邦題考

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配給会社が外国映画の日本公開にあたって付ける邦題にケチをつけるという企画。手垢のついたネタではあるけれども、「映画メモ」で取り上げている映画を中心にちょっとやってみます。

2000/4/29

『レッサー・エヴィル』"The Lesser Evil"
これって『レッサー・イヴィル』にはならないわけね。原題は、どちらも邪悪(evil)なことなんだが、より邪悪さが軽い方を選ぶという登場人物の行為のことを指している。普通の日本人は、「グレーター・デーモン」と「レッサー・デーモン」を思い出すんじゃないか(あまり普通じゃないか、それは)。もしそうなら、結果としてタイトルがネタばれにならない。★★。

『ラストサマー』"I Know What You Did Last Summer"
こういうタイトルを付けたおかげで、続篇の"I Still Know What You Did Last Summer"は『ラストサマー2』とせざるをえなくなった。ちなみに1969年のフランク・ペリー監督の"Last Summer"は『去年の夏』。ところで、日本語の「ラストサマー」って、「去年の夏」じゃなくて「最後の夏」というニュアンスの方が強くないか? もちろん「去年の夏」のことなんだが。★★。

『感染』"Doomsday Man"
これはねえ。安っぽいビデオ作品だから手を抜いたということだろうか。ちなみに、実はこれは面白い映画。★★。

『アット・ファースト・サイト/あなたが見えなくても』"At First Sight"
"At First Sight"と言っているのに、「あなたが見えなくても」とはこれいかに? まあ映画を見れば、どうしてこういう副題をつけたくなったのか、わからなくはないんだが、説明過多のよくない邦題であることは間違いない。★★。

『ヴァイラス』"Virus"
いくつかの感慨がある。これは『ウイルス』にはならないんだなあということ。そして、たしか角川映画の『復活の日』に、(必要もないのに)"Virus"という英語のタイトルが付けられていたこと。ちなみに、1996年のドイツ映画"Virus X"には『ウイルス』という邦題が付けられているようだ。1993年の"Ghost in the Machine"という映画には『ヴァイラス/インターネットの殺人鬼』という邦題が付いている。この映画の"virus"はまさにコンピュータ・ウイルスのこと。★★★。

『カラー・オブ・ハート』"Pleasantville"
主人公の少年少女2人が、"Pleasantville"という連続白黒TVドラマの世界に入り込んでしまう。そこに徐々に色が着いていく。邦題は文法的におかしいだけでなく、意味不明。これだったら『心の色』とでもした方がまだマシだった。そもそも、"Pleasantville"に含まれている"pleasant"の皮肉な意味が失われるのはきつい。思い切って意訳するなら『幸せ村』。★。

『恋は嵐のように』"Forces of Nature"
これは非常に良い。原題の"Forces of Nature"は、直接的には、主人公2人の行く手を阻む自然災害や偶然の事故のことを、そして暗黙には、人間の心の逆らいがたい動きのことを指していると思われる。そして、ニューヨークからフロリダへと陸路で向かう2人を最後に迎えるのはハリケーン、すなわち嵐なのだ。★★★★★。

『ジム・キャリーはMr.ダマー』"Dumb and Dumber"
これはまたアクロバティックな邦題。形容詞の比較級を固有名詞として扱ってしまう。ちょっと無茶だろう。★。

『ザ・メイカー』"The Maker"
この「メイカー」は「大手電気機器メーカー」のそれではなくて、「ゲーム・メーカー」みたいな意味合い。映画の中で、悪い兄が弟を犯罪に引き込んで、「お前はthe makerだ」と言ってたきつける。★★★。

『レリック』"The Relic"
この「レリック」は、文化人類学者が南アメリカから送ってきた「遺物」のことなんだが、映画の中では、登場人物が巨大なモンスターを見て「レリックだ!」と叫ぶ字幕が入っていた。ちょっと無茶。『サンゲリア』とか『バタリアン』など、特殊な名前のゾンビ映画で、ゾンビを見て登場人物がそれを"the thing"などと呼ぶと、字幕には「サンゲリアだ!」、「バタリアンだ!」などと出ていたことを思い出す。もうそういう時代じゃないだろう。★★★。

『ウェディング・シンガー』"The Wedding Singer"
これは要するに「結婚式の司会」のことだ。司会が歌を歌って盛り上げる。映画のなかでは、社会的地位がものすごく低いように描かれていて、アナウンサーのバイトとして儲かるとされている日本とはちょっと事情が違う。★★★。

『ミミック』"The Mimic"
『ミミック』という言葉でOKなのは、きっと「ドラゴンクエスト」のせいだろう。この映画では、アリとカマキリのハイブリッドが人間を擬態するのだが、どうしても宝箱が出てくるような気がして困る。★★★。

『25年目のキス』"Never Been Kissed"
主人公のドリュー・バリモアは、25歳にもなっているのに、まだ本当の意味での「キス」をされたことがない。その彼女が高校生に成りすまして、地元の高校に潜入取材をするという話。この邦題は、まあいいかもしれない。ただ、この「25年目」という日本語が「25年ぶり」という意味にならないか少し不安が残る。★★★★。

『翼のない天使』"Wide Awake"
原題は、主人公の小学校5年生の少年が、1年間を通していろいろと体験をして「目を覚ました」、つまり「覚醒した」ことを表している。要するに(まあちょっと年齢が低いけれども)ビルドゥングスロマーンである。邦題はネタばれだが、それ以前に、映画のテーマである「覚醒」が素晴らしいものだっただけに、邦題に反映されていないことが悔しい。『めざめ』でよかったんではないかと思うが、実はこの言葉は邦題の世界では「性のめざめ」という意味で使われる専門用語なのだった。すでにこのタイトルの映画も2本ある。まあ『翼のない天使』が穏当か。★★★。

『ウィズ・ユー』"Digging to China"
原題は、主人公の少女が「中国にまで届け」とばかりに、地面に穴を掘っていることを指す。『チャイナ・シンドローム』と同じことである。で、この『ウィズ・ユー』だが、最悪。★。

『グッドナイト・ムーン』"Stepmom"
"Good Night Moon"は製作中の仮タイトル。"Stepmom"は「継母」。ジュリア・ロバーツがその「継母」を、スーザン・サランドンが「実母」を演じている。★★★。

『ヴァージン・フライト』"A Theory of Flight"
『陰謀のセオリー』で「セオリー」がOKということになってるんで、『セオリー・オブ・フライト』でもいいんじゃないか? この邦題は、身体障害者のヘレン=ボナム・カーターが処女を失うことを望んでいることと、ケネス・ブラナーが手製の飛行機を作っていることに掛けているのだと思われる。「してやったり」という担当者の思いが想像できるだけに、なんかいやだ。別に原題がいいわけではないが。★★。

『アリーmyラブ』"Ally McBeal"
これは奇怪。原題は主人公の氏名。それをこんな風に、しかも"my"だけ英語にしたタイトルにしちゃっていいものなんだろうか。まあでもつまらないんで、どうでもいい。★。

『RONIN』"Ronin"
まさに日本の浪人のこと。元CIAのロバート・デ=ニーロが、主君を失った侍に自分を重ね合わせる。途中で赤穂浪士の話も出てくる。『ローニン』にも『浪人』にもするわけにはいかないので、『RONIN』になったということだろう。なお、ニック・クリスチャンという作家の冒険小説の日本語タイトルは『ローニン』だった。★★★。

『メリーに首ったけ』"There's Something About Mary"
これは良い。考えれば考えるほど、これ以外にないような気がしてくる。ちなみに映画の中では、"There's Something About Mary"というフレーズの入った歌が歌われていた。★★★★★。

『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』"The Mummy"
なんでこういうシンプルなタイトルを、こういうややこしい邦題にするかね。ハムナプトラは映画の中に出てくる、ミイラ男が眠っている都市の名前。でも、この地名、覚えていられる気がしない。「ハナンプトラ」とか「ハムナトラ」とか言ってしまいそうだ。ちなみに、『タロス・ザ・マミー』とか『ブラム・ストーカーズ/マミー』とかからわかるように、もう「ミイラ男」は「マミー」と言っても大丈夫みたいだ。★。

『エネミー・オブ・アメリカ』"Enemy of the State"
これはちょっと虚を突かれた感じの邦題。たしかにここで言うStateはアメリカ合衆国のことなんだが、『エネミー・オブ・ザ・ステート』じゃダメなの? 「アメリカの敵」よりも「国家の敵」の方が怖い。★。

『交渉人』"The Negotiator"
以下は単なる想像。おそらく配給会社はこれを『ネゴシエーター』としたかったに違いないのだが、なんと恐ろしいことに、この1年前の1997年のエディー・マーフィー主演の"Metro"という映画が『ネゴシエーター』というタイトルで日本公開されてしまっていたのだ! 仕方ないので、泣く泣く『交渉人』とした。語感からして「公証人」を連想させて硬い。かといって「交渉担当者」では変だし、「交渉官」だと外交関係の仕事みたいだ。そういえば昔、フレドリック・フォーサイスの本に『ネゴシエーター』というのがあったかな。★★★。

『ハーモニー』"Cosi"
原題の"Cosi"は、精神病院でモーツァルトの歌劇"Cosi fan tutti"を演じるところから来ている。したがって、そのままだと『コシ』となって確かに邦題としては不適切かもしれない。しかしだからといって『ハーモニー』はないだろう。★。

『ビヨンド・サイレンス』"Jenseits der Stille"
ドイツ映画。"Jenseits der Stille"はまさに「静寂の向こう側」という意味である。英語圏での公開時には"Beyond Silence"というタイトルが付いたようで、それをカタカナにしたわけだ。ドイツ人に対して失礼である。★★。

『マイ・スウィート・シェフィールド』"Among Giants"
これもダメなタイプの邦題。たしかに英国のシェフィールドを舞台にした話ではあるんだが、それがスウィートであるという感じはない。原題の意味はよくわからないのだが、林立する塔のことを"giants"と呼んでいるんだろうか? ★。

『ブラック・ラン』"Black Cat Run"
あっと驚く命名方式としか言いようがない。『東京物語』を"The East Story"にするようなものだ(まあ違うけど)。★★。

『ライアー』"Deceiver"
IMDBによると"Liar"というタイトルが本当にあるらしいが、詳細は不明。"Liar"と"Deceiver"ではずいぶん雰囲気が違うように思うが。★★★。

『リバース』"Retroactive"
うーむ、これはねえ。"retroactive"は「遡って」という意味だが、"reverse"は逆走、逆転である。この映画では、登場人物が過去の特定の時点に遡る(ジャンプする)のだが、「リバース」だと、時間が逆の向きに進むという意味合いになる。まったくもって、配給会社のやることはよくわからない。素直に『レトロアクティブ』の方がかっこいいじゃないか。★。

『ブレストマン/豊胸外科医』"Breast Men"
副題のとおりに、豊胸外科医の話。ただし、登場する医者は2人なので、『ブレストメン』であった方がよい。"Men in Black"だって邦題は『メン・イン・ブラック』なのだ。★★。

『モンタナの風に抱かれて』"The Horse Whisperer"
主人公のロバート・レッドフォードが、ささやくだけで馬を手なずけてしまう調教師を演じている。たしかに舞台はモンタナ州なのだが、「風に抱かれる」シーンがあった記憶はない。「電撃ネットワーク」が「Tokyo Shock Boys」になってしまうようなものか。★★。

『クライム・タイム』"The Right to Remain Silent"
理解しがたい邦題。原題は「黙秘権」。主人公のリー・トンプソンが勤務する警察署に次々と訪れる犯罪の被疑者たちのモノローグを描いた映画。うーむ。ちなみに、もろに"Crimetime"という原題の『クライムタイム』(中黒なし)という映画もある。これは映画中のテレビ番組の名前。★★。

『セックスの義務と権利』"Scorchers"
これ、申し訳ないがよくわからない。日本のTVドラマに「義務と権利」という言葉を使ったものがあったような気がするが、そこからの連想があったのか? とは言いながら、原題のニュアンスはいまひとつつかみにくい。scorchは文字通りでは「罵声をあげる」とか「罵倒する」の意味だが、「枯れる」とか「疾走する」とかの意味もあり、"scorcher"はそれをする人。きわめて肯定的な意味からきわめて否定的な意味までをカバーする。日本語の『凄い人』という言葉の意味がつかみにくいのと同じようなものか。きわめて良い映画なので、この邦題のせいでキワモノと思って敬遠する人がいるとしたらもったいない。★★。

『スキャンダル』"Legalese"
なんともパッとしない邦題。ちなみに、データベースで検索してみたところ、『スキャンダル』という邦題がつけられた輸入映画はすでに5本もある。1959年のドイツ映画"Das Maedchen Rosemarie"(未見)、1976年のイタリア映画"Scandalo"(サルヴァトーレ・サンペリ監督。フランコ・ネロが出演していたやつ)、1976年のフランス映画"LE DIABLE AU COEUR"(未見)、1989年のアメリカ映画"Scandal"(未見)、そして本作。その他にも、『スキャンダル・愛の罠』(ラウラ・アントネッリのやつ)のように、「スキャンダル+副題」の形式のものもいっぱいあるみたいだ。本作は、あまりスキャンダルとは関係ない。原題は「法律語」みたいな意味(Japan->Japanese, legal->legalese)。★。

『疑惑の幻影』"Shadow of Doubt"
ヒッチコックの『疑惑の影』の原題は"Shadow of a Doubt"。『疑惑の幻影』と『疑惑の影』は、日本語としてずいぶんとニュアンスが違うことに気づかされる。で、たぶん『疑惑の幻影』は誤訳ということになるんじゃないかと思う。★★。

『隣人は静かに笑う』"Arlington Road"
ネタばらしの邦題。まあこの程度なら別にいいのかもしれないが、原題の洒落た感じが損なわれている。"Arlington Road"は主人公のジェフ・ブリッジズとその隣人たるティム・ロビンスとジョーン・キューザックが住んでいる通りの名前。そこそこ安全なプロフェッショナル階級の住む郊外型ベットダウンのイメージ。思い切って意訳して『田園都市線』。★★。

『ブラック・メール/脅迫』"Keys To Tulsa"
理解に苦しむ。百歩譲って、どうしても「脅迫」にしたいんだったら、「ブラック・メール」の中黒は外して欲しい。原題の意味は、、、忘れた。★。

『誘拐騒動/ニャンタッチャブル』"That Darn Cat"
なんじゃこりゃ、と思うだろうが、これは1965年の『シャム猫FBI/ニャンタッチャブル』(That Darn Cat)のリメイク。「ニャンタッチャンブル」って日本でしか通じないギャグだろう。まあしかし、この"darn"のニュアンスは難しい。"damned"と同じ。★。

『フォー・エヴァー・ライフ/旅立ちの朝』"In the Gloaming"
これはひどい! 『フォー・エヴァー・ライフ/旅立ちの朝』って言われても、この映画はエイズで死んでいく青年の物語なのである。それに、死ぬのは朝ではなく夕方。それ以外に誰もどこにも旅立っていない。原題の"In the Gloaming"はふつう「たそがれにて」と訳すだろう。エイズを扱っていることに政治的に配慮した結果か? 「フォー・エヴァー・ライフ」ってのも気持ち悪い。★。

『噛む女』"Double Cross"
よくわからない。この映画に女が噛むシーンって出てきたっけ? "double cross"は「裏切り」、「だまし」のこと。あんまりひねっていないタイトル(および映画)であった。★。

『沈黙の断崖』"Fire Down Below"
『沈黙の陰謀』と同じく、スティーヴン・セガールが主演しているために無理矢理「沈黙」を付けている。「断崖」は、映画中の車が断崖から落ちる1つのシーンだけから取った模様。それ以外に断崖はぜんぜん出てこない。原題の"Fire Down Below"が何か関係しているんではと思う向きがあるかもしれないが、これは地下のこと。クライマックスで、廃棄物が置かれている地下の洞穴で火事が発生する。★。

『NO EXIT海上の惨劇』"Deadly Voyage"
なんで素直に『死の航海』としなかったのか。1974年の"Death Cruise"というTVムービーに『死の航海』という邦題が付けられているようだが。まったくもって、何を考えているのか。★

『真実の瞬間(とき)』"Guilty by Suspicion"
この邦題を見ると、原題は"The Moment of Truth"なんじゃないかと思ってしまうんではないか。しかし、1984年の"The Moment of Truth"は、別名"The Karate Kid"で、『ベスト・キッド』という邦題で公開されたものなんである。ややこしい。原題はハリウッドの赤狩りのこと。疑わしいだけで有罪とされてしまう。『推定無罪』(Presumed Innocent)の逆のあり方であり、何とかこれにこじつけて、もうちょっとまともな邦題を考えられなかったものだろうか。まあどうしようもない映画なんでどうでもいいが。★

『明日は来らず』"Make Way for Tomorrow"
大昔に作られた映画(と邦題)なので、いまさら何いっても仕方がないが。よくよく見てみると、邦題は原題と逆のことを言っている。当時の世相を思わせる。★★★。

『ジョー・ブラックをよろしく』"Meet Joe Black"
この邦題は傑作。ちなみに、"Meet Joe Black"は文字通りには「こちらジョー・ブラックさんです」という感じの紹介の言葉。考えれば考えるほど、『ジョー・ブラックをよろしく』以外にはありえないような気がしてくる。映画の奇怪なほんわり感にもマッチしていて良い。★★★★★。

『絶体×絶命』"Desperate Measures"
記号が入っている珍しい邦題。それでも「ぜったいばつぜつめい」とか「ぜったいかけるぜつめい」ではなく「ぜったいぜつめい」と読ませるんだろう。原題の"Desperate Measures"のニュアンスに近い言葉を探していて、「絶体絶命」を思いついたが、ちょっとタイトルとしては何なので(ちなみにジャンヌ・モロー主演の1958年の"Le dos aumur"が『絶体絶命」として公開されている)困っていたところ、誰かが「×」を入れるという奇想天外なアイデアを思いついたので、そのまま行ってしまったという感じがする。★★★。

『ブレーキ・ダウン』"Breakdown"
これは笑うしかない邦題。『ブレイクダウン』でも大丈夫だと思うのに、車の「ブレーキ」からの連想なのか、1つの単語を無理矢理2つに分けて中黒まで入れている。日本人の英語力をいっそう低下させようという陰謀か。★。

『パーフェクト・カップル』"Primary Colors"
オリジナルにない英語をカタカナ語で使う悪い習慣。今後、『パーフェクト・カップル』と聞くたびに、それが『プライマリー・カラーズ』のことであることを思い出すのに苦労するような気がする。primary colorとは「原色」のことだが、このprimaryには米国大統領の予備選挙の意味が含まれている(と思う)。原作の本の訳本は『プライマリー・カラーズ』というタイトルで出版された。★。

『相続人』"The Gingerbread Man"
この『相続人』というタイトルはネタばらしで良くない。原題のthe gingerbread manは、ロバート・デュヴァルが娘をしつけるときに、悪いことしたらジンジャーブレッド・マンが襲ってくるよと脅していたことから来ている。gingerbreadはショウガ入りクッキー。思い切って意訳すれば「なまはげ」。★。

『タロス・ザ・マミー/呪いの封印』"Tale of the Mummy"
"Talos the Mummy"は、アメリカでの製作中のタイトルで、ヨーロッパでの公開タイトル。「呪いの封印」はどうでもいいとして、この「ザ」の使い方が日本のカタカナ語として普及するにあたっては、やはり、アンドレ・ザ・ジャイアントの力が大きかったのだろうか。★★★。

『おかしな二人2』The Odd Couple II"
1968年のジーン・サックスが監督した『おかしな二人』(The Odd Couple)の続篇。この『おかしな二人』という邦題は名作だ。★★★。

『ベスト・フレンズ・ウェディング』"My Best Friend's Wedding"
これまた中途半端な邦題。どうせなら『マイ・ベスト・フレンズ・ウェディング』にすればよいのに。この「フレンズ」が所有格なのか複数形なのかもわからない。★★。

『N.Y.殺人捜査線』"One Tough Cop"
まあ穏当な邦題だが、問題なのは、これに似たタイトルの映画が大量発生していることである。ビデオ屋の棚を見ていると、何が何なのかまったくわからない。ところでいま気づいたが、「捜査線」の「線」はいったい何を指しているのか? 大量の刑事を動員しての一斉捜査みたいな印象があるが、この映画の場合、それは当てはまらない。なんせ"One Tough Cop"というぐらいで、孤独な捜査なんである。★★★。

『オースティン・パワーズ』"Austin Powers: International Man of Mystery"
日本の配給会社が、"International Man of Mystery"という副題がついている映画の邦題に、バカげた日本語の副題をつけるという誘惑に耐えたことを賞讃したい。ちょっと前なら『オースティン・パワーズ: ハチャメチャ国際スパイ』みたいなタイトルになっていても不思議ではなかった。地味な現れ方ではあるが、副題をあえてつけないという点にかなりのセンスの良さを見た。残念なことに、続篇の"Austin Powers: The Spy Who Shagged Me"(私をヤッちゃったスパイ)の邦題は『オースティン・パワーズ: デラックス』である。★★★★。

『普通じゃない』"A Life Less Ordinary"
ちょっと破格な邦題だが、破格な映画に付けるタイトルとしては適切といえよう。まあ映画自体がつまらないものだったんで、どうでもいい。★★★。

『コリン・マッケンジー』"Forgotten Silver"
原題は、「忘れられていた価値のあるもの」。忘れられていたものは何かというと、ニュージーランドのコリン・マッケンジーという映画監督である。こういう原題が付けられたことには、この映画特有の事情があり、その事情が日本国内にはないので、『コリン・マッケンジー』というタイトルの方がむしろ適している、というような判断があったのだと思う。その事情については、この映画について述べた項を参照。★★★。

『裸の銃を持つ逃亡者』"Wrongfully Accused"
レスリー・ニールセンが出ているから「裸の銃」をつけとこうという安易な発想。もちろん『裸の銃(ガン)を持つ男』(Naked Gun)とは何の関係もない。「逃亡者」の部分は、ハリソン・フォードの『逃亡者』のパロディが入っていることから付けられている。★。

『ブラック&ホワイト』"Black and White"
そのままカタカナにした邦題で別にいいんだけど、これが警察の「パトロール・カー」のことを指しているということが日本人にはわかるんだろうか? ★★★

『ザ・グリード』"Deep Rising"
なんでこんな邦題になっているのか皆目見当がつかない。原題は、深海から昇ってきた奇怪な生物が豪華客船を襲うというストーリーを表している。で、「ザ・グリード」の「グリード」って一体何なんだろうか? テロリストたちの計画が「欲望に満ちた」ものだということを言っているんだろうか? それとも深海からの生物が人間をむさぼり食らうことを指しているんだろうか? 『ディープ・ライジング』でいいじゃないか。★

『追跡者』"U.S. Marshalls"
『逃亡者』(The Fugitive)でハリソン・フォードを追いかけた連邦保安官のトミー・リー・ジョーンズを主役に据えた続篇。"U.S. Marshalls"は連邦保安官のことだが、複数形になっていることに注意。『逃亡者』と『追跡者』の対照の妙が面白く、悪くはない邦題だ。唯一の問題は、「ついせきしゃ」が「とうぼうしゃ」ほど日本語としてこなれていないところだろうか。★★★。

『恋におぼれて』"Addicted to Love"
直訳調なら『恋愛中毒』。これを「おぼれて」としたのは良いセンスだろう。1980年代の青春映画っぽい匂いのする邦題だが、映画自体もそんな感じなので問題なし。★★★★。

『ラリー・フリント』"The People vs. Larry Flint"
原題は「合衆国人民対ラリー・フリント」。国が原告となって行われる裁判のことである。『ラリー・フリント裁判』でも良かったかもしれないが、まあ別にこれでもいいか。★★★。

『バウンド』"Bound"
過去分詞をそのままカタカナ語にしている珍しい例(名詞の可能性もあり)。まあそれはいいんだが、日本語の語感だと自動詞のboundの意味(ボールがバウンドする)の意味の方が強いと思う。勘違いしている人がいるんじゃないかと不安だ。イントネーションが違うから大丈夫かな。★★★。

『Touchタッチ』"Touch"
変な邦題。有名なマンガを連想させることから、『タッチ』とはしたくなかったのかもしれない。この「タッチ」は、主人公のスキート・ウールリッチが手を触れるだけで人の病気や怪我を治してしまうという能力を指している。★★★。

『沈黙のジェラシー』"Hush"
原題の"Hush"は静かなこと。いわゆる「シーッ」がこの"hush"である。「ジェラシー」は、オリジナルにない言葉を英語で入れてしまうという悪い習慣であるだけでなく、この映画のテーマが嫉妬であるということのネタばらしにもなっている。★。

『めぐり逢い』"Love Affair"
レオ・マッケリーの1939年の『邂逅(めぐりあい)』"Love Affair"と1957年の『めぐり逢い』"An Affair to Remember"のリメイク。今回は邦題が『めぐり逢い』で原題が"Love Affair"。クイズに使えそうな複雑な関係だ。冷静に考えるとこの「めぐり逢い」というタイトルはストーリーをあまり適切には表していないのだが、映画史に燦然と輝くあの映画と「めぐり逢い」という語感はすでに切り離せないものになっている。それだけに、今回のリメイクの出来の悪さは悲惨なんだが。★★★

『ダイヤルM』"A Perfect Murder"
ヒッチコックの『ダイヤルMを廻せ!』"Dial M for Murder"のリメイク。本国でも製作中の発表タイトルは"Dial M for Murder"だったが、公開時には"A Perfect Murder"となった。邦題は、いまさら「廻せ!」もないだろうから(映画の中でもダイヤル式電話は使われていない)『ダイヤルM』が穏当なところだろうか。ところで、いまさら気づいたことなのだが、"Dial M for Murder"の"dial"は動詞なのに、邦題では何か「ダイヤルM」という「もの」が存在するような訳になっている。いままで気づかなかったのが不覚だったが、逆に『ダイヤルMを廻せ!』という邦題がうますぎたということなんだろう。★★★

『世界中がアイ・ラブ・ユー』"Everyone Says I Love You"
これは見事な邦題。「世界中」としたところと、「アイ・ラブ・ユー」と英語のままにしたところ。全体的なリズムも良く(七・七調)、手練れのコピーライターの作品だろう。何よりもこの可愛い感じが映画にぴったりで、原題よりもいいかも。★★★★★。

『素晴らしき日』"One Fine Day"
この"fine"が「素晴らしき」なのかどうかは難しいところ。もうちょっと弱いんじゃないかとも思うが確信はない。邦題では、これが"one day"であることが強調されていないのが少し不満で、『素晴らしき一日』の方が良かったと思う。しかしいずれにせよ、これは50年ぐらい前の映画の邦題なんじゃないかと錯覚するぐらい古めかしい。★★。

『コレクター』"Kiss the Girls"
ジェイムズ・パタースンの『キス・ザ・ガールズ』の映画化。ジョン・ファウルズの『コレクター』のリメイクと勘違いした人がいたんではなかろうか。原題は、若い女性を誘拐して閉じ込めている悪人が、彼女たちを完全に支配し、一堂に集めて、"kiss the girls!"と叫びながらキスしていくという悪夢のような情景を表している。ニュアンスはずいぶん違うが、王様ゲームみたいなパーティ・ゲームに使われるかけ声のようなもの。★。

『マイ・フレンド・メモリー』"The Mighty"
「隣の家に不治の病を持つ少年が引っ越してきた」というプロットだけが共通している『マイ・フレンド・フォーエバー』からの連想と思われる。でも『マイ・フレンド・フォーエバー』の原題は"The Cure"なのである。そもそも『マイ・フレンド・メモリー』と言われても、別に「メモリー」がどうこうするわけじゃない。むしろ、隣家の友人と一緒に遊ぶ楽しい情景の方が圧倒的に多い映画だ。原題の"The Mighty"は、原作の"Freak the Mighty"から来ており、身体障害者のキーラン・カルキンが演じる「かたわ」(freak)の少年が、実は偉大な力を持つというアーサー王伝説を背景とした寓話。映画の中ではこのfreakという単語が頻繁に使われているが、さすがにタイトルには使えなかったのか。邦題はそれよりも悪くて★。

『ディアボロス/悪魔の扉』"The Devil's Advocate"
凝っているのかどうかよくわからない邦題。原題の"The Devil's Advocate"は「悪魔の代弁者」と訳されることがあるが、議論を進めるために敢えて反対の立場を擁護する人のこと。もともとカトリック教会の「列聖調査審問検事」でラテン語ではadvocatus diaboli。邦題の「ディアボロス」は、ラテン語のdiabolus(悪魔)から来ている。原題の洒落たところは、もともとdevil's advocateっぽい仕事である弁護士が勤めた弁護士事務所が、本物の悪魔の所有する事務所だったというところにある。邦題からは、この洒落っ気がすべて抜け落ちているが、代案を思いつくことはできないので★★。

『陰謀のセオリー』"Conspiracy Theory"
普通の直訳のように見えるが、日本語の「セオリー」は単なる理論というよりも、「方針」とか「戦術」のような意味合いを持っているように思う(「初巡は風牌を切らないのがセオリー」など)。普通に訳すならば、これは「陰謀説」とか「陰謀学説」とされるもの。ニュートラルの★★★。

『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』"Wag the Dog"
原題の"Wag the Dog"は、普通ならば犬が尾(tail)を振る(wag)のだが、その逆の"The tail wags the dog"というシチュエーション。主客転倒的な因果関係/影響関係のこと。邦題の『ウワサの真相』の部分は、月刊誌の『噂の真相』からの連想か。『ワグ・ザ・ドッグ』の部分は、平均的日本人には単なる呪文にしか見えないと思うが、今後、この映画に言及するときに普通の人はたぶん『ウワサの真相』とは言わず、『ワグ・ザ・ドッグ』と言うことになるだろう。だから、『ワグ・ザ・ドッグ/ウワサの真相』の方が良かったんではないか。まあつまらない映画なんでどうでもいいんだが。ニュートラルの★★★。

『CUBE』"Cube"
奇怪なキューブ状の構造物の中に男女7名が閉じ込められるソ連製SFのようなカナダ映画。『立方体』もアリかもしれないが、まあ無難な方がいいか。『キューブ』でなく『CUBE』としたところに注目して、★★★★。

『フラッド』"Hard Rain"
原題は"Hard Rain"なのになぜ『フラッド』か、と思うかもしれないが、実はこの映画、製作から公開までに紆余曲折あったらしく、その間にアメリカ国内での公開タイトルが"The Flood"から"Hard Rain"に変わったようだ。こういうケースがあるので気をつけなくてはならない。この映画、私は割と好きなのだが、その思い入れのせいか『ハード・レイン』の方がかっこいいよくて映画に合っている気がする。ニュートラルの★★★。

『6デイズ7ナイツ』"Six Days Seven Nights"
カタカナにすればかっこいいが、何のことはない「6泊7日」という意味。ちなみに「デイズ」と「ナイツ」というように複数形が使われていることに注意。『6デイ7ナイト』でなくてかろうじて良かったか。ニュートラルの★★★。

『恋愛小説家』"As Good As It Gets"
主人公のジャック・ニコルソンが恋愛小説作家。この邦題は稀に見る成功作だと思う。原題の"As Good As It Gets"は、ニコルソンを初めとする登場人物たちが揃って小さな幸せを手に入れるというニュアンスを持っているが、『アズ・グッド・アズ・イット・ゲッツ』という邦題が不可能なのは確実。ひねくれた性格のニコルソンが恋愛小説作家だということそのものが皮肉だという設定をうまく活かした邦題である。原題が"The Romance Writer"であってもおかしくない。ということで★★★★★。

『沈黙の陰謀』"The Patriot"
1992年の『沈黙の戦艦』(Under Siege)以降、スティーヴン・セガールの主演作に無理矢理「沈黙」という言葉を使うようになっている。別にシリーズ作ではない。問題なのは、この映画のように「陰謀」が「沈黙」というよりもむしろ大っぴらに行われる場合である(その意味では「陰謀」ですらない)。原題の"The Patriot"は、愛国を唱え、ウイルスによるテロをもくろむ国粋主義者たちに立ち向かうセガールの方こそが「愛国者」であるという含みを持っている。トム・クランシーの"Patriot Games"が『パトリオット・ゲーム』として公開されているので、『パトリオット』でも良いはず(あるいは『ペイトリオット』。個人的には、「パトリオット」って「パトラッシュ」とか「オットセイ」を連想させてちょっと馴染めない)。どうしても「沈黙」を使いたいのなら、むしろセガールの立場から見て『沈黙の薬草』とでもすれば良かった(冗談)。まあ仕方ねえなあということで『沈黙の陰謀』は★★

『シティ・オブ・エンジェル』"City of Angels"
細かいことだが、『シティ・オブ・エンジェルズ』と『シティ・オブ・エンジェル』でずいぶん印象が違ってくる。この映画はロサンゼルスに天使がいっぱいいるという話なので、複数形の方が良い。最近では定冠詞や語尾変化もそのままカタカナにしてOKになってきているから、『シティ・オブ・エンジェルズ』にして欲しかった。この理由から『シティ・オブ・エンジェル』は★★。

『セカンド・インパクト』"The Second Civil War"
原題の意味は「第二次内戦」。アメリカの話なので、「第二次南北戦争」と訳してもよい。同時期に製作・公開された『ディープ・インパクト』(Deep Impact)から連想した邦題だと思われるが、あちらの「インパクト」は隕石衝突という具体的なインパクトであるのに対し、こちらは別にインパクトとは関係ない。代案として『ザ・セカンド・シビル・ウォー』(ちょっと厳しいか)、『第二次南北戦争』(コスチューム・プレイみたいな印象で弱いか)などが考えられるが、いずれもピンと来ないので、苦し紛れとはいえ『セカンド・インパクト』は★★★。

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