サイン

Signs

M. Night Shyamalan / Mel Gibson,Joaquin Phoenix,Rory Culkin,Abigail Breslin / 2002

★★★

やりすぎ

 M・ナイト・シャマラン製作・監督・脚本(『翼のない天使』『シックス・センス』『アンブレイカブル』)。

 ものすごくよく考えて、ものすごく丁寧に作ったことはよくわかるのだが、ちょっとやりすぎじゃないかと感じた。特に本作は、メル・ギブソンとホアキン・フェニックスという、演技派としての自分を見せることの賭け金が高い役者が中心に据えられているだけに、見るのがしんどいシーンが多くなっている。その点で、前2作はブルース・ウィリスの貫禄に支えられていた部分が大きかったのだなと思った。

 本作の脚本はこの人のいままでの映画のなかで一番実験的なひねくれたもので、前2作の成功なしに通るような企画ではない。ただ、その脚本を実際に映画にする段階で、致命的なミスをおかしているように思う。本作は、世界的なイベントが進行しているなかで、視線を1つの家族とその家に絞るという試みをしている。前2作は、進行する異常な事態の核にいる人物を中心に据えているという意味で標準的な構造の物語ではあった。

 ところで、この実験を成功させるためには、「世界的に異常なイベントが進行しているなかで、いつもと同じ日常を体験している家族がいる」ということをまず確立しなくてはならない。ところがこの映画に出てくるのは、どのショットでも内面の苦痛を100%表現しますと力んでいる成人男性2人と、監督さんに「君、あんまりオーバーに表情を作らないでね」と言われてぎごちなくなっている子供2人である。

 それで思い出したのが、まったく同じではないにせよ似たタイプの実験をやっているヒッチコックの『鳥』だった。あちらはロマンティック・コメディ仕立て、こちらは陰鬱な映画である。この陰鬱さはストーリーの根幹に関わってくるので簡単に修正はできないけれども、あんまり力まずに、ごく普通に妻/母の死を悲しんでいる家族を演じることができる役者を4人選ぶことはできたはずなのだ。

 結局この人は、本人が制約であると感じたはずのさまざまな縛りがあったデビュー作の『翼のない天使』を超える作品は作れないんじゃないかという予感がしてきた。なお、本作の教訓は「宇宙旅行をするときには宇宙服を忘れずに」というもの。

2003/2/28

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