メメント

Memento

Christopher Nolan / Guy Pearce,Carrie-Anne Moss,Joe Pantoliano / 2000

★★

大前提が間違っている

 監督のクリストファー・ノーランはこれが2作目。本作は高く評価されて数々の賞を受け、IMDBのユーザー・レーティングでは、現時点で8.8点で10位につけている。

 短期記憶を失った男を巡るミステリ仕立てのスリラー。頭部に受けた傷害のせいで短期記憶を失ったガイ・ピアースが、妻を殺した犯人を追っている。これに、キャリー=アン・モス演じる女とジョー・パントリアーノ演じる男が絡んでくる。

 そのような障害を受けた男がどのように振る舞うかという点で論理的に突き詰められていないのがどうしても気になる。その部分を除いて考えると、本作の根本的なアイデアはP・K・ディック的なものだ。で、本作を見た人がディック的なものを連想しにくいとすれば、それは本作の採用している語り口に原因がある。

 この映画は、ガイ・ピアースの体験を、現在から遡って細切れに描いていくという語り方を使っている。これは映画で使われる「謎解き」の典型的な手法であり、本作もこれを謎解きの手段として使っている。そのせいで、上で述べたように主人公の障害の設定が不十分であることもあいまって、普通の謎解き映画になってしまっているのだ。別に謎解き映画が悪いというわけではないが、本作の場合は、時間の遡りが3、4回繰り返された時点でネタの大体の傾向がわかってしまい、サスペンスの生じようがなくなるという問題がある。たとえば、最後の場面で探偵が関係者全員を一堂に集めて、自らの推理を開陳し、犯人を名指しするという古典的な探偵小説において、早い段階から(ナラティブが下手だったなどの理由で)犯人の正体がわかってしまうと、あとは探偵が犯人を見つけるまでのプロセスがどのように描かれるかという、甚だ醒めた興味しか持ちにくくなる(もちろん、そのプロセスが面白ければそれはそれで大歓迎なのだが)。そういう問題があるから、多くの小説や映画は、作品のフォーカスが謎解きの要素に集まるのをできるだけ避けようとするわけだ。

 本作は、ガイ・ピアースの抱えている障害の性質をもっと論理的に突き詰めた上で、時系列順に語っていき、物語の進展をオープン・エンドにすることでサスペンスを生じさせるべきだった。というか、それをうまく作れたら、非常に面白い映画になったはずなので、とてももったいない感じがするのである。

 その他の点では……と書こうと思ったが、やはり「障害の性質」が突き詰められていないので、ガイ・ピアースの陥るトラブル全般とその描写が単なる茶番にしか見えなかったとしか言いようがない。脈絡なく都合のいい必殺技が次々と繰り出される超人ヒーローもののようなものだ。

2002/8/2

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