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Insider,The

Michael Mann / Al Pacino,Russell Crowe,Christopher Plummer,Diane Venora,Philip Baker Hall,Gina Gershon,Hallie Kate Eisenberg / 1999

★★★★★

こりゃすごい

 マイケル・マン監督。CBSが、アメリカのタバコ会社に関する"60 Minutes"のセグメントをお蔵入りにしようとした実話をもとにした映画。このところアメリカ映画には自己正当化型の映画が急激に増えているが、本作は1960〜70年代的な「左翼系硬派社会告発映画」。絶滅寸前の動物を目撃したというような感慨。

 この映画は文句なしの大傑作だ。これまでのマイケル・マンは、1983年の『ザ・キープ』と、1986年の『刑事グラハム/凍りついた欲望』(これはトマス・ハリスの『レッド・ドラゴン』の映画化)の2作が最高傑作だと思ってきたが(TVシリーズの『マイアミ・バイス』は見ていないのでわからない)、本作はこれらを上回るだけでなく、『大統領の陰謀』クラスの映画として後々まで残りそうな、歴史的名作であると思う。

 タバコ会社を解雇されて告発を行う決心をする元重役を演じるラッセル・クロウは素晴らしいの一言につきる。あらゆるシーンでの歩き方、首の傾げ方、手の動かし方に細心の注意が払われている。彼が『グラディエーター』でアカデミー主演男優賞をとってしまったのが可哀想に思えてくるぐらいだ。"60 Minutes"のプロデューサーを演じるアル・パチーノも見事で、1970年代の彼が蘇ってきたよう。やってることは『エニイ・ギブン・サンデー』とそれほど変わらないのだが、この印象の違いはどこから来るのだろう。マイク・ウォレス("60 Minutes"のホスト)を演じるクリストファー・プラマーとドン・ヒューイット("60 Minutes"のエグゼクティブ・プロデューサー)を演じるフィリップ・ベイカー・ホールの2人が凄い。よくわからんが、タバコ会社相手に訴訟をやっている弁護士たちも凄い。ミシシッピー州の検事総長は何と本人だそうだ。ラッセル・クロウの娘の1人に『ポーリー』のハリー・ケイト・アイゼンバーグ。全般的に女性はみんな添え物。

 撮影監督はダンテ・スピノッティ。揺れる映像を断片的につなぎあわせる手法はマイケル・マンの好みだろうが、実に効果的に使われている。というか、こういうのがこれほど成功しているのは珍しい。いやあ、凄かった。

 なお、Robert Ebertのレビュー(『Roger Ebert's Movie Yearbook 2001』に収録)から、本作の脚本がどのように事実を改変しているかということを孫引きしておく(276ページ)。翻訳は私による。

マイク・ウォレスは[映画で描かれているよりも]戦士で、バーグマン[アル・パチーノの演じている人物]の操り人形という感じではなかった。60 Minutesのプロデューサー、ドン・ヒューイットは会社からのプレッシャーに自ら身を委ねたわけではなく、無力なだけだった。Wall Street Journalの記事は、バーグマンによって操作されたのではなく、独自の取材活動によるものだった(そしてピュリッツァー賞を受賞した)。バーグマンはミシシッピー州の重要な訴訟の背後で糸を操ったことはなく、重大な宣誓証言のリークも行わなかった。そしてタバコ業界は必ずしもワインガンド[ラッセル・クロウの演じている人物]に対して死の脅迫を行わなかった(彼の元妻は、彼が自ら郵便受けに銃弾を置いたと信じている)。

 やはり脚本化の際に事実を改変した『ザ・ハリケーン』と比べると、こちらの方がずっと上手だということがわかる。なおEbertは、この改変を弁護して、面白いことを書いている。この映画でローウェル・バーグマンがヒーローとして描かれているのは、彼がマイケル・マンと共同脚本執筆者のエリック・ロスに情報提供を行ったからでは"なく"、この人物が映画のスターであるアル・パチーノによって演じられているからである。仮にアル・パチーノがマイク・ウォレスを演じていたら、マイク・ウォレスが映画のヒーローになっていただろう、だそうだ。

 日本語の公式ページ

2001/4/3

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