ギター弾きの恋

Sweet and Lowdown

Woody Allen / Sean Penn,Samantha Morton,Uma Thurman,Woody Allen,Gretchen Mol, Anthony LaPaglia / 1999

★★★

予想以上によかった

 ウディ・アレン監督作品。『カメレオンマン』(1983)に似た、架空の人物を歴史の中にはめこんで描く映画である。本作で描かれるのは、1930年代に活躍したジャズ・ギターリストのエメット・レイ。

 私は、歳をとって丸くなったせいなのか、ウディ・アレンの映画を見てもそんなに腹が立たなくなった。本作では、エメット・レイの人生をしたり顔で解説する役でウディ・アレンが出演しているが、そのあざとさを笑って許す余裕がでてきた。

 本作で輝いているのは、何といっても唖者の洗濯女を演じるサマンサ・モートンである。ところで、どうしても差別用語を使えないということなのか、DVDの字幕では「唖」("mute")の字はもちろんだが、登場人物が何度も明瞭に発音しているのにもかかわらず、ジャンゴ・ラインハルトの出自を表す「ジプシー」という言葉が1回も出てこなかった。字幕だけを見ていると、サマンサ・モートンを取り巻く人々がPCな人々で、ジャンゴが生っ粋のパリジャンのように思えてくる。

 それはともかく、本作のサマンサ・モートンは、ウディ・アレンのロリコン趣味が物質化したものである。この映画のサマンサ・モートンとウマ・サーマンを足して2で割るとミア・ファローになる。ウディ・アレンの嫌みは、観客や批評家がこういう深読みをするだろうと期待して役柄と配役を決めたのだろうと想像できてしまうところにある。とはいっても、サマンサ・モートンが輝いていることには変わりはないし、ウディ・アレン映画のダイアン・キートンやミア・ファローもやっぱり美しかった。『ノー・ルッキング・バック』の項に書いたが、ウディ・アレンとエドワード・バーンズの決定的な違いは、前者が女好きであり後者が(自分を含めた)男好きである点にある。

 私が目当てにしていたグレッチェン・モルは、ショーン・ペンの弾くギターの素晴らしさを認識する感受性のない愚鈍な女の役で、最後にごく短いスクリーン・タイムを与えられている。このグレッチェン・モルの堅実な感性にうたれて、ショーン・ペンが「改心」するというストーリーだったら良かったのだけれども、そんな脚本は絶対書かなさそうなところがウディ・アレンの限界であるし、この映画全体のどうしようもない安っぽさの原因である。というか、やっぱり最後になってむちゃくちゃ腹が立ったのだった。

 ショーン・ペンは、しばらく前から、鏡の前でロバート・デニーロとハーヴェイ・カイテルの物真似の練習をしている気配がする。本作ではかなりうまくなっている。

2002/1/13

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