サーカス

Tsirk

Grigori Aleksandrov / Lyubov Orlova / 1936

★★★

けっこう面白い

 監督のグリゴリー・アレクサンドロフは『十月』(1928)、『恋は魔術師』(1947)などの人。本作は、サーカスにアメリカのミュージカル映画の要素を取り入れたスターリン賛美、アメリカ批判のプロパガンダ映画という、2001年のいまになって見るといろいろと複雑な思いをする作品であった。今回が初見。

 製作年度が1936年なので、やはり古いという感じは否めないが、けっこうサスペンスに満ちたよく出来た映画ではある。主役のリュボーフィ・オルローワがかなり見づらいダンスを踊るが、実は当時のアメリカ映画の水準とあまり変わらない。また、かなり本格的なバズビー・バークリー式の集団ダンス・シーンがあり、同じ時期のアメリカ映画の超大作と比べると豪華さの点で見劣りはするものの、出てくる女性ダンサーたちが、アメリカ的でない、なんというか「ソ連的」というか、社会主義国家的としか言いようがない体格をしているのが興味深い。

 話の内容はプロパガンダとしか言いようがないが、この時期のプロパガンダのあり方として実に興味深い。ソ連とアメリカが組んでドイツをやっつけるというのは、第二次世界大戦を予兆させて面白い。また、戦後になって行われた、アメリカとソ連の間でのロケットの打ち上げ競争をも先取りしている。しかしやはり重要なのは、本作の中心的テーマである人種差別であり、黒人差別が深刻なアメリカと、多様な人種が共存する自由な国、ソビエト連邦が強烈なコントラストとして提示されている。見ている間はまったくわからなかったが、下にリンクしたページを読んで、クライマックスのやたらに長い歌の場面が、このテーマの総仕上げだったのだということを理解した。

 なお、本作のヒーローであるマルトゥイノフを演じるS・ストリャロフを見ていて気づいたこと。この人、角度によってはティム・ロビンスにかなり似ている。このことから逆に、ティム・ロビンスを見て感じる違和感の理由がわかった。ティム・ロビンスは、その政治的な姿勢がにじみ出ているのかどうか知らないが、なんとなくアメリカ人よりはソ連人っぽいのである。たとえば『ミッション・トゥ・マーズ』のティム・ロビンスは、アメリカ人宇宙飛行士でなくても、ロシア人(というよりもソ連人)宇宙飛行士を連想させるし、『オースティン・パワーズ・デラックス』でのアメリカ大統領役は、ソ連空軍の大佐と言った方がぴったりくる。

 けっこうマニアックな解説

2001/3/29

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ