アイス・ストーム

Ice Storm, The

Ang Lee / Kevin Kline,Sigourney Weaver,Joan Allen,Jamey Sheridan,Christina Ricci,Elijah Wood,Adam Hann-Byrd,Tobey Maguire / 1997

★★★★★

強力な密度を持った傑作

 『ウェディング・バンケット』などのアン・リーの監督作品。私は『ウェディング・バンケット』を見て、この人は「下手」だと思ったんでそれ以降手を出していなかったんだが、この『アイス・ストーム』を見て深く深く反省した。これはちょっと形容のしようがない完成品だった。撮影監督はデヴィッド・リンチなどのフレデリック・エルムズで、クライマックスとなるアイスストームのシーンの美しさはもちろん良いが、どのシーンも端正でよい。

 ケヴィン・クラインとジョーン・アレンの夫婦。その息子のトビー・マガイアと娘のクリスティーナ・リッチ。隣人のジェイミー・シェリダンとシガーニー・ウィーヴァーの夫婦と、その息子のイライジャ・ウッドとアダム・ハン=バード。トビー・マガイアが恋心を寄せる少女のケイティー・ホームズ。これらの人々が、1970年代の、ニューヨークのベッドタウンとして機能しているコネティカットの町に住む中産階級の家族を演じている(ケイティー・ホームズだけ違うが)。そしてこれらの人々全員が、何か賞を受賞しても当然と思われるような名演技を見せるという奇跡的な映画である。

 親の世代についていえば、ジョーン・アレン(『ボビー・フィッシャーを探して』などが思い浮かぶ)があまりにも凄いので、他の3人が霞んで見える。まあ美味しい役ではあるにしても、ドラッグ・ストアで万引きするところの背筋の曲がり方なんかが強烈。しかしやっぱり素晴らしいのは子役たちで、非アメリカ的な、アジア的というよりもヨーロッパ的な子供像がそこにある。たとえば、帰省したトビー・マガイアが、互いに「チャーリー」と呼び合っている妹のクリスティーナ・リッチの部屋に入って二人で話をするところに私はメロメロになった。そういうふうにいちいち感動できる細部がいっぱい詰まっている。

 クリスティーナ・リッチのファンは、思春期を迎えていっそ「デブ」と呼んだ方がいいぐらいに体形が変化している頃合いなので見逃してはならない。最後の方で、裸になってベッドに入るところなんかは神々しいと言ってもよいが、雨上がりの道でケヴィン・クラインに「抱っこ」される姿は衝撃的だ(というふうに熱心に語りたくなるようなシーンが他にもたくさんある)。変な演技をさせられることが多くて可哀想なイライジャ・ウッドは、この映画では非常にきれい。

1999/11/14

IMDBの該当ページへ

検索ページへ 目次へ 前へ 次へ