あの頃ペニー・レインと

Almost Famous

Cameron Crowe / Patrick Fugit,Billy Crudup,Jason Lee,Kate Hudson,Frances McDormand,Anna Paquin,Philip Seymour Hoffman / 2000

★★★★

いや〜甘酸っぱい

 キャメロン・クロウが監督・製作・脚本。15歳の少年が70年代ロックの世界で音楽ジャーナリストとしての道を歩み始める姿を描いた「自伝的映画」とされる。

 これは美化しすぎだろう。特にキャメロン・クロウ本人が投影されているとされるパトリック・フュジット演じるウィリアム・ミラーは、「映画作家が自らを投影したキャラクター」としては異例なほど美しい。そのことを含めて、70年代初頭のロックの世界を懐かしく思い出すおとぎ話なのだが、クロウさんよ、そういうことをするのはまだちょっと早いんじゃないですか? 私自身は70歳ぐらいにならないと、こういう感じの話を楽しめない気がする。

 主役のパトリック・フュジットは、トビー・マガイアやイライジャ・ウッドを連想させる面白い役者で、映画の中にうまくおさまっている。彼がツアーに同行するバンドStillwaterのリード・ヴォーカルを演じるジェイソン・リーはメインストリームの映画でも見事だ。母親のフランシス・マクドーマンド、雑誌Creemの編集長レスター・バングスを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンは超安定。

 Stillwaterのギターリストを演じるビリー・クラダップは、やはり70年代を舞台にした『ラスト・リミッツ 栄光なきアスリート』でスティーヴ・プリフォンティーンを演じた人。出世作となった『スリーパーズ』(1996)も、たしか1970年代(ただし後半)を舞台にしていた。要するにコンテンポラリーな感じがしない人、なんだと思われる。邦題に使われたペニー・レインという名前のグルーピーを演じているのは、ゴールディ・ホーンの娘のケイト・ハドソン。この重要な役割を担っている2人が弱い。この2人は主人公の憧れであり、その憧れが幻滅へと変わって、さらに敬愛の念へと変わることが本作の「成長物語」のネタなのだけれども、このプロセスにあまり説得力を感じられなかった。これは15歳の少年から見た物語なのだから、その憧れの人の描写が鋭くならないのは当然だというロジックには、上のパラグラフで挙げたジェイソン・リー、フランシス・マクドーマンド、そしてフィリップ・シーモア・ホフマンがリアルすぎるために説得力がなくなっている。

 このところの「ヒップでクールな人々の輝きと暗部を描く映画」というジャンルでは、70年代末から80年代前半、具体的には「ディスコ時代」を取り上げている映画が目立っているように思う。私が念頭に置いているのは、『ジーア/裸のスーパーモデル』『ブギーナイツ』『ラスト・デイズ・オブ・ディスコ』『54 フィフティ・フォー』などだ。これらの映画は、いずれもこの時期が「エイズ前夜」であったということを強く意識し、いまもエイズ時代が続いているということを前提として、それ以前の無軌道な若者の生き方を描く、というアプローチをとっている。本作は、それのさらに1つ前の時期、すなわちディスコ以前を描いているわけだが、90年代末に作られた80年代を描いた映画に慣れた観客にとって、本作で描かれる70年代前半の世界は非常に衛生的に見える。

 現実がどうだったかという話ではない。映画が過去の一時期を題材として取り上げるときに、どのような視線を持つことが可能かということである。そして本作のように社会の規範から自由な、価値中立的な視線が可能になったのは、80年代についての語りの土壌ができあがっていたからだろう。ちょっと前までは、60〜70年代ロックのインサイダーの物語を語る上で、登場人物が誰一人としてドラッグの過剰摂取で死なないというようなストーリーは考えにくかった。本作の商業的な成功のおかげで、今後はこれが規準となるのかもしれない。

2002/4/21

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