ボーイズ・ドント・クライ

Boys Don't Cry

Kimberly Peirce / Hilary Swank,Chloe Sevigny,Peter Sarsgaard,Brendan Sexton III / 1999

★★★

インディー映画にしては上質なプロダクション

 監督のキンバリー・ピアースは、1995年に同タイトルの(おそらく同じ内容の)映画を1本作っているようで、本作はそれの予算拡大版という位置づけになるのだと思われる。日本文学専攻で、日本に住んでいたこともあるそうな。

 本作は性同一性障害の女性の実話をもとにした作品。性同一性障害の男性による手記である『性転換』という本には、ちゃんと性転換をしないと、つまり単なるトランスベスタイトのままで留まっていると、アメリカじゃ殺される怖れがあると書いてあるのだが、この映画で描かれているケースはその典型的なパターンの1つということになるだろう。ただし『性転換』の著者が大学の経済学部教授というインテリであったのに対し、こちらのケースの主役はもともと田舎の労働者階級の一員であり、「田舎は怖いがそこから抜け出せない」というもう1つのテーマが絡んでくる。実際、後者のテーマの印象が強すぎて、性同一性障害の側面がかえってぼやけた感じがする。

 主演のヒラリー・スワンクは本作の演技でアカデミー賞主演女優賞を獲得したが、これはアメリカ人がこの種の性倒錯ものに慣れていないがゆえの過剰反応だと思う。宝塚歌劇団なるものを持っているわれわれ日本人は、「ナイーブよのう」と言って笑っていればよい。クロエ・セヴィニーは、相変わらず「この人は一生ここから抜けだせないだろうな」という感じの役をやるとぴったりとはまる。彼女に限らず、この映画はむしろ脇役たちのどうしようもない感じにリアリティがあって、粗暴なレッドネックを演じるピーター・サースガードとブレンダン・セクストン三世は良いし、ヒラリー・スワンクを泊める女性のアリシア・ゴランソンやクロエ・セヴィニーの母親のジャネッタ・アーネットの荒み方は堂に入っている。そう考えてみると、ヒラリー・スワンクがちょっと「奇麗すぎる」のがこの映画の一番の問題なのかもしれない。

2001/10/17

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