ビューティフル・マインド

Beautiful Mind, A

Ron Howard / Russell Crowe,Jennifer Connelly,Ed Harris,Christopher Plummer,Paul Bettany / 2001

★★

最悪の中途半端さ

 ロン・ハワード監督作品。本作は、彼のダメな方のタイプの作品である(『エドtv』の項を参照)。

 ジョン・ナッシュの生涯を描いた同タイトルのノンフィクションから、議論を呼びそうなエピソードをすべて除去して作られた脚本。除去された要素には、同性愛、反ユダヤ主義、愛人、離婚などがある。ノーベル賞を獲った人ならこういうことが許されるのだとしたら、笹川良一についても感動的な映画が作れるだろう。というか、本作は「実話をベースにした映画」ではなく、単なるフィクションと考えた方がいいということだ。

 でまあ、ロン・ハワードのダメな映画というだけですべて説明できてしまうような映画ではある。私は最後の最後まで、ジェニファー・コネリー演じる妻が、ナッシュの想像の産物だったというどんでん返しを期待していた。実際、クリストファー・プラマー演じる精神科医が入院することを要求し、ベッドルームにいるラッセル・クロウが「自分で解決したい」と言って、ジェニファー・コネリーが階段を下りていくシーンは、現実と幻想の世界の切り替えとして最適なタイミングだったため、「へへへ、見抜いたぞ」と思ってにやにやしてしまった。ノーベル賞の授賞式で映る彼女が老けメイクをしていたため、「ちっ、設定が統一されていないな」と思ったりもした。ネタバレになるが、ジェニファー・コネリーは最後まで現実です。

 ラッセル・クロウは賞狙いだが、アカデミー賞主演男優賞のノミネートに終わった(受賞したのは『トレーニングデイ』のデンゼル・ワシントン。なんか惨憺たる状況になってるな)。超どうってことのないジェニファー・コネリーが、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演女優賞を受賞しているんだが、これだったら『ダークシティ』とか『狼たちの街』(1996)の方がずっといい。というか、この2作における彼女は、積極的に良かったといえる。『ROCK YOU! [ロック・ユー!]』でチョーサーを演じたポール・ベタニーが、ラッセル・クロウのルームメイト役として好演。出番が少ないのが残念な限りである。

 なお、「分裂病」という専門用語は、本年からPCの観点から「統合失調症」に変更された。それを受けて、映画の字幕も「統合失調症」になっているのだが、大昔のアメリカ人のセリフにこういう訳語が当てられていると違和感がある。以前、古代ローマを舞台にした映画で、「らい病」に「ハンセン病」という字幕が付いているのを見て仰天したことがあった。本作は、分裂病に関してpolitically correctな態度をとっているように見えるかもしれないが、「天才ならば分裂病は克服できる」、「家族の愛があれば分裂病は克服できる」というメッセージは、実のところかなり抑圧的であり、腹を立てる人がいるだろうと思う。

2002/10/10

 ジョン・ナッシュの生涯を描いたドキュメンタリー、『ビューティ・マインド/狂気の天才数学者、ジョン・ナッシュの人生』も併せて見るといいかもしれない。本物のジョン・ナッシュとアリシア・ナッシュを見ることができる。

2002/11/08

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