テイラー・オブ・パナマ

Taylor of Panama,The

John Boorman / Pierce Brosnan,Geoffrey Rush,Jamie Lee Curtis,Leonor Varela,Brendan Gleeson / 2001

★★★

堅実だが

 ジョン・ブアマン監督作品。私にとっては1984年の『エメラルド・フォレスト』以来なのだが、ゆっくりとしたペースで映画を作り続けていたようだ。ジョン・ル・カレの小説『パナマの仕立屋』を映画化したもの。製作・脚本にル・カレ自らが関わっており、映画化にあたっての改変にも彼の意思が反映されていると思われる(製作に関わるのは初めてのことである)。

 仕立屋を演じるのはジェフリー・ラッシュ、英国の情報部員を演じるのはピアーズ・ブロスナン。原作の粘っこい文章が醸し出していた重厚感をすっぱりと捨てて、軽いコメディの感じにしている。仕立屋が引き起こした混乱のケリの付け方もずいぶんと「商業映画的」で、エンディングに至る一連の流れはル・カレ原作のストーリーとは思えないような内容だ。

 映画はパナマで撮影されており、そこに描かれる風景は、この物語が展開する場所についての理解を深めてくれた。映像の持つ情報量はやはり凄い。それ以上に良かったのは、ジェフリー・ラッシュとピアーズ・ブロスナンの2人。私はジェフリー・ラッシュはあまりぴんと来なかったのだけれども、この映画での仕立屋はル・カレの描いた主人公を見事に肉体化していたように思う。オープニングの背広の型をとるシーンは秀逸。そしてピアーズ・ブロスナン。私は歴代のジェームズ・ボンドの中でブロスナンが一番好きなのだが(まあ賛同する人はそれほどいないと思うが)、それはこの人がこういうような役を演じるポテンシャルを持っているからで、この映画はそのポテンシャルをフルに活かしている。ブロスナンはジェームズ・ボンドを演じるときも、一歩間違えればこの映画の情報部員のような卑しさを露呈してしまいそうな雰囲気を漂わせていて、それが危険な魅力になっている。『めぐり逢い』でも似たような役を演じていた。

 その他、「サイレント・オポジション」のリーダーであるブレンダン・グリーソンが、そう言われないとわからない化け方をしていた。仕立屋の妻にジェイミー・リー・カーティスの乳首が一瞬見えるところがなんか凄かった。ただこの2人も含めた脇役全員が、脚本のせいでほとんど存在感を持ちえていない。だから、映画の終わりに向けて仕立屋がはまった罠の恐ろしさがわかりにくくなっているように思った(甘いエンディングはもちろんのこと)。

 全体として、ル・カレはちょっと色気を出し過ぎのような気がする。3時間ぐらいのボリュームで、もっとじっくりと、もっと悲惨な話を描けばよかったのに。どっちにしろ興行的には芳しくなかったようだし。

 なお、ル・カレ原作の映画で私の好きなのは、『寒い国から帰ったスパイ』(1965)と『リトル・ドラマー・ガール』(1984)。後者はジョージ・ロイ・ヒルの最高傑作だと思う(賛同者はいないと思うが)。

2001/12/8

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