コラテラル・ダメージ

Collateral Damage

Andrew Davis / Arnold Schwarzenegger,Francesca Neri,Elias Koteas,Cliff Curtis,John Leguizamo,John Turturro / 2002

★★★★

ハリウッド・リベラルの佳作

 アンドリュー・デイヴィス監督作品。『刑事ニコ/法の死角』(1988)、『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀』(1989)などの佳作を作り、『逃亡者』(1993)という傑作を作ったこの人は、最近は『チェーン・リアクション』(1996)、『ダイヤルM』と不調だったが、本作で完全に復調したと言えるだろう。またアーノルド・シュワルツェネッガーにとっては、『ターミネーター2』(1991)以来のまともな映画である(『シックス・デイ』の項を参照)。

 本作は、2001年9月11日の事件によって、10月に予定されていた公開が延期されたことで有名になった。詳しいことはわからないが、おそらく事件後にいくつかの調整を加えているものと思われる。フィルモグラフィーからわかるように、またスティーヴン・セガールと何度か組んでいることからわかるように、アンドリュー・デイヴィスはハリウッドのリベラルである。世の中には誤解している人がいるようだが、「ハリウッド」はいまでもリベラルの巣窟なのである(『The Death of the West』のパトリック・J・ブキャナンのような右側の人に言わせれば)。そして本作は、『マーシャル・ロー』と同様に、リベラルによるアメリカ帝国主義の告発映画として企画されて作られた作品だった。ところが9.11事件が発生して、告発映画なんてシャレにならないということになったわけだ。

 DVDにはカットされたシーンがいくつか収録されているが、(それらの調整が9.11の後に行われたかどうかは不明にせよ)本作の当初の意図は、公開版よりもずっと告発型であったことがわかる。たとえば、コロンビアのテロリストを演じるクリフ・カーティス(名演!)の残酷さを示唆する、任務に失敗した部下にヘビをのませるシーンと、小屋に監禁したアーノルド・シュワルツェネッガーに対して暴力を行使するシーンは、どちらにも残酷さを強調しない別バージョンがある。また、CIAエージェントのイライアス・コティーズがテロリスト・キャンプに攻撃を仕掛ける場面では、キャンプ内で日常生活を営む村民たちと着々と攻撃準備を進めるヘリコプターの様子がカットバックされる場面があり、攻撃の終了後には、非武装の村民たちを含む何十もの死体が並べられている光景が映し出されるシークエンスがあった。監督の音声解説によれば、「コラテラル・ダメージ」という言葉がここで効いてくる、という意図があったのである。これは、「復讐の鬼」という役割を多く演じてきたアーノルド・シュワルツェネッガーにまとわりついているイメージを利用したどんでん返しでもある。復讐のためにコロンビアに単身乗り込んだシュワルツェネッガーが、コロンビア国内で"The Wolf"とまったく変わらないテロリストになってしまったという設定は、クリフ・カーティスの喋る屁理屈ではなく、脚本の段階から本気で盛り込まれていたものなのだ。コロンビアという舞台設定も、「テロリストのいる場所」を適当に選んだわけではなく、アンドリュー・デイヴィスがこの国に特に関心を抱いていたために選ばれており、国家の軍隊とそれに抵抗するミリシアの対立を中立的な立場から描こうという意思がある。そもそもコロンビアに潜入したシュワルツェネッガーが遭遇する最初の暴力は、国家による「ゲリラ狩り」のための検問であった。

 この意図は公開版ではわかりにくくなっているかもしれないが、どんでん返しの効果は十分に残っている。そして、それが練られた脚本と適切な編集によって面白い映画に仕上がっていることを高く評価したい。特にクライマックスと、シュワルツェネッガーがコロンビアに潜入する場面のカットのつなぎ方は完璧だ。

 コロンビアのテロリストを演じるクリフ・カーティス(ニュージーランド人)は、『スリー・キングス』ではアメリカ帝国主義を批判するイラク人を熱演していた。本作でも見事。その妻を演じるフランチェスカ・ネリ(イタリア人)は、『ハンニバル』でジャンカルノ・ジャンニーニの妻を演じていた人。難しい決断を迫られる場面の演技が実に素晴らしく、その相手をしていたシュワルツェネッガーまでもが演技派に見えていた。CIAエージェントを演じるイライアス・コティーズ(カナダ人)は、アンドリュー・デイヴィスによればロバート・デニーロやロバート・デュヴァルを思わせるところがあるそうだが、平凡な娯楽映画における「悪いCIAエージェント」とはひと味違う深みのあるキャラクターを演じている。コロンビアでゲリラのために仕事をしているカナダ人を演じるジョン・タートゥーロ(アメリカ人)と、一人だけ英語がうまいコロンビア人を演じるジョン・レグイザモ(この人はコロンビア生まれなのだった)は、それぞれ1つのシーンを確実に支えている。

2002/10/10

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