スピードウェイ・ジャンキー

Speedway Junky

Nikolas Perry / Jesse Bradford,Jordan Brower,Daryl Hannah,Jonathan Taylor Thomas,Patsy Kensit / 1999

★★★

古いテーマの掘り起こし

 監督・脚本のニコラス・ペリーにはいくつかの監督作品があるようだ。

 現代のラス・ヴェガスを舞台に、『真夜中のカーボーイ』(1969)の「リイマジネーション」をやるという試みなのか、単に時代遅れなだけなのかよくわからない映画だった。後者だと思ってしまうと見るに耐えないかもしれないが、私は懐かしいという感覚を持ったし、いろいろと考えさせられるところがあった。

 『チアーズ!』のジェシー・ブラッドフォード演じる純朴な青年が、ノースカロライナでレーサーになろうと思って家出をし、旅費を稼ぐためにラス・ヴェガスにやってくる。彼はそこで社会の底辺層の若者たちと出会い、男娼になる。『真夜中のカーボーイ』のダスティン・ホフマンに相当するジョーダン・ブラウアー(新進俳優といってよさそうだ)は同性愛者で、ジェシー・ブラッドフォードへの叶わぬ愛に苦しむ。その他、ダリル・ハンナがジョーダン・ブラウアーを可愛がっている娼婦を演じ、パッツィ・ケンジットがジェシー・ブラッドフォードを客だと勘違いして車に乗せる娼婦の役で1シーンだけゲスト出演している。ジョナサン・テイラー・トーマスが男と女のどちらでも相手にする男娼の役を熱演。

 『アメリカン・ナイトメア』は1960年代末から1970年代にかけてのアメリカのホラー映画を扱ったドキュメンタリーだった。これらのホラー映画が日陰の花だとしたら、同時期に表舞台にいたのはアメリカン・ニューシネマだった。

 本作を見ていて、あれからいくつか大きな変化があったことを改めて痛感した。まず第1に、ホモセクシャルがいかなる意味でもスキャンダラスなものではなくなった。本作の田舎から都会に出てきた主人公は、初めてゲイの男から言い寄られ、またゲイの友人から愛情を寄せられて怒ると同時に困惑する。そのことが、もうほんとに単純に、彼が田舎者であるという意味しか持たなくなっている。特に、ゲイがヒップであるというような設定になっていないことが、その印象を強化している。

 第2に、悲惨な環境を描いているのにもかかわらず、やたらに前向きである。ドイツ映画の『バンディッツ』の項に書いたことだが、1960年代から1970年代にかけて、悲惨な目に遭った主人公たちが最後に死ぬ映画が世界的に多く作られ、その後少なくともアメリカはその傾向を脱した。本作では死者も出るけれども、主人公の未来はアメリカン・ニューシネマの時代には考えられないほど明るい。

 第3に、お姉さまが色っぽく若い。さきほど調べて驚愕したのだが、『卒業』(1967)出演時のアン・バンクロフトは36歳だった(1931年生)。一方、たとえばメグ・ライアンは同じ年齢で『恋におぼれて』に出ており、ジュリアン・ムーアは『サバイビング・ピカソ』に出ている。そもそも『SEX and the CITY』の登場人物たちと同年代だったわけだ、あのミセス・ロビンソンは。本作で主人公の「手ほどき」をするダリル・ハンナは39歳で、問題なく現役である。

 ちょっとまとめの言葉が思い浮かばない。

2002/9/21

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