ザ・グリード

Deep Rising

Stephen Sommers / Treat Williams,Famke Janssen / 1998

★★★★★

細かいところで配慮が感じられる名作

 豪華客船を乗っ取ろうとするテロリストたちが、深海からやってきた巨大な未知生物と戦うという話。なぜこういう邦題になったのかまったく不明。

 大したことないといえば大したことはないのだが、脚本上も、映像上も、細かいところで配慮がなされているところがあって面白い。乱暴者たちが未知の生物という戦うというプロットが、『エイリアン2』や『プレデター』を思い起こさせる。この2作ほどの面白みはないけれども、あれらの記憶を喚起させるていどにはよくできている。豪華客船のなかで移動しながら活路を見いだすというプロットも、欲をいえばきりがないけれども、そこそこうまくできている。船の中での現在位置が(せめて垂直的な位置関係だけでも)もっと明確にわかるように作られていればよかったんだが。

 何よりもよかったのは、主演のトリート・ウィリアムズとファムケ・ヤンセンのいい具合に力の抜けた感じ。たとえば『スピーシーズ2』では、マイケル・マドセンがエイリアンと戦う力の抜けた男を演じているのだが、あの力の抜け具合が映画の緊張感をそぐ方向にしか働いていなかったのに対し(なんでこういう危機でそんなにのんびりしていられるわけ?)、トリート・ウィリアムズののんびりのしかたは、その映画中の人物が持っている精神的な余裕といういい方向に解釈できる。小物の犯罪者を演じているファムケ・ヤンセンのボケ具合もよい。こちらは『デモリションマン』や『スピード』のサンドラ・ブロックを思い出させる存在で、どうせ映画のなかで大した役割を与えられているわけでもないから、適当にぼんやりしていましょうという力の抜け方が、映画を良い方向に導いている。

 こういう「善玉」たちの力の抜け方が、テロリストたちをはじめとする「悪玉」たちの余裕のなさを逆に照射しているところから、こういう構造が意図的なものだったということがわかる。このスティーヴン・ソマーズという人はただものではないかもしれない。

1999/10/21

 久しぶりに再見したところ、これがきわめて出来がいい映画であることがわかった。映画メモのこの初期の段階では、採点基準が比較的厳しく、本作を★4つとしていたのだが、似たストーリーの『ディープ・ブルー』に★5つを与えている以上、あれよりも優れていると思われる本作も★5つにアップグレードすることにした。

 なお、本作のトリート・ウィリアムズとファムケ・ヤンセンは、それぞれの出演作品の中でベストなのではないかと思う。特にファムケ・ヤンセンがこのように肩の力を抜いているのは珍しい。監督のスティーヴン・ソマーズは、その後『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』を作った。

2001/11/20

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