裏切り者

Yards,The

James Gray / Mark Wahlberg,Joaquin Phoenix,Charlize Theron,James Caan,Ellen Burstyn,Faye Dunaway / 2000

★★★

暗い

 監督のジェームズ・グレイは『リトル・オデッサ』(1994)の人で、これは2作目にあたる。

 刑務所から出てきたマーク・ウォールバーグが、病気がちの母親エレン・バースティンのためにも堅気になって働こうとするが、事件に巻き込まれて墜ちていくという「立ち直れないギャング」の映画。しっかりとした映像で陰鬱な物語を延々と描く。ホアキン・フェニックス、シャーリーズ・セロン、ジェームズ・カーン、フェイ・ダナウェイと芸達者な人々が力を振り絞って陰鬱な演技をする。最近、このタイプのものをほとんど見ていなかったので楽しむことはできたのだが、「いったいなぜこんな映画を作るのか」という疑問は最後まで残った。

 いやつまり、この人が落ち着いた映像で陰鬱な映画を作れるということはよ〜くわかったし、(マーク・ウォールバーグを除く)主要キャストが陰鬱な演技ができるということもよ〜くわかったのだが、これらのことを実証することが、この映画の製作目的だったわけではあるまい。手垢のついた話を地味に語る本作は、プログラム・ピクチャーの一品としてはたぶんいいのだけれども、単独で勝負するのには無理がある。これではまるで、ホアキン・フェニックスとシャーリーズ・セロンの、次の陰鬱な(しかしもっとクリエイティブな)映画のためのオーディション・フィルムだ。

 なお、コンベンショナルな「立ち直れないギャング」映画にはしないという意思が感じられる部分もないわけではない。それは、本作の主人公として位置付けられるマーク・ウォールバーグの存在感の薄さである。観客はコンベンショナルな「立ち直れないギャング」映画の定石である主人公への同情をほとんど感じることができないだろう。そのため本作は、存在感が薄くて頭が悪そうな男が、次に何をするかわからないために、周囲の人々が振り回されるという映画になっている。特にホアキン・フェニックスの振り回され方が興味深く、本作はところどころでホアキン・フェニックス主演のジェームズ・ディーン映画みたいな雰囲気を漂わせる。

これが意図的なものだとしたら、ものすごくわかりにくい仕掛けだし、物語の終わり方には芸がない。まあ、調整の失敗と理解しておくのが穏当なのだろう。いずれにせよ、演技合戦の映画では、演技に説得力がある方に観客は感情移入してしまうというごく当たり前の事実を再確認することができた。

 シャーリーズ・セロンがまたもや必然性のないヌードを披露している。なお、途中から、「困った部下を2人持って困惑する中間管理職」という感じのジェームズ・カーンを応援している自分に気が付いた。

2002/5/21

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