シュリ

SHURI

カン・ジェゲュ / ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシク、ソン・ガンホ、ユン・ジュサン / 1999

★★★

いろいろと限界が見えるが

 韓国映画。本国では『タイタニック』を超える興行成績を出したという大ヒット作。

 冒頭の、北朝鮮における訓練シーンでなかなか行けるかもと思ったら、韓国での主人公たちの描写がいきなり日本のTVドラマのようになった(しかしなぜかときどき小津的な構図が混じる)。アクション・シーンは、役者たちが頑張っていて好感が持てるものの、全体的にカットを無意味に割りすぎていて興醒め。また、脚本にいくつか問題があり、サスペンスが醸成されない。

 とまあ、不満を抱きながら見ていても、最後の最後になって、1つのカットですべてが許せてしまう、まあそういう映画である。以下、ネタバレ。

 とは言え、ハン・ソッキュ演じる秘密情報機関のエージェントの恋人を演じているキム・ユンジンが、北朝鮮のスナイパーであるという「ネタ」を知らない人はまずいないか。この人、脚本の不備のせいで、映画のほとんどの時間でまったく魅力を出せていないのだが、最後の対決シーンで数カットだけ「梶芽衣子」になる。私にとっては、この数カット、特に崩れ落ちるカットだけでもこの映画を見る価値はあった(しかしその後に続くハン・ソッキュのバスト・ショット、不自然に目が泳いでいるようにしか見えない。まあそれはいいか)。そもそもこの映画、キム・ユンジンがスナイパーであるということを(ミエミエなのに)隠しながらストーリーが展開していくのだが、彼女の置かれている状況の厳しさと、そこから出てくる心情がよくわからず、したがって秘密情報機関のエージェント2人の間抜けさのみが伝わってくる。キム・ユンジンが工作部隊隊長のチェ・ミンシクと対決するところに来ても事態はあんまり改善されず、彼女の状況の厳しさが「論理的」にわかるという程度だ。しかし、ハン・ソッキュとの対決シーンでの数カットは、そういった不首尾をすべて解決するだけの力を持っている。ただ残念なことに、そうした知識を得た上で映画を再見しても、そこまでに至るキム・ユンジンは、決して「苦しい思いを胸に秘めながら明るく振る舞っている」という感じではなく、単なる能天気なお嬢さん。それだけ偽装が高度だった、と言われても困る。

 なお、アジア人の顔は判別しにくく、冒頭の訓練シーンの女、情報機関が持っている写真に写っている女、魚を売ってるキム・ユンジン、サングラスをかけたスナイパー、そして済州島のサナトリウムにいる少女の全員について、「これはストーリー上同じ人という設定なのだ」と言われればそう納得するし、「別人なのだ」と言われればそう納得しそうだ。とりわけ写真の女と魚を売ってるキム・ユンジンが、エージェントたちには同一人物であるということがわからないほど異なる、ということが私には納得できなかった。なお、冒頭の訓練シーンは別の女優が演じており、サナトリウムの少女はキム・ユンジンが一人二役で演じている。

 これはもちろん、人種的特性の問題ではなく演出の問題なのである。写真に写っている女は、遠くから盗撮されたぼやけた写真でなくてはならないし、スナイパーにはサングラスをかけさせてはならない(不自然なサングラスをかけていることが、それがキム・ユンジンであるということの明瞭なサインになるので、サングラスをかけさせる意味がなくなる)。こういう何というか、物語を語る上での基本的な心得に欠けているところが何とも切ない。

 全体的な雰囲気は、日本の1970年代の娯楽映画に似ているような感じ。それが20世紀末になっても通用するパワーを持っていることは称賛すべきだろう。最初からスナイパーがキム・ユンジンであることを明かし、彼女を中心としてストーリーを展開させていたら、逆にハン・ソッキュらを中心とする韓国側の焦りももっとリアルに描かれることになっただろうと思うとかなり残念ではある。

2001/9/30

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