ホテル・スプレンディッド

Hotel Splendide

Terence Gross / Toni Collette,Daniel Craig,Katrin Cartlidge,Stephen Tompkinson,Hugh O'Conor,Helen McCrory,Peter Vaughan / 2000

★★★

標準以上

 監督のテレンス・グロスはミュージック・ビデオやCF出身の人らしく、本作は劇場用のデビュー作。このタイプの人の第1作としては良くできている方の映画である。

 英国のどことも知れない小島に建っている、本島(メインランド)から隔絶し、時代から取り残されたホテルを舞台に、「奇妙な人々」の生態を描くという趣向の映画。この舞台の設定はかなりロジカルであり、死んだ女主人が柔らかい刺激のない食事を宿泊客に与えることで便秘をもたらし、浣腸のサービスの売れ行きを伸ばすという戦略をとっていた、というようなネタを初めとして、よく練られたサブプロットがいくつか含まれている。ただ、5年前に去ったトニー・コレットが戻ってきて、その完璧な舞台に波乱をもたらしたときに起こるダイナミズムが平凡すぎる。そのため、映画の中で起こるほとんどのことに意外性がなくなってしまっており(というか、そのあまりの平凡さは意外だったんだが)、「その平凡さもが、ホテル・スプレンディッドの罠なのですよ」という話でもないため、詰まらない教訓話が失敗したという印象が残るだけとなった。

 ミュージック・ビデオやCFの出身の人にしては穏当な部類だけれども、やはりこの映画の凝った映像と音楽の使い方は気に障った。たまたまキューブリックの『シャイニング』の一部とメイキングをDVDで見直したばかりだったのだけれども、建物自体が持つ魔術性の表現はやはり格がぜんぜん違う。比較するのは気の毒か。そりゃそうだな。

 セット全体をスタジオの中に作るというような贅沢ができず、実際の建物を使って撮ったために(もちろんこれは言い訳にはぜんぜんならないが)、映画の中に描かれる大きなホテルの構造がよくわからなくなっているのが致命的である。特に食堂と厨房の位置関係がわからないこと、ホテルの中でのメタン・ガスを使ったボイラーの位置がわからないこと、地下構造の拡がりがわからないこと、ホテルの個々の部屋がフェリーの発着場にどういう角度で面しているのかがわからないこと、などがまずいのだが、監督はそれが欠点になりうるということにおそらく気づいていないと思われる。個々の部屋の装飾と照明に凝り、暗めの映像を作って雰囲気を出せばそれでいいと考えているのだろう。

 役者の選択は素晴らしい。トニー・コレットは『シックス・センス』に続く名演技(ただし同年に『シャフト』という「あちゃー、やっちゃった」という感じの出演作があるが)。『奇跡の海』を支えていたカトリン・カートリッジが、本作でも堅実。そして、水が怖いために島を出られない少年を演じたヒュー・オコナーは、『マイ・レフトフット』(1989)でダニエル・デイ=ルイスの少年時代を演じた人らしいけれども、本作では歌って踊って、狂言廻しをしての大活躍。トニー・コレットに「セックスしてください」と頼むシーンは、彼女の側の受けの演技も含めて、本作のハイライトの1つとなっている。あのバーらしき部屋の構造がちゃんとわかるように描かれているともっと良かったんだけど。彼は舞台に砂を撒いて踊った後に、トニー・コレットに向かって「あなたのために踊ったのです」と言うのだけれども、あの構図と編集だと、彼の踊りが彼女の位置から見えるのか、また彼が彼女の姿を見ることができたのかがまるっきりわからないんである。

2001/10/31

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