キャスト・アウェイ

Cast Away

Robert Zemeckis / Tom Hanks,Helen Hunt / 2000

★★★★

これは楽しめた

 ロバート・ゼメキス監督。トム・ハンクス製作・主演。無人島サバイバルもの。

 私はゼメキスの映画は基本的にあまり好きでなかったので、同年の『ホワット・ライズ・ビニース』が良かったことには驚いたが、本作ではさらに驚いた。実にうまい。またトム・ハンクスの演技としては、1990年の『虚栄のかがり火』以来の見るに値するものになっている(映画としては1992年の『プリティ・リーグ』と、アニメーションの『トイ・ストーリー』『トイ・ストーリー2』も捨てがたいのだが)。本作は、ゼメキスとハンクスの両人にとって、いままで最高の作品なのではないかと思う。

 FedExで働くトム・ハンクスは、時間に縛られた生活を送っているが、飛行機が太平洋の真ん中に墜落し、一人だけ生き延びて無人島に漂着する。少しずつサバイバルの方法を習得して生き延びるが、このままではじり貧となることがわかり、4年後のある日、いかだを組んで海に乗り出す。これに、恋人のヘレン・ハントとの絡みがある。この映画の伝えるメッセージは「FedExでは働くな」というものだが、これにFedExが全面協力していることは、広告とは、それが置かれている文脈とはほとんど関係なしに、ロゴを露出することによって効果を発揮するものであるという真実を表している。いずれにせよ、この奇妙な構図は、「現代人は忙しさにまぎれて自分を見失っている」というクリシェを和らげる効果を持っていた。もう1つ、ストーリー上重要な役割を担うWilsonのプロダクト・プレースメントもきわめて巧妙。本作は、プロダクト・プレースメントをうまく活用した映画として長く記憶に残りそうだ。

 こういうストーリーを考えるときのお約束の要素を満遍なく盛り込み、それらを効果的に表現することに挑戦する実験映画のようなものである。脚本の段階でよく練られているが、それを映像化する段階での禁欲的な態度がすばらしい。生還後のヘレン・ハントの扱いと、エンディングに向けての流れが少々危なっかしいけれども、他の選択肢を考えたら(それをまったく描かないというものも含めて)これがたぶんベストなのだろう。

 なお、Roger Ebertのレビューに、予告編でのネタばらしに対するゼメキスの態度について驚くべきことが書かれている。以下、本作と『ホワット・ライズ・ビニース』についてのネタばれなので注意。

 『ホワット・ライズ・ビニース』では、ミシェル・ファイファーが超常現象絡みの事件に巻き込まれ、その過程で夫のハリソン・フォードが犯人であることが明らかになる。映画の作りは、これをサプライズとして提示しようとしており、予備知識を持っていなかった私はまんまと騙された。しかし、この映画の予告編と宣伝文句では、ハリソン・フォードが悪人であることが明確にわかるようになっている。本作の予告編も、それを見るだけでこの映画全体のストーリーが完全にわかるような内容である。

 驚くべきことに、ゼメキスはこのような予告編を作ることに賛成しているのだと言う。以下、孫引きになるけれども、ゼメキスの発言を翻訳引用すると、「映画のマーケティングの研究から、人々は映画を見に行くときに、その中で起こることすべてのことを事前に知っておきたいと思っていることがわかっています。そういうことなのです。私は、映画愛好者、映画の研究者、映画学者、そして監督として、そうは考えません。私が連想するのはマクドナルドです。マクドナルドが大きな成功を収めている理由は、意外性がまったくないことです。どのような味がするのかははっきりとわかっています。全員がメニューを知っているのです」。

2001/11/20

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