キプールの記憶

Kippur

Amos Gitai / Liron Levo,Tomer Russo / 2000

★★★★

かなり面白い

 監督のアモス・ギタイはイスラエル人。ヨム・キプール戦争における実体験をベースにしたとのこと。

 冒頭でいきなりさまざまな色の絵の具をたらしたベットの上で抱き合う男女の姿が延々と映し出されて、「これはエラいこっちゃ」と思ったが、それを耐えて乗り越えれば、これはけっこう面白い戦争映画だった。まあ「アート映画」であるという限界ゆえ、あちらこちらに寓話っぽい浅薄なエピソードがばらまかれてはいるという問題はある。そういうのもなかったこととして無視すれば、映画の大部分は、ただひたすら主人公たちが所属する空軍の救急部隊が前線で怪我人をヘリコプターに収容する姿を長回しで捉えていて、それが絵として美しい。一瞬たりとも目を離せないという緊張感がある。

 ロケーションと軍の協力のインパクトは大きい。轍が縦横に走っているだだっぴろい砂地を、何台もの戦車がランダムに動き回っている戦場の様子は、それだけでも鮮烈である。これだけ多くの戦車を、これだけ意味なく配置して撮った映画を私はいままで見た記憶がない。たとえば『ホットゾーン』は、借りてきた数台の軍用車を狭い街路に走らせて、「軍が町全体を占拠した」という状況を描こうとしていた(まあこれを比較の対照とするのもなんだとは思うが)。しかし本作の戦車はほとんどの場合、何をしているのか、何をしようとしているのがまったくわからないのだ。

 思わせぶりなエピソードや哲学話めいた会話がすべて削除されていれば、★5つをつけていたかもしれない。ただそうなったら、「アート映画」ファンも含めて、誰もこんな映画見たがらないかも。

2002/10/5

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