シャドウ・オブ・ヴァンパイア

Shadow of the Vampire

E. Elias Merhige / John Malkovich,Willem Dafoe,Udo Kier,Cary Elwes,Catherine McCormack / 2000

★★

少々退屈な演技合戦

 監督のE・イライアス・マーヒッジは、これが初の商業作品のようだ。

 F・W・ムルナウの『ノスフェラトゥ』"Nosferatu eine Symphonie des Grauens"(1922)で吸血鬼を演じたマックス・シュレックはほんとうの吸血鬼で、あのメーキャップは素顔だったというアイデアをもとにした架空歴史もの。ムルナウ(ジョン・マルコヴィッチ)は、映画の現実味を出すために、主演女優のグレタ・シュレーダー(キャサリン・マコーマック)を差し出すという交換条件で、シュレック(ウィレム・デフォー)に出演を依頼するが、なんせこの人は吸血鬼なものだから、生身の人間と一緒にいるだけで落ち着かない。

 その他、主演男優のグスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム(エディ・イザード)、プロデューサーのアルビン・グラウ(ウド・キアー)、脚本家のヘンリク・ガレーン(アデン・ジレット)、カメラマンのフリッツ・アルノ・ヴァーグナー(ケイリー・エルウィズ)などの実在の人物が出てきて、それぞれ大変な目に遭う。使用言語が英語で、ドイツ語訛りの英語がところどころで出てくるので減点1。

 発想は面白いし、いい場面もあるのだが(昼の世界を目にすることができないシュレックが映写機をのぞき込むシーンは感動的)、製作方針に一貫性がないせいで中途半端になっていた。たぶん他のすべての要素よりも前に、ジョン・マルコヴィッチとウィレム・デフォーの熱の入った演技に頼るという前提があったのだろう。全体的なメッセージが混乱しており、しかもその混乱が美しいという仕上がりにもなっていない。

 なお私にとって、ムルナウの『ノスフェラトゥ』は、ドライアーの『吸血鬼』"Vampyr"(1931)とともに、中学生の頃に見てしばらく悪夢に悩まされた思い出深い映画だ。ちょうどその頃にヘアツォークの『ノスフェラトゥ』"Nosferatu: Phatom der Nacht"(1978)が封切られ、そちらの方は「普通の映画」だったんで安心した覚えがある。ちなみにロメロの『ゾンビ』(1978)も同じ年。描写がリアリスティックまたは残酷になっても、これらの古い映画の方に原始的な意味での訳のわからない怖さがある。その点で、ジョン・マルコヴィッチとウィレム・デフォーの演技合戦に見える「賞狙い」の意図は怖さの阻害要因となっている。

 本作で一番訳がわからなく怖いのはキャサリン・マコーマック。

2002/6/2

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