この胸のときめき

Return To Me

Bonnie Hunt / David Duchovny,Minnie Driver,Carroll O'Connor,Robert Loggia,Bonnie Hunt,Joely Richardson,James Belushi / 2000

★★★

ああ残念

 ボニー・ハントの大ファンである私は(『デーヴ』の10秒ほどの出演シーンを、DVDで繰り返して見ている奴が他にいるか!?)、彼女のこの初監督・原案・脚本・出演作が大傑作になっていることを強く願っていたのだが、残念ながら期待外れだった。

 デヴィッド・ドゥカヴニーの妻ジョエリー・リチャードソンが交通事故で死に、その心臓をミニー・ドライヴァーが貰って命をつなぐ。1年後、2人はほんの偶然から出会い、恋に落ちる。果たして真実を知ったとき、2人はどうなるんだろう、というロマンティック・コメディ。それぞれの側に人情派役者をたっぷりと揃え、徹底的に泣かせにかかる。

 ストーリーが最後にイタリアへと行き着くところから、どうしてもノーマン・ジュイソンの『オンリー・ユー』を連想する(ちなみにこの映画のDVDもちゃんと買ってます)。混乱する女主人公の相談相手という役柄では向かうところ敵なしのボニー・ハントが、自らの監督作品でとった戦略は、マリサ・トメイやロバート・ダウニーJrクラスの「きれいどころ」を避けて、デヴィッド・ドゥカヴニーとミニー・ドライヴァーという人選であえてビジュアルな面でのハンディキャップを背負い、さらに、交通事故で死んだ妻にジョエリー・リチャードソン(『パトリオット』『イベント・ホライゾン』)という、この映画で唯一の正統派美形俳優を起用し、生前の彼女の姿をたまらなくチャーミングに描くことで、物語の主人公たちのロマンスの実現を(主観的に)難しくするというものだった。要するに、わざと課題を難しくしているのである。

 これは役者(および演出者)としての強烈な自信をベースにしたチャレンジであり、その心意気は美しいとは思うものの、映画として成功しているとは言い難いと感じた。役者としての意識が強すぎて、他の役者の演技に引きずられている、または役者の見せ場としてのシーンを作ることに心を砕きすぎているのだと思われる。ミニー・ドライバーの父親のキャロル・オコナーを初めとする、レストランに集う面々。デヴィッド・ドゥカヴニーの友人のデヴィッド・アラン・グリア。ボニー・ハントとその夫のジェームズ・ベルーシなどは、いずれも適切に作られた映画の中であれば名演としかいいようがない演技を見せるが、結果として本作は「名演場面集」になっていて、全体として機能していない。

 それでも本作のDVDは、ボニー・ハントのファンにとっては貴重な宝物になる。彼女と脚本家のドン・レイクによる音声解説トラックが入っていて、彼女のインテリジェンスと良質なユーモアのセンスを楽しめるからである。別に抱腹絶倒というわけではないが、私は本作を普通に見たときよりも、音声解説トラックを聴きながら見たときの方が楽しかった。本作や『オンリー・ユー』などに出演しているそのまんまのボニー・ハントがおしゃべりをしているのを聴けるという感じなのである。

 なおこの映画では、幸せ絶頂の夫婦がダンスをしているシークエンスから、ジョエリー・リチャードソンがストレッチャーに載せられて手術室へと搬送される病院内のシークエンスに直接に移行するという「ちょっと気のきいた」つなぎが行われているが、ボニー・ハントはこれを実現するために映画会社と戦わなくてはならなかったという。映画会社の重役たちは、交通事故のシーンを入れることに強く固執したとのこと。そういうわけで、この「ちょっと気のきいた」シーンは彼女にとって大きな意味を持つ勝利なのだった。

2002/9/30

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