魔王

Unhold, Der

Volker Schlondorff / John Malkovich,Gottfried John,Marianne Sagebrecht / 1996

★★★★★

傑作

 フォルカー・シュレンドルフ監督作品(『パルメット』)。ミシェル・トゥルニエ原作の小説『魔王』(未読)の映画化である。脚本にジャン=クロード・カリエールの名がある。英語タイトルは"The Ogre"、フランス語タイトルは"Le roi des aulnes"。

 第二次世界大戦時のフランスとドイツを舞台にしたシビアな『フォレスト・ガンプ』。ジョン・マルコヴィッチ演じる無垢なフランス人が奇怪な運命に翻弄される。本作ではフランス語とドイツ語の両方の会話が英語で表現されており(ただしロシア語はロシア語)、ちょっと気を抜くと、その場面で喋られているのがどちらの言葉なのかがわからなくなることがある。『スターリングラード』ほど開き直ってはいないものの、ジョン・マルコヴィッチのセリフ回しを2つの言語で統一するという戦略は、この映画の奇怪さにポジティブな影響を与えていたように思う。意図したことなのかわからないが、世界がマルコヴィッチのまわりで回っているという感覚が生じてくるのである。

 本作で驚いたのは、シュレンドルフが枯れていることだった。上で『フォレスト・ガンプ』を引き合いに出したことからわかるように、いかにもそれらしい暗喩を散りばめた寓話なのだけれども、全般的にあっさりと話を進めていくのだ。少々贔屓目が入っているが、本作は彼がこれまでに作ったどの映画にも引けを取らない傑作だと思う。

 久しぶりにくどくないジョン・マルコヴィッチを見た。1996年の作品だから、実は旧作に属するのだった。

2002/7/21

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