたら、ヘレン・ハントとのロマンスが始まるあたりから脚本上の問題が生じてきた。結局のところ、女性の心を読める男という設定を使ってハッピー・エンディングに持っていくのは無理なんだと思う。『X線の眼を持つ男』のレイ・ミランドもやっぱりアンハッピーなエンディングを迎えたのである。

 ただし、ヘレン・ハントとのメインのプロットが壊滅的な方向に向かっても、サブプロットはうまく行っている。ヘレン・ハントの対極に置かれているマリサ・トメイはとても魅力的。娘のアシュリー・ジョンソンとの絡みもうまく行っている。また、個人的に『ハード・キャンディー』で大いに気に入ったジュディ・グリア(オフィスのファイル係)は、非常にいい見せ場を貰っていた。この3人の配置の仕方の背後には、観客の多様な女性たちが自らと同一視できそうな役柄を3パターン用意しましたという冷徹な計算が感じられる。女性は男に心をちゃんと読んでもらいたいと思っているが、この3人については、メル・ギブソンは心を読んだ上で、当人が望むようなポジティブな対応をする。一方、ヘレン・ハントのメイン・プロットでは、「心を読む」ということがプライバシーの侵害であるという論理が入ってくる。この論理と、「本当の私」を見てくれるという観念のバランスがどのように取られるかが、このプロットの要になると思われるが、率直にいってこの映画は最後までこの対立する観念をうまくまとめることができなかったように思う。

 映画を作った人々も、これがうまく行っていないと感じているふしがあって、最後の最後にちょっとしたひねりがある。これを入れてもやっぱりダメなものはダメなんだが、ひょっとしたらこのひねりは、「そりゃ私たちも気づいてますよ。でも、ハリウッドのお約束ですから」という言い訳として挿入されたものなんではないかと感じた。

 ナンシー・マイヤーズはやはり上手だ。特に、メル・ギブソンが踊るところ、鏡の前でいろいろと試すところ、娘のドレスの買い物に付き合うところなど、普通の映画がほぼ確実に失敗するようなシーンを、ちゃんと見られるレベルのものに仕上げているのが凄い。というよりも、「こういうのも、ときには成功するんだ」という新鮮な驚きを与えてくれる。脈絡がないが、『バニラ・フォグ』をリメイクしてくれないものだろうか。

2001/2/2

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