ノイマイヤーの世界
John Neumeier at Work
アンドレ・S・ラバルテ / John Neumeier,Sylvie Guillem,Manuel Legris / 1989
★★★★★
味わい深い
本作はビデオで見たのだが(『ノイマイヤーの世界』を参照)、もともとは英国のTV用のドキュメンタリー番組で、その番組はドイツとフランスで別々に撮られたフィルムの寄せ集めだったものと思われる。最初の紹介は英語で行われるが、ノイマイヤーのインタビューはドイツ語、ナレーションはフランス語で行われるという訳のわからない構成だった。この作品のことをインターネット上で調べようと思ったのだが、どうしても見つけることができなかった。
ジョン・ノイマイヤー(John Neumeier)はアメリカ出身だが、ドイツのハンブルグ・バレエの芸術監督を長年つとめている、現代を代表するコレオグラファーである。というような説明が必要な人には、たぶんこの作品は面白くない。ただ、いくぶんでもコンテキストを知っている人にとっては、このドキュメンタリー・フィルムに入っている「お宝映像」がたまらないだろう。製作は1989年となっているが、収録されている映像が撮影されたのはたぶんもう少し前である。
まず『マタイ受難曲』の振り付けを行う場面が素晴らしい。コレオグラファーがダンサーに解釈を伝え、それをダンサーが咀嚼しながら踊りを作っていく場面を収録したドキュメンタリー映像として一級品である。ここで踊っているダンサーはアンデルシュ・ヘルストレームという人らしい(たぶんAnders Hellstromである)。
そして、最後にシルヴィ・ギエムとマニュエル・ルグリによる『マニフィカト』のリハーサルと本番の様子を見ることができる(Magnificatを参照。このページに記されているワールド・プレミアのときの映像なのだとしたら、収録は1987年ということになる)。このシーンでのマニュエル・ルグリは添え物なのだが、シルヴィ・ギエムの体の動きは完璧以外のなにものでもない。彼女のパリ・オペラ座の時期の映像として貴重なものだと思われる。
モダン・バレエについての予備知識がまったくない人には勧められない、少々マニアックなドキュメンタリー作品なのだが、この最後の部分のギエムの踊りは万人にアピールするはずだ。ただしそこまで耐えるのがしんどいかもしれない。私はインタビューの模様も興味深く見ることができたのだが。
2002/8/2