ブラックホーク・ダウン

Black Hawk Down

Ridley Scott / Josh Hartnett,Eric Bana,Ewan McGregor,Tom Sizemore,Sam Shepard,Ewen Bremmer,William Fichtner / 2001

★★★★

よくできた戦争映画

 リドリー・スコット監督作品(『ハンニバル』『グラディエーター』『GIジェーン』)。1993年10月にソマリアで行われた米軍の作戦行動を記録したマーク・ボウデンの原作(訳書のタイトルは『強襲部隊』。映画公開に合わせて『ブラックホーク・ダウン』に改題)を映画化したもの。何はともあれ、本作が『病院狂時代』(1982)や『キャット・ピープル』(1981)以来の、まともに見られるブラッカイマー映画であることを喜びたい。

 原作にはアメリカ人兵士とソマリア人の双方の視点があったが、本作はアメリカ人兵士の側に焦点を絞り、「ハリウッド・スター・フレンドリー」な形にストーリーをいくらか変更している。その背後には明らかにアメリカ人にとってのfeel-good movieにするという意図があるけれども、リドリー・スコットとジェリー・ブラッカイマーという固有名詞から想像するものと比べるとずっと穏健なものだった。日本人ジャーナリストによる『ソマリア ブラックホークと消えた国』という本(お勧めしない)には、ソマリアの屋外映画館で一緒に本作を見たソマリア人たちが、「ブラックホークが撃墜されるシーンや、アメリカ軍兵士に銃弾が命中した時など、全員が立ち上がり拍手喝采を送っていた」という記述がある。本作はソマリア人がそのように楽しめるぐらいに中立的だったと言えるのかもしれない(ただし、ソマリアで上映されていたものは大幅にカットされていたとのこと)。

 基本的には、ハリウッド戦争映画のセンチメンタリズムを排して、戦場にいる兵士たちの混乱をリアリスティックに描くというアプローチをとっている。ただ私には、そのドキュメンタリー・タッチのアプローチが中途半端であるように思えた。描写がリアリスティックであればあるほど、部隊からはぐれた兵士たちのコミック・リリーフや、致命傷を負った兵士をめぐる思い入れたっぷりの場面などが邪魔に思えてくる。もちろん、そういうものを入れないとポスト9.11事件の娯楽映画として成り立たなくなるという判断があったわけだが、最終的にできあがったこのミックスは最適なものと感じられない。ただし、そのような夾雑物を無視して楽しめるほど、他の部分に迫真性があったことはたしか。

 ソマリア人の描写はほとんど西部劇のインディアンや『バタリアン』のゾンビや『スターシップ・トゥルーパーズ』の虫のレベルで、原作を読むと、これはどうやら本当にそういうものだったようだ。ソマリア人たちが撃たれるのがわかっているのに突撃してくるとか、相手の弾はほとんど当たらず、こちらのはどんどん当たるというような「リアリティのない設定」は、アメリカ人の兵士たちの体験と実感に基づいている。映画では描写が控えめだったけれども、基地への帰還時に車輌に乗り損なった兵士たちは、視野に入ったソマリア人を片っ端から撃ちながら道路を走り、全員が生還した。クリントン政権の日和見的な態度が引き起こした大失策ということになっていても、戦闘そのものは間違いなく非対称的だったのである。

 米軍にとっては小規模なオペレーションであり、原作があまりにも網羅的なものなので、この事件を別の視点から取り上げるアメリカ映画が近いうちに作られるということは考えにくい。膨大な数の死傷者を出しながら、圧倒的な火力の差がある侵入者の撃退に成功した根性ある人々を描くソマリア映画が作られる日が一刻も早く訪れるよう祈っている。

 ジョッシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、トム・サイズモア、サム・シェパードなどが出ているが、個人的にはウィリアム・フィクトナーが活躍しているのが嬉しかった。

2002/5/14

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