ノー・マンズ・ランド

No Man's Land

Danis Tanovic / Branko Djuric,Rene Bitorajac,Filip Sovagovic / 2001

★★

浅ましい

 監督のダニス・タノヴィッチは、ボスニア紛争時にムスリム側で記録映像を撮った人。その後、英国の映画学校に行き、初のフィクション作品である本作でアカデミー賞外国語映画賞、ゴールデン・グローブ外国映画賞、カンヌ国際映画祭脚本賞などを得た。スロヴェニア、イタリア、フランス、英国、ベルギーの資本が入り、さまざまな国籍の俳優が出演する国際的な映画である。ちなみに1987年のピーター・ワーナー"No Man's Land"は『ノーマンズ・ランド』と表記する。

 ボスニア紛争時に、セルビア人とムスリムの陣営の中間にある塹壕に、セルビア人1人とムスリム2人が取り残され、国連軍やメディアが介入してくる様子を「ブラック・ユーモア」調で描く。

 この映画メモでは、ユーゴスラヴィア紛争を題材とした映画として『ウォリアーズ/インポッシブル・ミッション』『フォーリン・フィールズ』『アンダーグラウンド』『ウェルカム・トゥ・サラエボ』『セイヴィア』を取り上げているが、本作はこの中で『ウェルカム・トゥ・サラエボ』と並ぶ浅ましい映画だった。

 昔の戦争のことを取り上げている昔の映画ならば、その政治性には目をつぶることもできるし、またそうやって映画を見ていたいと思うのだが、1990年代のユーゴスラヴィア紛争はまだ記憶に新しすぎる。私はかつて、ジョン・ウェインの『グリーン・ベレー』(1968)に怒っている人がいる理由がよくわからなかったのだが、いまでは同時代の人たちが腹を立てたのも無理はないと思うようになっている。

 野暮なことを言うけれども、『ユーゴスラヴィア多民族戦争の情報』とか『ドキュメント戦争広告代理店』を読むと、「果たしてセルビア人がイギリスに留学してこういう国際資本の映画を撮ることができただろうか?」と思ってしまうわけである。「ブラック・ユーモア」に包んで相対化して見せているのも余計気に入らない。まことに、映画とはプロパガンダの道具である。

2002/12/27

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