エンパイア・レコード

Empire Records

Allan Moyle / Anthony LaPaglia,Maxwell Caulfield,Debi Mazar,Rory Cochrane,Johnny Whitworth,Robin Tunney,Renee Zellweger,Ethan Embry,Liv Tyler / 1995

★★

アテンション・スパンの短さの極致

 監督のアラン・モイルは、懐かしや『タイムズ・スクエア』(1980)がデビュー作だった人。ちなみにこれは本作と似たタイプのダメな音楽映画だったと記憶している。

 落ち穂拾い。1995年の映画で、ロビン・タネイ、レニー・ゼルウェガー、リヴ・タイラーの3人にとっての初期の出演作品、キャリアの転機になったと思われる。特にレニー・ゼルウェガーは良い。一方、本作の男優たちは、この3人と比べるとその後目立った活動をしていない。

 「2時間の長さの予告編」という表現が悪口としてときどき使われるけれども、この映画ほどそれにぴったりのものを見たことがない。「MTVの影響で最近の若者はアテンション・スパンが短くなった」というような言い方を私はあまり信用していないけれども、この映画を素直に見て感動できる人間が人口の大部分を占めるような時代が来たら、さすがに危機だと思う。たとえば1930年代に『ジークフェルド』ものとかを見ていた音楽映画ファンが1990年代にタイムトリップしてKORNのビデオ・クリップを見てしまった、あるいは1940年代にハンフリー・ボガードもののハードボイルド映画を好きで見ていたアクション映画ファンが1990年代にタイムトリップしてタランティーノ映画を見てしまった、というような状況を、本作は1990年代の観客に仮想体験として提供してくれる。

 Empire Recordsという名前のレコード店を舞台に、そこで働いている若者たちの1日を描く物語。というよりも、この状況設定をベースにした連載もの4コマ漫画の雑多なエピソードを、前後の脈絡なしに1日の話にまとめたという印象がある。エピソード間で各キャラクターの設定が微妙に違うのだが、話は各エピソードで完結していれば良いので問題にはならない。そして各エピソードにクールな音楽をつける。各エピソードが短いため、曲を途中でぶったぎらなくてはならないのだが、それも気にすることなく、さっさと次へ進む。この音楽の使い方がまた奇怪で、その曲が映画の中で本当に流されているのか、それともあくまで映画のバックグラウンド・ミュージックなのかが簡単には判別できない場面が多い。ミュージック・ビデオの概念を映画に持ち込んだということなんだろう。ミュージック・ビデオでは、いま風景が写っていたと思ったら、次のカットではシンガーが登場して曲に合わせて口を動かす、というような手法が普通に使われるが、これは映像と音楽のそれぞれの存在レベルの関係が自由に移行していることを意味する。これを映画に導入すると、本作のような効果を持つというわけだ。舞台がレコード店なのが、その効果をいっそう強化している。

 従来のミュージカル映画と同じじゃないかと思うかもしれないが、ミュージカル映画で登場人物がいきなり歌いだすのはファンタジーであり、リアリズムとファンタジーの間のでの行き来が起こっているわけだ。一方、この映画では、映画の中の世界で音が鳴っているというリアリズムと、鳴っていないというリアリズムの間での行き来が、警告なしに起こる。これはギャップはギャグのソースとして使われることもあり、たとえばそのタイトルとは裏腹にヒッチコック映画のパロディである『羊たちの沈没』(念のため書いておくが、面白くない)では、ある女性が『サイコ』のモーテルにそっくりな浴室でシャワーを浴びようとすると、例の「キッキッキッキッ」というバイオリンの音が鳴る音楽が始まる。恐怖にかられたその女性がシャワー・カーテンをバッと開けると、バスタブの中で弦楽器を持った数人の男たちがその曲を演奏している。

2001/10/10

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