エンド・オブ・ザ・ワールド

On the Beach

Russell Mulcahy / Armand Assante,Rachel Ward,Bryan Brown,Jacqueline McKenzie,Grant Bowler / 2000

★★★★★

不覚ながら泣いた

 ラッセル・マルケイ監督作品(『レザレクション』『タロス・ザ・マミー/呪いの封印』)。原題からわかるように、ネヴィル・シュートの小説で、1959年に映画化された『渚にて』のリメイクである。ただし、本作は3時間15分という長尺の(アメリカ資本が入っているものの)オーストラリアのTVムービー。原作とオリジナルの映画の設定を、TVムービーに合うように甘ったるく変えたお涙頂戴映画だ。私はこれを見て泣いてしまったので、大成功していると認定せざるをえない。もちろん、泣かない人も多いとは思う。

 グレゴリー・ペックの役をアーマンド・アサンテ、エヴァ・ガードナーの役をレイチェル・ウォード、フレッド・アステアの役をブライアン・ブラウン、アンソニー・パーキンズの役をグラント・バウラー、ドナ・アンダーソンの役をジャクリーン・マッケンジーが演じている。ちなみに、監督のラッセル・マルケイはオーストラリア人、米海軍の軍人を演じるアーマンド・アサンテはアメリカ人だが、レイチェル・ウォードは英国生まれでオーストラリア在住、その実生活上の夫のブライアン・ブラウン(『F/X』(1996)の人)もグラント・バウラーもジャクリーン・マッケンジーもオーストラリア人というわけで、オーストラリア人の映画ファンにとってはネヴィル・シュートの作品をアメリカ人から取り戻したという感慨があるようだ。

 ストーリーと設定をどのように変えたかは触れないことにしよう。全体的に、現代に舞台を設定し(全面核戦争は、台湾問題をめぐってアメリカと中国の間で行われたことになっている)、現代的な演技メソッドと演出を取り入れたら、このように変更せざるをえないと私は思う。いまの時代にグレゴリー・ペックとエヴァ・ガードナーのような演技はできない。

 嬉しかったのは、1982年の『シャーキーズ・マシーン』で私にとっての永遠のアイドルとなったレイチェル・ウォードの姿を久しぶりに見られたことである。本作の放映時には43歳(1957年生まれ)で、非常にきれいに歳をとっている。本作での役どころにはいろいろと難しい点があるのだが、ヘリコプターでの別離のシーンには泣けた。もう1点は、レニー・ハーリンのA級超大作『ディープ・ブルー』で印象的な死に方を見せたジャクリーン・マッケンジー。本作で彼女が演じる、現実に直面できない家庭の主婦の役は、映画全体の説得力を支えている。この人があまりに強力なので、メインのストーリーが傍流のエピソードに見えてくる。映画のバランスを崩したと言えなくもないのだが、とにかく一世一代の名演技であることは間違いない。

 その他、オーストラリアのTV役者であるグラント・バウラーは思いがけない収穫だった。

 ラッセル・マルケイはところどころでMTV風のお遊びをしているが、控えめに使っているので、効果はちゃんと上がっている。エンディングに向けて、グラント・バウラーとジャクリーン・マッケンジーの表情をきっちりと捉えつづけているのは偉い。このところ不調だったように思うが、本作は私の見た中では、この人の最高傑作なんではないかと思う。

 あまりに気に入ったのでDVDを購入してしまった。通してみると厳しい部分もあるけれども、いくつかのシーンは何度見ても泣けてくる。

2002/7/7

 オリジナルの『渚にて』を再見した。こちらの方がいいと言い切ってしまおう。

2002/10/20

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ