オータム・イン・ニューヨーク

Autumn In New York

Joan Chen / Richard Gere,Wynona Ryder,Vera Farmiga / 2000

最悪パターンの難病もの

 監督のジョアン・チェンは『シュウシュウの季節』(1998)の人。ハリウッド進出第一作ということになる。この映画の公開にあたって、製作会社は批評家を対象とした試写を行わなかった。ストーリーの「意外な展開」がばれるのを避けるためという言い訳だったが、大方の意見は、あまりにも出来が悪いので、公開前に悪い評判が流れるのを防ぐためだったのだろうというもの。

 たしかにこれはひどい。リチャード・ギアとウィノナ・ライダーの難病純愛もの。余命が1年もないウィノナ・ライダーが、プレイボーイのレストラン経営者リチャード・ギアに接近し、この2人の恋愛を通してリチャード・ギアが真人間になるというストーリー。アリソン・バーネット(IMDBによると男性)の脚本の責任が大だが、それ以外にもあらゆるところでヘタを打っているという感じがする。

 撮影のクー・チャンウェイが作り出す画面は絵葉書の写真のようで、そのことが映画の安っぽさをかえって強調している。『相続人』での使い方がいかに優れていたかがわかる。思うに「きれいきれいな映像」は諸刃の剣で、うまく映画に組み込むには相当なセンスの良さが必要とされる。

 なお、「リサ」を演じるヴェラ・ファミーガという人の、クレア・フォラーニ的なねっとりした視線が面白かった。大根役者のマークの1つではあるものの、この映画の役柄には、その問いかけるような視線がぴったりと合っている。

 なお、まあこれは別にどうでもいいことではあるのだが、この映画のウィノナ・ライダーがリチャード・ギアになぜ惹かれるのかが最後までわからなかった。ほとんど「老人一歩手前」のリチャード・ギアであるが、ファッショナブルなレストランの経営者であるという設定もあることだし、女性たちが彼の姿を見て「ワーオ、ゴージャスだわ」と言うのは構わないとしよう。でも、この女たらしのプレイボーイに、なぜ余命が限られていて、他にすることもあるであろうウィノナ・ライダーが時間を費やすのか。しかも彼が女たらしであることが最初からわかっているのに、なぜ彼が他の女と寝るとショックを受けるのか。

 というふうに、非常に説得力の薄いストーリーではあるのだが、そのことが逆に、1つの真実を言い当てているといえなくもない。要するに、womanizerと呼ばれるような男性は、女性側の協力があってこそ存在が可能なのである。行動心理学のコンテキストでは性選択という概念で説明される。この映画の例でいえば、リチャード・ギアはコミットメントという概念の欠如したダメ男ではあるけれども、その男の息子を産んだ場合、その息子はリチャード・ギアと同じようなダメ男になり、あちこちに未婚の子を残す可能性が高いということから、女性は本能的にリチャード・ギアとお付き合いをすることを望むのである。

 そう考えると、この映画のストーリーの根本にあるのは、「もうすぐ癌で死ぬ運命だ。死ぬ前にソープランドで遊びまくりたいものじゃ」というのと同じ発想であることがわかる。ある意味で、恐ろしく冷徹な脚本だと言えなくもない。

2001/6/13

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