セイヴィア

Savior

Predrag Antonijevic / Dennis Quaid,Stellan Skarsgard,Nastassja Kinski,Natasa Ninkovic / 1998

★★★★

これにはやられた

 監督のピーター・アントニエヴィッチはこれが第1作。アメリカ資本の映画だが、スタッフ、役者を含めてほとんどがユーゴスラヴィア人で固められている。オリヴァー・ストーン製作の戦争映画という宣伝文句のせいで敬遠すると損をするまっとうな映画である。

 デニス・クエイド演じるアメリカ人の軍人がフランスの外人部隊に入り、ボスニア紛争時のユーゴスラヴィアで、セルビア人の側に立ってムスリムを狙撃しているが、ひょんなことから赤ん坊の世話をすることになるという戦場ロード・ムービー。ナスターシャ・キンスキーとステラン・スカルスガルドは、この映画に「国際スター」の名を貸すためにちょい役で出演したことが明らかで、ほとんど出番がないけれども、この映画に限ってはそういう宣伝手法も許そうと思った。

 デニス・クエイドはこのところ良くなってきている。本作の後の出演作は、『オーロラの彼方へ』(2000)、『エニイ・ギブン・サンデー』(1999)、『マイ・ハート・マイ・ラブ』(1999)、『ファミリー・ゲーム/双子の天使』(1998)で、いずれもステレオティピカルな演技ではあるものの、若い頃と比べると何か風格を身にまとってきた。本作のデニス・クエイドは、軍人風のヘア・スタイルにしていることもあって、ときおりジャン=クロード・ヴァン・ダムに見える(特に苦悩の表情を浮かべているところ)。それは、このシリアスな映画では非常にまずいことである。

 しかし、デニス・クエイドの能天気なアメリカ映画っぽさが、ユーゴスラヴィアで展開するこの物語に異化効果を与えると踏んだのであれば、それはいい効果を出しているようにも見える。たとえば『ウェルカム・トゥ・サラエボ』の徹底的に陰鬱な外国人たちは、映画に何のポジティブな影響も与えていなかった。念のため書き添えておくが、本作のデニス・クエイドは必死になって自分の能天気さを隠そうとしており、それにときどき失敗しているに過ぎない。しかし、陰鬱な演技をお手のものにし、それに完璧に成功してしまう役者がこのデニス・クエイドの役を演じていたら、この映画はあまりに予定調和的に見えてしまっただろう。

 戦場と戦闘の描写の美しさという点で、この映画は長く記憶に残りそう。ちょっとまずいところも笑って許せる、基本的に正しい態度の映画だった。スナイパーを描いた映画としては出色の出来。

2001/2/9

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