恋愛小説家

As Good As It Gets

James L. Brooks / Jack Nicholson,Helen Hunt,Greg Kinnear,Cuba Gooding Jr.,Skeet Ulrich,Shirley Knight / 1997

★★★★

ロマンチック・コメディの佳作だが、少々あざといか

 監督のジェームズ・L・ブルックスという人は、おそろしくあざとい話を、説得力のある形で映画にしてしまう職人という印象がある。『愛と追憶の日々』、『ブロードキャスト・ニュース』など、いずれも強烈にあざとくて、主人公の役者にはかなり危険な人物を持ってきながらも、最後にはほろりとさせることに成功している映画だ。

 この映画もあざとい。ジャック・ニコルソンとヘレン・ハントは言うまでもないが、ホモセクシャルの画家のグレッグ・キニア、その恋人のキューバ・グッディングJr.、画家のモデルとしてちょっとだけ出てくるスキート・ウーリッチなどの配置のしかたが強烈。

 ぞくぞくしたところを2つ。この映画で、強迫神経症に悩んでいるジャック・ニコルソンは、ヘレン・ハントと出会ったおかげで快方に向かう、わけではないのである。ヘレン・ハントと出会ったおかげで、自分をa better manにしたいという欲求が生じたために、それまでちゃんと服用していなかった薬を服用するようになったから、症状が緩和されたという設定になっている。なんとまあ政治的に正しいことか。ニコルソンの出版社経由での圧力を受けて、ヘレン・ハントの息子を治療するために彼女の家に訪れたローレンス・カスダン演じる医者は、ニコルソンほどの人が、息子の病気のために仕事に行けなくなることを心配しているヘレン・ハントはいったいどのような仕事をしているのだろうかと疑問に思って尋ねる。で、ヘレン・ハントが「ウェイトレスだ」と答えると、その答えに対する医者のリアクションはまったく映されず、そのまま次のシーンに行ってしまうのである。なんと洒落ていることか。

 率直にいって、この映画のジャック・ニコルソンはあまりに奇怪すぎて、ヘレン・ハントのような魅力的な人が最終的に彼を受け入れたという事情をすんなりと受け入れることができない。つまり、すれ違っていた二人がいつの間か心を通わせるというロマンチック・コメディの必要条件が満たされていないように感じられるのだ。これはヘレン・ハントの心の揺れがちゃんと描かれていないということなんだろう。この映画の(他の映画でもそうだが)ヘレン・ハントは、しっかりとした自我を持っている人物のように見えて、この映画のウェイトレスが本来ならばそうであるはずのように、自分の心のなかの矛盾する側面をうまく処理できずに葛藤する、というタイプの人間には見えない。どれだけそういう脚本が用意されていても。

1999/10/15

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