フロム・ヘル

From Hell

Albert Hughes,Allen Hughes / Johnny Depp,Heather Graham,Ian Holm,Robbie Coltrane,Ian Richardson,Jason Flemyng,Katrin Cartlidge / 2001

★★★

豪華ではあるが

 監督のアレン・ヒューズとアルバート・ヒューズは兄弟で、なんか「俊英」らしいのだが、作品を1本も見ていないのでよくわからない。19世紀末のロンドンを舞台にした切り裂きジャックもの。フリーメイソン・王室の陰謀説を取り、事件を捜査する刑事と、ターゲットとなる娼婦を主人公に設定している。原作はコミック。

 刑事を演じるのがジョニー・デップで、娼婦を演じるのがヘザー・グレアム。ジョニー・デップの相棒の警官をロビー・コルトレーン、王室付きの医者をイアン・ホルム、その他、イアン・リチャードソンとかカトリン・カートリッジ(2002年9月に41歳で逝去したとのこと)などの重量級の役者を配し、19世紀末のロンドンの風俗をリアリスティックに描く本格派の歴史ものである。

 で、それがどうしましたか? という拍子抜けの映画ではあった。考えてみれば、この映画の中で、切り裂きジャックの正体が誰であっても、観客は驚きはしない。諸説あって真相がわからないわけだから、映画の中でどれだけ意外な犯人が提示されても、「そりゃ、あんたの考えだろ」と突っ込む余地がある。つまり、このような史実をベースにした新解釈ものでは、「意外な犯人」を提示するためのミステリ映画の常道(最初は普通の人として出てくるが、実は……みたいな)は使えないのである。

 この映画のポテンシャルは、ジョニー・デップとヘザー・グレアムの成就しない愛にあった(この2人がどの時点でなぜ惹かれ合ったのかいまだによくわからないんだが)。犯人の正体をさっさと明かして、この愛の行方に焦点を当てた方がずっと面白くなっただろうと思う。

 あるいはヘザー・グレアムとカトリン・カートリッジの役柄を入れ替えて、ヘザー・グレアムを早めに死なせてしまい、ジョニー・デップがカトリン・カートリッジと恋に落ちるというような脚本であれば凄い作品になっていただろう。そんなことをやる度胸は、凡百の映画作家や映画会社にはない、というのが、『鳥』の項に書いたことの趣旨である。

2002/9/30

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