ジョー・ブラックをよろしく

Meet Joe Black

Martin Brest / Brad Pitt,Anthony Hopkins,Claire Forlani / 1998

★★★★

ぎりぎりのところで支持せざるをえないテンポの遅い映画

 監督のマーティン・ブレストは『ビバリーヒルズ・コップ』、『ミッドナイト・ラン』、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の人。ブラッド・ピットが主演のラブ・ロマンス。上映時間が181分。というような諸条件から、手を出さなかった人も多いと思うが、これはなかなか注目すべき映画だった。

 この映画が181分という長尺になっているのは、入っているエピソードが多いからではなく、ひたすら1つのシーケンスに費やすショットが多く、さらには1つのショットに費やす時間が長いためである。また、普通の映画であれば緩急ということを考えて、序盤はゆっくりとしたペースにするとしても、クライマックスが近づくにつれてテンポを速くするなどの工夫をするものだが、この映画はそんな小細工は嫌だということなのか、最後まで同じように続く。その結果、編集が耐えられないという意見も出そうな感じの映画になっているが、これは完全な確信犯だ。その試みが成功しているかというと難しいところではあるが、成功するのかどうかという興味が最後まで持続したことは間違いない。

 死を迎えつつあるアンソニー・ホプキンスが超人的とでもいうべき模範演技をし、ブラッド・ピットが『スターマン』(名作!)のジェフ・ブリッジズのような演技をし、彼に恋するホプキンスの娘役のクレア・フォラーニが、悪くいえばワンパターン、良くいえば一貫性のあるというか、ワンパターンであることに耐えるだけの映画的存在になりうるかという挑戦といった感じの演技をし、それらをカメラは平然と映し続ける。観客は、この体力/持続力に付き合えるかどうかテストされることになる。

 ストーリーが展開していくにつれ、このスタイルが映画と互換性を持っていないと感じさせる場面が増えていくのだが、最初の20分ほどの導入部は文句なしに良い(それを見ていたときは、まさかこれが最後まで続くとは思っていなかったわけで)。特にブラッド・ピットとクレア・フォラーニが出会うコーヒー・ショップのシーンは、過剰なカットバックと、カットごとの両者の微妙な演技の推移が魅力的で、「二人の人間が恋に落ちる」というこの世で一番映像化が難しいと思われる観念を見事に実現していた(それを見ていたときは、まさかこの手法が、これほど重要でないシーンを含めたすべてのシーンで使われるとは思っていなかったわけで)。

 もう1つ、この映画で過剰なのは視線である。この映画ほど、役者の視線の動きに過剰な意味が持たされている映画は他に知らない(理由は明らかで、これをやりすぎると逆に意味が薄れるからなんだが)。役者が正面から撮られているショットはもちろんなのだが、横顔しか映っていない場面でも登場人物の視線が強烈な意味を持っている。一方、主役級以外の人はことごとく視線での演技を禁じられている。

 たまたまジョディー・フォスター監督の『ホーム・フォー・ザ・ホリデイ』を見たからこれを対照的な例として出すけれども、ジョディー・フォスターが(役者であるがゆえに)役者の演技というものにあまりにも楽観的であるのに対し、この『ジョー・ブラックをよろしく』は、役者の演技が単独で成り立つものではないという深いペシミズムがあって、それをどうやって支えるかという映画的課題にきわめて意識的であるように感じられた。いやはや恐ろしい企みである。

1999/11/14

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