WASABI

Wasabi

Gerard Krawczyk / Jean Reno,広末涼子,Michel Muller,Carole Bouquet / 2001

★★★

好印象

 ジェラール・クラヴジック監督作品。製作・脚本はリュック・ベッソン。ジャン・レノと広末涼子が主演する、日本を舞台にした映画。

 私は本作の予告編を映画館で見て、広末涼子が一言セリフを発した瞬間に思わず声を上げて笑ってしまった。なぜもうちょっと大根に見えないカットを選ぶことができなかったのか、予告編の製作者はそうとう追いつめられていたのだろうかなどといろいろ考えた。しかし、本編を見て、意外にも予想がいい方に裏切られた。広末涼子は日本語よりもフランス語のセリフ廻しの方が上手で、日本語はほとんど喋らないのである。広末涼子が演じる、ジャン・レノが20年前に日本人女性との間にもうけた娘の像は、大昔のアメリカ映画に出てくる「日本の芸者」の現代版。東洋のエキゾチズムのポップなバージョンで、アーパーなところが神秘的であるという設定だった。

 フランスで暴力警官をやっているジャン・レノは、20年前に急に姿を消した日本人の恋人が死んだという知らせを受けて、久しぶりに日本の土地を踏む。そこで、自分に娘がいたということを初めて知り、彼女が20歳になるまでの2日間、お守りをすることになる。「後進国観光映画」のパターンを忠実に守り、現地の土人はほとんどが西洋語を流暢に喋るのだが、そのなかで広末涼子の振る舞いとフランス語の幼さは、日本という国の後進性のシンボルとして使われている。

 本作を見て驚いたのは、広末涼子がそのような作品上の要請を確実に理解し、そうした日本人を見事に演じきっていたことだった。私はこの人の他の出演作(映画もテレビ番組も含めて)をまったく見たことがないのだが、本作での演技は、これまでの数多の日本人女優の外国映画出演作のなかでトップクラスに位置すると思った。たとえば『ヒマラヤ杉に降る雪』の工藤夕貴や『将軍』の島田陽子とは比べものにならない的確さである。また日本人役者に限らなくても、極限までの自意識の欠如と軽薄さが生み出すポップな魅力を、これほどまでに爽やかに演じている例はあまり見たことがない。

 なお、DVDに収録されている関係者インタビューでは、監督と役者たちが揃って、日本での撮影の難しさについて語っている。ジャン・レノいわく、「彼らは外国人を見ると興奮するんだよ。しかも僕が有名人だからなおさらだ。街角で撮影をすると、いつも大勢の人が集まってくる。そして彼らは全員がカメラを持っていて、僕の姿を見るとすぐに取り出して、シャッターをカチカチと押す。非常にナーバスになってしまったよ」(意訳)。カメラマンは、通行人をコントロールできないことを嘆いて、「アフリカで野生動物のドキュメンタリーを撮るよりも難しい」と述べる。ストーリー上も、また現実にも、「後進国観光映画」であったわけである。

2003/4/5

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