ザ・トレンチ 塹壕

Trench,The

William Boyd / Paul Nicholls,Daniel CraigJulian Rhind-Tutt, / 1999

★★★

狙いが成功したとは言いがたい

 監督のウィリアム・ボイドは作家、脚本家。本作は監督デビュー作である。

 第一次世界大戦のソンムの戦いの48時間前の時点から、前線の塹壕で待機している英陸軍の小隊の様子を描く。極限的な密閉状態における青春軍隊映画で、カメラはほとんど塹壕の中から出ない。予算の制約もあったのだろうけれども、小説家、脚本家としてはその制約を逆に活かした「密閉空間もの」を作りたかったのだろうと推測する。それに成功しているとは必ずしも言えない。

 この映画の構成要素は、いずれもステレオティピカルである。これに、映画の最後に「ソンムの戦い」の幕開けが描かれるという観客側の予想も加えると、この映画には予想外のシチュエーションが1つもないと言ってよい。そのようなステレオタイプに挑戦するときには、映像としての説得力が唯一の頼みとなるわけだが、本作の作者はほんとうにそのことがわかっていたのかと疑ってしまうほど映像に魅力がない。

 特に問題なのは、塹壕の重苦しい密閉感が微塵もないこと、またそれと関連して、セットに上から当てている光にまったく工夫がないことだ。だから、塹壕の中から外の様子をかいまみるシーンや、草原を進軍するシーンとのコントラストがまったく効果をあげていない。また、ステレオタイプの役柄を割り当てられた登場人物たちは、それをそのまま演じる以上のことを何もやっていないような気がする。

 そんなに悪い映画ではないのだが、実験的なシチュエーションに挑戦したわりには見るべきところが少なすぎるということで。

2002/1/13

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