ミュージック・オブ・ハート

Music of the Heart

Wes Craven / Meryl Streep,Angera Bassett,Aidan Quinn,Kieran Culkin,Jay O. Sanders / 1999

★★

つらい

 ウェス・クレイヴン監督作品。ホラーばかり撮ってきたこの人の「一般映画」ということで話題を呼んだ。ニューヨークのハーレム地区で、小学校の臨時教員としてバイオリンを教えてたパメラ・グレイなる実在の女性をメリル・ストリープが演じる感動音楽ドラマ。

 彼女は夫に逃げられ、2人の息子を抱えながら、低所得者層の子供たちにバイオリンを教え、音楽を通して人々に勇気を授ける。ところが公立学校の予算削減のあおりをくって、そのカリキュラム自体が存亡の危機に立たされたので、ファンド・レイジングの目的のコンサートを開くことを決意する。ぎりぎりになって予約していた会場が使えなくなるという危機が襲うが、善意ある人々の手でカーネギー・ホールを押さえることができ、チケットを買った人たちは、いいホールで有名なバイオリニストたちの合奏を安いチケット代で聴けたことに深く感動する。

 実話をベースにした物語であるから、このコンサートに多くの有名バイオリニストたちが駆けつけたという事実を無視することはできなかっただろう。しかしそのせいで、この映画の根本的な「低所得者層の子供たちが音楽教育を通じて救われる」というテーマが完全に拡散してしまっていることも事実である。もちろん「メリル・ストリープの演じる主人公が大きく成長した」というテーマは生き残っているが、その成長のしかたは、「大きなコンサートを開催できるような地位にまで出世した」という類のものだ。『ザ・ハリケーン』の項に書いた、実話をベースにした映画の罠に見事にはまっているように見える(なお、成功した例としては『インサイダー』を参照)。

 ちなみに、メリル・ストリープの成長と出世というテーマだけを見れば、この映画はそれに説得力を持たせることにかなり成功している。これはひとえにメリル・ストリープの凄さによる。公開時で50歳の彼女は、20代後半から40代前半ぐらいまでの年齢の女性をちゃんと演じている。夫に捨てられて不安になっているシングル・マザー、エイダン・クインとの関係の中で前向きに生きていこうとする女、そして息子たちをしっかりと育て、地域にしっかりと根を生やした中年女性を、それぞれ的確に表現しているのである。そして『母の眠り』を見たときと同じような感想になるのだが、「それがどうした」なんですな、結局。この人はこういうタイプの演技が非常にうまく、これまで何度でも成功してきているので、改めてそれが成功している光景を見ても、計算ずくの演技という印象しか伝わってこない。こういうのを高く評価する人もいることはわかるが、私にはちょっと退屈である。演技の逆説は、完璧な演技にはリアリティが感じられないということだ。CG俳優が現実的なレベルに達したら、メリル・ストリープは最初にエミュレートの対象になるんではないか。

 校長にアンジェラ・バセット、恋人にエイダン・クイン、下の方の息子にキーラン・カルキン、デート相手にジェイ・O・サンダース(この人の名前、よく忘れるもので)。キーラン・カルキンがごく普通の素直な少年を演じている珍しい映画である。事故に遭って不具になるんじゃないか、何か悪さをするんじゃないかと心配で仕方がなかった。

2001/5/23

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