トラフィック

Traffic

Steven Soderbergh / Michael Douglas,Catherine Zeta Jones,Don Cheadle,Benicio Del Toro,Luis Guzman,Dennis Quaid,Steven Bauer,Miguel Ferrer,Amy Irving,Albert Finney,James Brolin / 2000

★★★★

ちょっとわざとらしいけど傑作

 スティーヴン・ソダーバーグ監督作品。2000年度のアカデミー賞は、本作と『エリン・ブロコビッチ』の2本が大活躍した。英国のTVシリーズを映画化したもの。

 かなりわざとらしい手持ちカメラと発色で、アメリカとメキシコの麻薬取引の世界を描く。2時間半の長尺をまったく飽きさせずに見せる力業。あと1時間ぐらいあっても喜んで見ると思う。ソダーバーグの娯楽映画路線、つまり『アウト・オブ・サイト』(1998)、『イギリスから来た男』(1999)、『エリン・ブロコビッチ』の中では、やはり一番完成度が高い。

 アカデミー賞助演男優賞を含む数々の賞をとったメキシコ人警官を演じるベニチオ・デル・トロが素晴らしい。アメリカ側のドン・チードルとルイス・ガスマンのストーリーラインも、司法取引を行う悪人ミゲル・ファーラーを含めて良い。そういうわけで、残る1つのライン、つまりマイケル・ダグラス、エイミー・アーヴィング、エリカ・クリステンセンの家族を巡るラインの弱さが際だってしまった。アメリカの麻薬問題を複数のレベルで描くという意図から見ると、これはかなりの弱点ということになる。「前線の警官たちが頑張ってるのに、政治家と末端のユーザーがバカなもんだから」という結論が出てきてしまうからだ。これはもちろんドラッグものの映画や小説の常套句ではあるけれども、映画作者の意図はそこにはなかったと思われる。映画の作りは意図的にこの3つのラインを緩くカップリングしているのだが、少々人工的なプロットになるとしても、無理に込み入ったつながりを作っていれば、マイケル・ダグラスのラインの弱さはそんなに目立たなかっただろう。

 さらに、アメリカとメキシコを結ぶキャサリン・ゼタ・ジョーンズのラインが、デニス・クエイドを含めて弱いのも気になる。これらの弱い要素を削除した場合、この映画はベニチオ・デル・トロのメキシコ篇と、ドン・チードルとルイス・ガスマンのサンディエゴ篇の2つになり、ならば2本の映画を作ればよかったんじゃないかという気もしてこないでもない。要するに、本作の複数のストーリーが同時に進行するという企画そのものは成功しているとは言えないのである。

 2000年の時点でアメリカ人がこの映画を重視したということは、アメリカ(およびメキシコ)の麻薬問題の深刻さを表している。現場で戦う法執行官たちを賛美し、アメリカ人のコンシューマとしての役割をダウンプレイし、サプライヤとしてのメキシコの国内問題を重く見るという視点には政治的な思惑が強くチャージされており、このような視点を少々高級な映画にパッケージ化した本作は賛美しやすかったのだと思われる。これはアメリカ人向けのfeel-good movieなのである。

 もう一点、強く感じたのは、ヒスパニックの役者(と登場人物)たちの強力さだった。歴代のアカデミー賞作品賞候補作の中に置いてみると、本作はヒスパニックの扱いという点で1つのターニング・ポイントとなっていた、ということになるんじゃないかとふと思った。

2002/4/30

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