フォー・エヴァー・ライフ/旅立ちの朝

In the Gloaming

Christopher Reeve / Glenn Close,Bridget Fonda,David Strathairn,Whoopi Goldberg,Robert Sean Leonard / 1997

★★★★★

みごとな小品

 クリストファー・リーヴ監督のHBO用のTVムービー。まず、どうしても書いておきたいのは、この日本語タイトルのひどさ。『フォーエヴァー・ライフ/旅立ちの朝』って言われても、この映画はエイズで死んでいく青年の物語なのである。それに、死ぬのは別に朝ではなく、たぶん夕方だ。それ以外に誰もどこにも旅立っていないし。

 アリス・エリオット・ダークの短篇小説を映画化したもの。クリストファー・リーヴは首から下が全身麻痺の状態で、この監督第1回作品を作った。思うに、まったく体を動かせない彼は、映画を撮り始めるまえから、頭のなかで1ショット1ショットを綿密にシミュレートしていたのではないだろうか。絵コンテも描けない状態ではあるが、考える時間はたっぷりとあったに違いない。その結果、この映画は無駄なものが極限まで削ぎ落とされた迫力ある映画になった。

 物語は、アメリカ東部(と思われる)の田舎にある、比較的大きな家とその周囲だけで展開する。デヴィッド・ストラザーンとグレン・クローズの夫婦のもとに、カリフォルニアから、エイズにかかったロバート・ショーン・レナードが死にに戻ってくる。彼の姉はブリジット・フォンダ。看護婦がウーピー・ゴールドバーグ。なお撮影監督は『アイス・ストーム』のフレデリック・エルムズだが、そういえばあれもアメリカ東部の話だった。晩夏から秋にかけての風景がおそろしくきれいだが、何気ない人物のショットの上品さがたまらない。

 物語は基本的に母親と息子の間で展開する。他の人々もいくらでも関わりようがありそうな話なのだが、この2人に焦点を絞るべきだと考えたのだろう。それを言うなら、この映画はほとんどすべて、母親と息子が庭に出した椅子に座っている場面と、母親が息子の車椅子を押しながら散歩している場面によって駆動されているといっても過言ではない。これはあまりにも過激な仕組みだと思う。普通の発想だったら他の人物との絡みをもう少し入れて、物語の進行にバラエティを添えようと企むだろうに。

 この母子を演じるグレン・クローズとロバート・ショーン・レナードはこの難題に果敢に挑戦し、大成功を収めている。いままであまり好きになれなかったグレン・クローズなのだが、この映画を見てその底力を心から賞讃したくなった。ロバート・ショーン・レナードは、『スタンドオフ』に続いて超強力。何よりも興奮したのは、出番のそれほど多くないデヴィッド・ストラザーンで、息子と心を通じ合わせることができない父親を完璧に演じている。

 なお、グレン・クローズがTVで『四十二番街』を見ているというエピソードが挿入される。このエピソード自体はあまり出来がよくないのだが、使い方が興味深かった。映画の中でディック・パウエルが"I'm young and healthy"と歌う場面をロバート・ショーン・レナードに演じさせているのだ。

1999/11/21

 評価を4点から5点に変更しました。5回見ていますが、完璧です。

2000/9/24

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