史上最大の作戦

Longest Day,The

Ken Annakin,Bernhard Wicki,Andrew Marton / John Wayne,Henry Fonda,Robert Ryan,Richard Burton,Robert Mitchum / 1962

★★★★★

やはり大傑作だった

 ダリル・F・ザナック製作の戦争映画の古典的名作。私が見るのはたぶん25年ぶりで、内容はほとんど忘れていた。第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦(およびその後のドイツ敗戦までの戦い)を描いた『バンド・オブ・ブラザーズ』が素晴らしかったせいで、このところ戦争映画に対する関心が強まっており、本作をもう一度見ておこうという気になった。昔見たときはオールスター映画として認識してそれなりに楽しんだ記憶があるのだが、歳をとってからそういう映画を見直すのはかなり勇気のいることだった。

 でまあ、この映画メモでこれを言うことは自ら禁じてきたのだが、やっぱり「昔の映画は良かった」と言いたくなるのだった。たぶん名作と駄作の比率はいまも昔も変わらないのだろうけれども、こういうビッグ・バジェットの「アメリカ映画の大作」が持つ風格という点では、1960年代の作品がずば抜けているように思う。本作に出演しているスターは多すぎて、その名前を列挙する気にもなれないが、「大予算だからシナリオの手を抜く」とか「スターだからアホである」というような図式がいまほど成り立っていなかった時期だから、個々の場面の見応えはそうとうなものだ。

 詳しい解説は他のその手のリソースに任せるとして。いま本作を再見して驚くのは、現在のアメリカ映画には望むことが不可能になった戦争の「スポーツマンシップ」の概念がしっかりと根付いていることだ。その後、ベトナム戦争と反戦運動を経て、きれいな戦争などないというリベラルな態度が強くなり、90年代にはそれに替わって自己正当化と「強いアメリカ」を指向する態度が主流となった。それぞれの変化を真実の発見と捉えるか、修正主義と捉えるかは人それぞれだろう。しかし『プライベート・ライアン』で第二次世界大戦が、『ワンス・アンド・フォーエバー』でベトナム戦争までが書き換えられてしまったいま、本作を典型とする穏健な保守の立場は再評価するべきだと思う。

 本作のフェアな態度は、ドイツ軍の活動を描く部分に(1) ベルンハルト・ヴィッキ(『橋』(1959)の人)を監督として起用し、(2) 登場人物たちにドイツ人を起用してドイツ語を喋らせ、(3) 何よりもクルト・ユルゲンスを出演させていることに表れている。フランス人はちゃんとフランス語を喋るので、英語圏では映画のかなりの部分に字幕が入ることになるが、そういう不自由さを犠牲にしてでも、オーバーロード作戦での出来事を複数の視点から描こうという強い意思がある。クルト・ユルゲンスや三船敏郎が出演しているかどうかは、この時期そのような意思の下で作られた戦争映画の指標の1つだ。

 本作で驚いたもう1つの点は、スターの見せ場の間にときどき出てくるリアリスティックな場面の迫力だった。戦争映画の戦闘場面は、最近の映画の方が迫力があると思っている人が多いかもしれない。私も実は愚かにもそうかもしれないと思っていたのだが、これは間違いだった。本作の、ドイツ軍が立てこもっているホテルを攻略するときの有名な長廻しはため息が出るようなすごさ。その他、各ビーチへの上陸の場面や落下傘による降下の場面も、抑え気味の演出がものすごい切迫感を生んでいる。

 英雄が疑問を差し挟む余地がない英雄として描かれる、娯楽映画として一級品の、後味の良い戦争映画。北ベトナム兵をナパームで焼き尽くして勝ちましたというような話は、それが事実であっても、いや事実であるからこそ娯楽映画ではあんまり見たくない。

2003/2/11

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