邦題考4

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配給会社が外国映画の日本公開にあたって付ける邦題にケチをつけるという企画の第4弾。なお、この「邦題考」の★は、映画ではなく日本語タイトルの評点で、★3つは可もなく不可もないことを表します。

2001/1/11

『グラディエーター』"Gladiator"
従来は「剣闘士」と訳されてきた言葉。見世物として、観客の前で戦う人々。★★★

『ナインスゲート』"The Ninth Gate"
「9番目の門」。悪魔の力に通じる門で、映画ではオープニングからいきなり観客にこの門をくぐらせている。『13ウォーリアーズ』のように「ナイン・ゲーツ」にならなくてよかった。★★★

『永遠のアフリカ』"I Dreamed Of Africa"
イタリア人女性が一家でアフリカに移住して苦労したという自伝の映画化。「永遠」という感じはしない。★

『パーフェクト・ストーム』"The Perfect Storm"
「完璧な嵐」。アメリカ東海岸で、気象条件が重なって誕生した巨大なハリケーンを扱ったノンフィクションの映画化。★★★

『グリーンマイル』"The Green Mile"
死刑囚の独房の前の廊下の床が緑色なので、刑務所職員たちはこれを「グリーン・マイル」と呼んでいた。この"the mile"という言葉は、廊下を表す一般名詞としても使われていた。★★★

『スチュアート・リトル』"Stuart Little"
リトル家に養子としてやってきたネズミがスチュアートという名前だったので、スチュアート・リトルという名前になった。もちろんネズミだから小さいのだが、リトル一族がみんな小さいわけではない。★★★

『アステロイド』"Asteroid"
「小惑星」のこと。ただしこの映画で地球を襲う物体は、彗星(comet)と一緒に移動している小天体である。★★★

『霊視』"After Alice"
"Alice"は連続殺人事件の最初の被害者となった少女の名前。『不思議の国のアリス』のモチーフが用いられているが、ストーリーにはあまり連動していなかった。主人公の刑事がサイキックな能力を持ち、「霊」を見てしまう。「霊視」という日本語は造語だろう。★

『アイドル・ハンズ』"Idle Hands"
「空いている手は悪さをする」、つまり「小人閑居して不善をなす」というのに似ているが、ここでは性的なニュアンスが強い。キリスト教系の寄宿学校で、就寝時に両手が布団の上に出ているかどうかをチェックしにくる、というような現象と関連がある。この映画では、そのような「アイドル・ハンズ」(実際には手は1つ)が人を殺してまわる。★★★

『X―ファイル ザ・ムービー』"The X Files"
ワーキング・タイトルに"X Files: The Movie"というのがあった。『X―ファイル』という単数形はまずいんじゃないかと思うが、日本語の「ファイル」はたしかに複数形の意味で使われることもある。たとえば「捜査ファイル」は、ファイリングされている文書全体を指すように思われる。★★★

『13ウォーリアーズ』"The 13th Warrior"
これは凄い。これだと『第三の男』は「3メン」、『第七天国』は「7ヘブンズ」になりかねない。なお「ウォーリアーズ」と延ばすようだ。13人目の戦士は北欧人であってはならない、ということで、たまたまそこにいたアラブ人のアントニオ・バンデラスが一緒に戦うことになる。★

『ベリー・バッド・ウェディング』"Very Bad Things"
あくまでも"very bad"なのは"things"であり、結婚式はそんなに悪くない。なんとも奇怪な邦題。★

『アメリカの災難』"Flirting with Disaster"
「災難をもてあそぶ」。主人公のベン・スティラーが、実の両親を探す過程でさまざまな災難に出会う。現代のアメリカ文化を皮肉った内容なので「アメリカの災難」としたのだろう。★

『逢いたくて』"To Gillian on Her 37th Birthday"
投げやりな邦題。Gillianは35歳のときに死んだ、ミシェル・ファイファー演じる女性。夫のピーター・ギャラガーは、2年経っても彼女のことを忘れることができない。ところで彼は夜になると浜辺に出て、彼女の幽霊と話をしているので、『逢いたくて』という邦題は不適切。毎晩会ってるんである。★

『ハバナ』"Havana"
キューバの首都。キューバの社会主義革命前夜の物語である。★★★

『真夜中のサバナ』"Midnight in the Garden of Good and Evil"
同名の原作の翻訳本のタイトルは『真夜中のサヴァナ』だった。ジョージア州サヴァナ(Savannah)を舞台にしたノンフィクションの映画化。★★

『ストレイト・ストーリー』"The Straight Story"
Alvin Straightさんが芝刈機で旅をする、実話をもとにした物語。もちろん形容詞のstraightの意味も含んだタイトルである。★★★

『スパイダーズ』"Spiders"
大きなクモが人を襲う映画。さすがに複数形。日本のグループ・サウンズの話ではない。★★★

『奇跡の海』"Breaking the Waves"
まさに「波を割って」、すなわち困難に打ち克って進むことだと思われる。邦題はラストのクライマックスのネタバレだが、バレても大したことがないネタなのでどうでもいい。★★

『スリー・キングス』"Three Kings"
映画の中では、キリスト生誕のときに訪れた「3人の王」の故事が語られていたが、この映画、主要登場人物が4人なんで困ってしまう。まあ、脚本上の調整はあるんだが。★★★

『プロジェクトS』"超級計画"
この映画、IMDBで見ると、英語タイトルが6つもある。そのうちの1つが"Project S"である。しかし、"Police Story 3 Part 2"、"Police Story 4: Project S"、"Police Story V"の3つが同じ映画のことを指しているというのは凄すぎる。★★★

『奇人たちの晩餐会』"Le diner de cons"
この場合の"cons"は「奇人」というよりも「バカ」、いやむしろ吉本新喜劇流の「アホ」である。そして、晩餐会を催している側のプチブルたちもやっぱりアホであるというニュアンスが、「奇人」にしてしまうと失われると思う。★★

『アンダーワールド』"Underworld"
あまりにストレートな内容。犯罪組織のいざこざをテーマとする犯罪映画である。★★★

『狂っちゃいないぜ』"Pushing Tin"
原題は「ぎりぎりまでやる」というていどのニュアンスだと思う(自信なし)。1959年に『狂っちゃいねえぜ』"Beat Girl"というイギリス映画があるが、こちらは『狂っちゃいないぜ』。★

『レインディア・ゲーム』"Reindeer Games"
"reindeer"はトナカイ。映画の中でタイトルの意味を説明していたが、忘れた。"game"は「獲物」ではなく「ゲーム」のことみたい。★★★

『キャリー2』"The Rage: Carrie 2"
『キャリー』の続篇。ただし、もちろんキャリーはすでに死んでおり、その異母姉妹にあたる少女に同じような事態が降りかかる。★★★

『エリン・ブロコビッチ』"Erin Brockovich"
主人公の名前。実在の人物である。★★★

『エニイ・ギブン・サンデー』"Any Given Sunday"
「どの日曜日にも」フットボールの試合がある(シーズン中は)。このカタカナ邦題はけっこう勇気が必要だったんではないか。★★★

『美しき家政婦/ウーマン・ウォンテッド』"Woman Wanted"
ホリー・ハンターが家政婦。これを「美しき」と呼んでいいかは微妙なところだと思う。いや、美しいとは思うが、第一属性は美しさではないもので。"Woman Wanted"は新聞広告に使われた文句。★★

『イグジステンズ』"eXistenZ"
映画に登場するバーチャル・リアリティのゲームの商品名。インターネットが普及しはじめて、クラッキングやソフトウェア・パイレシーを行うコミュニティで、"s"を"z"にするなどの表記が流行した。もともとアメリカ黒人の俗語として使われていたものだろうが、そういう書き方がクールだということになったのである。個人的には、こういうのはすでに古くてダサいものになりつつあると思う。映画の中ではたしかに「イグジステンズ」という発音をしている。★★★

『シージャック』"Die Todesfahrt der MS SeaStar"
ドイツ映画。日本でビデオ/DVDとして出ているものは、"Countdown at Sea"という英語タイトルの英語吹き替え版だが、原題は「シースター号の死の航海」という意味。テロリストが豪華客船シースター号を乗っ取る。★

『ボーン・コレクター』"The Bone Collector"
同名のジェフリー・ディーヴァーの原作の映画化。翻訳本のタイトルも同じである。連続殺人者が被害者の骨を集めている。★★★

『蜘蛛女』"Romeo is Bleeding"
主人公の刑事の名前がRomeo。ダメな男で、傷つきながらもがく。タイトルの「蜘蛛女」はヒロインのレナ・オリンのことを指していると思われる。視点を変えているという点でよくないタイトルだが、実際に映画を見ると『蜘蛛女』はぴったりという感じがしないでもない。★★★★

『ラスト・リミッツ 栄光なきアスリート』"Without Limits"
1960〜70年代に活躍した中距離走ランナー、スティーヴ・プリフォンティーンの伝記映画。この邦題の『ラスト・リミッツ』はどういう意味なのかわからない。そもそも「ラスト」を使いたいならば「ラスト・リミット」と単数形にするべきだろう。「栄光なき」の部分は、この人がオリンピックでメダルを獲得できなかったことを指しているのだが、この映画のセンチメントは、この人に栄光が「ある」という点にある。★

『恋する人魚たち』"Mermaids"
"mermaid"はメスの人魚のこと。オスは"merman"。映画中に、部屋の壁を青色に塗り、そこに魚などの姿を投影するシーンがある。ところで、下の娘のクリスティーナ・リッチは、まだ10歳なので恋はしないのだが、母親のシェール、娘のウィノナ・ライダーよりもマーメイド的である(父親は水泳選手で、本人も泳ぐのが好き)。だから『恋する人魚たち』という邦題は間違いだと思う。★

『シャイン』"Shine"
実在のピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットの半生を描いた映画。この人のイメージが"shine"、すなわち「光り輝く」である。★★★

『グレイスランド』"Finding Graceland"
Gracelandは、エルヴィス・プレスリーの邸宅の名前。エルヴィス・プレスリーのオフィシャル・サイトを参照。映画では、エルヴィスがテキサスからテネシー州メンフィスの自宅までヒッチハイクで旅をする。★★

『プロポーズ』"The Bachlor"
独身者のクリス・オドネルがレニー・ゼルウェガーにプロポーズする。ひどい映画なので、どうでもいい。★

『深海からの物体X』"Creatures from the Abyss"
邦題は『遊星から(より)の物体X』の真似。ちなみに『遊星から(より)の物体X』の原題は"The Thing"であり、かなりひどい邦題なのだが、この映画に関しては『深海からの物体X』というチープな邦題がぴったりと合っている。★★★

『ザ・ハッカー』"Takedown"
下村努の同名の原作の映画化。翻訳本は『テイクダウン』というタイトルになっている。"take down"という言葉は多義的だが、下村努がケヴィン・ミトニックを追い詰めてつかまえたことを指すだろう。つまり原題が下村の側に立っているのに対し、邦題はハッカー、すなわちミトニックの側に立っていると言える。こういうのにはわざわざ定冠詞の「ザ」をつけるのね。★

『クロッシング』"Blowback"
この邦題がどういう意味なのかまったくわからない。原題の"Blowback"は、狂った殺人者を政府が暗殺者として育成したところ、大変なことになったという意味。読書メモで取り上げているチャルマーズ・ジョンソンの『アメリカ帝国への報復』も同じタイトルである。日本語では「逆噴射」がぴったりくると思う。★

『スティル・クレイジー』"Still Crazy"
「いまでも気違い」。70年代ロックバンドの再結成の物語。中年になったオジサンたちがいまでもクレイジーであるということ。差別用語狩りの問題で、『気狂いピエロ』のTV放映に問題が生じたという話が以前あったことを思い出す。★★★

『アウトブレイク2000』"Runaway Virus"
『アウトブレイク』の二番煎じの邦題だが、もちろんぜんぜん違う映画。そもそもこの映画では、インフルエンザ・ウイルスの「大発生(outbreak)」がテーマなのではなく、原題にあるように、ウイルスのキャリアが追跡・捕捉不可能になるということがサスペンスの醸成手段となっている。★

『アメリカン・ヒストリーX』"American History X"
原題は、白人優越主義の兄の影響を受けているエドワード・ファーロングが、高校の校長から受ける個人授業のコース名。あんまり気の利いたタイトルではない。というか、ああいう授業が"X"であるということがピンと来ない。"X"の付かないアメリカ史の授業では何を教えているんだろうか。★★★

『ポゼスト 狂血』"Besat"
デンマーク映画。英語圏では"Possessed"というタイトルで公開されている。デンマーク語の"Besat"はおそらく同じ意味。ちなみに、"bessiddelse"が"possession"で、"besidde"が"possess"。"besat"はこれは過去分詞なんじゃないかと思うが、自信はないので信用しないように。副題の「狂血」は何のことかよくわからない。★★

『乱気流/ファイナル・ミッション』"Sonic Impact"
『乱気流/タービュランス』(1997)とも『乱気流/グランド・コントロール』(1998)ともまったく関係のないB級映画。ひどいことに「ファイナル・ミッション」という言葉をつけて、これがシリーズものの最終作であると見せかけている。『犯罪心理捜査官 最終章』と同じ悪辣なマーケティング。ちなみに、この映画にも『乱気流/グランド・コントロール』と同様に「乱気流」はほとんど登場しない。★

『アサインメント』"The Assignment"
(上から割り当てられた)「任務」、「仕事」のこと。主人公の海軍士官エイダン・クインが、テロリストを罠に仕掛けるために潜入任務を与えられる。★★★

『シングルズ』"Singles"
独身者たち。1990年代に入って、20代後半〜30代の年齢層の複数の独身男女の人間関係を描いた映画が急速に増えたように思う。80年代には、ティーンエージャーを含むもっと若い年齢層のドラマが多かったという印象がある。1990年代後半のティーンエージャー映画には、シニカルかコミカルなものが多い。★★★

『遠い空の向こうに』"October Sky"
「10月の空」。『レッド・オクトーバーを追え』というのがあるのだから、『オクトーバー・スカイ』でもよかったと思うのだが、雰囲気追求型邦題になった。ところで「遠い空」という表現はときどき聞くが、これはいったい何のことなのか。私の語感では、「遠い空の向こうに」の場合の「遠い空」からは地平線の上に見える空を連想する。しかし、この手作りロケット打ち上げをテーマにした映画での「遠い空」は、頭の上の空のことのように思える。2つのニュアンスはずいぶんと違う。原作の"Rocket Boys"のアナグラム。★

『アイズ・ワイド・シャット』"Eyes Wide Shut"
普通ならば"eyes wide open"のはずなのに、"shut"であるという洒落たタイトル。いろいろとうるさいキューブリック監督の作品であるがゆえ、変な邦題はつけられないのだろう(たとえ本人が死んでいても)。★★★

『ヒマラヤ杉に降る雪』"Snow Falling on Cedars"
原作の翻訳本のタイトル『殺人容疑』よりもはるかにまともな、直訳の邦題である。殺人容疑の裁判の進行中に大雪が降る。"cedar"はヒマラヤスギなので仕方がないのだが、アメリカ西海岸の小さな島を舞台にした話だということがわかりにくくなっている。★★

『心のままに』"Mr. Jones"
シンプルで味わいの深い原題を台無しにするバカ邦題。リチャード・ギア演じる躁鬱病患者がジョーンズさんであり、この"Mr. Jones"という言葉は映画の中で何度もいろんな人によって発せられる。精神病患者だからこそ、"Mr. Jones"という呼ばれ方をするという微妙なニュアンスがある。邦題については、論じる気にならない。★

『アンドリューNDR114』"Bicentinnial Man"
原題は「2世紀生きた男」という意味。邦題の「アンドリュー」はロボットに付けられた名前で「NDR114」は型番。このような邦題の問題は、今後、人々がこの映画について話すときに、「あのほら、なんだっけ、アンドリューNなんとかっていうロビン・ウィリアムズが出ている映画さあ」というふうに混乱が生じ、結局は「ロビン・ウィリアムズがロボットをやった映画」と呼ばれることになるということである。★

『パイソン』"Python"
「ニシキヘビ」のこと。ギリシャ神話のピュートーンはこれである。この映画ではニシキヘビをベースにいろんな毒蛇の遺伝子を追加した巨大なヘビが暴れ回る。★★★

『ダンシング・ヒーロー』"Strictly Ballroom"
これは何も考えていない邦題。原題の"ballroom"は「舞踏場」のこと。最近流行のいわゆる「社交ダンス」のようなタイプの「格調高い」踊り限定で、そのような伝統から外れる踊りはすべてダメというのが"strictly"の意味である。★

『クッキー・フォーチュン』"Cookie's Fortune"
「クッキー・フォーチュン」は何のことかわからない。"fortune cookie"との引っかけはたぶんあるだろうが、これはCookieという名の女性の(抽象的な意味での)「遺産」のこと。もちろん「運命」の意味もあるだろう。★

『アラクノフォビア』"Arachnophobia"
「クモ恐怖症」。arachnidが蛛形類。arachnologyが「クモ学」である。★★★

『レ・ミゼラブル』"Les Miserables"
いつの間にか、この話は「レ・ミゼラブル」という呼び名が定着してしまったようだ。★★★

『ロミオ&ジュリエット』"William Shakespeare's Romeo + Juliet"
最終的なタイトルが決まるまでに紆余曲折があったようだが、"William Shakespeare's"というフレーズが入っているのは、シェイクスピアの原作の忠実な映画化であるという主張なのだと思われる。舞台を現代に移した前衛映画なのだが、セリフは原作のまま使っている。なお、"Romeo + Juliet"というのはそうとう新鮮だが、『ロミオ&ジュリエット』はそのまんまである。★★

『ストーリー・オブ・ラブ』"Story Of Us"
「私たちの物語」という深みのある原題が、恐ろしく安っぽい邦題になってしまっている。だが、原題に深みがあっても、映画はきわめて浅薄なので、これでちょうどいいのかもしれない。原題には「私たちが私たちについて語る物語」というニュアンスがある。★

『自由な女神たち』"Polish Wedding"
ポーランド流の結婚式。デトロイトのポーランド系移民の生活を描く。(アメリカ人にとっては)エキゾチックな結婚式のシーンもある。この映画の邦題『自由な女神たち』と、ビデオ化の際の副題『ハッピー・ウェディング』はミスリーディングもいいところ。少なくとも表面的なテーマは、これらの文字列が与える印象とは正反対である。★

『キルトに綴る愛』"How to Make an American Quilt"
女性映画ということで「愛」という言葉をどうしても入れたかったのだろうけれども、原題は単に「アメリカのキルトの作り方」である。この映画のテーマから見て、『キルトに綴る愛』という邦題は反動的かもしれない。もっといろんなものが綴られている。また、文化人類学的な興味しかなかった主人公から見て、キルトを作るために小手先の技術以上のものが必要だということは、映画の中で語られる「新発見」なのである。とはいえ、語呂の良い邦題であることは間違いない。★★

『2 days トゥー・デイズ』"2 Days in the Valley"
LA郊外で2日間のうちにおこる出来事を描いている。★★

『ヒーロー/靴をなくした天使』"Hero"
この「天使」は、航空機事故の現場で乗客たちを救ったヒーローが、映画の中でangelと呼ばれるところから来ている。ちなみに、その現場でヒーローが靴をなくし、それが身元確認のための手がかりとなるというシンデレラ的プロットである。どうしても必要なのであれば、これは最良の部類に属する副題と言えるだろう。★★★★

『グッバイ・ラバー』"Goodbye Lover"
なるほど「グッドバイ・ラバー」にはならないのか。この『グッバイ・ラバー』という文字列をずーっと見つめていると、新しいゴム製品の名前のように見えてくる。「グッバイ」にするなら「グッバイ・ラヴァー」にした方がよくないか? ★★

『若草物語』"Little Women"
ルイザ・メイ・オルコットの『若草物語』の5回目の映画化。なお、「若草物語」という邦題を誰が思いついたのか知らないが、結果として現代日本語の語彙に大きな痕跡を残したことになる。たとえば「ああ無情」が「レ・ミゼラブル」になろうとも、「少公女」が「リトル・プリンセス」になろうとも、「若草物語」が「リトル・ウイメン」になるとはなかなか考えにくい。「若草」はもともと若い女性を表す古い言葉で適訳なのだが、「草」という言葉は英語ではあまりポジティブなイメージはなさそうだ(grassとかweedとか)。★★★★★

『BATS 蝙蝠地獄』"Bats"
「蝙蝠」を漢字で表記して珍しさを出そうとしたのだろうが、無駄なマーケティング努力だろう。コウモリが人間を襲うパニック映画で、『鳥』のコウモリ版であるという表現も虚しい駄作。★★

『インビジブル』"Hollow Man"
よくわからない。ワーキング・タイトルに"Invisible"というのがあったのだろうか? 「中身のない男」という意味だが、透明人間になるケヴィン・ベーコンが「薄っぺらな男」だという意味合いも込められているのかもしれない。★

『ウェイクアップ! ネッド』"Waking Ned"
「ネッドのお通夜」。"wake"は『フィネガンズ・ウェイク』と同じアイルランドのお通夜のこと。「ウェイクアップ!」ってのは正反対の意味になってしまう。日本の翻訳史上、何度も繰り返されてきた間違いである。この映画では誰もネッドが生き返ることを望んではいない。★

『フューネラル』"The Funeral"
「お葬式」。イタリア系マフィアの一族の末弟が殺されて葬式が行われる。★★★

『アベンジャーズ』"The Avengers"
「復讐者たち」。TVシリーズの邦題は『おしゃれ(秘)探偵』だった。英国の諜報部員もの。★★★

『ミステリー・メン』"Mystery Men"
『スーパーマン』とか『スパイダーマン』とか『バットマン』などの系譜の"man/men"である。原題にはもともとバカっぽいニュアンスがある。悪人が枯渇している時代におけるwanna-beヒーローたちの間抜けな活躍を描くコミックの映画化。★★★

『U.M.A.レイク・プラシッド』"Lake Placid"
日本でのマーケティングでは、このUMA(Unidentified Mysterious Animal)という言葉が前面に押し出されていたようだが、映画の中にはこの言葉は1回も出てこない。字幕に1回だけ「UMA」が出てくるが、登場人物は単に古生物学がどうこう言っているだけである。つまり、日本独自のバカ・マーケティング。UMAはネッシー、ツチノコ、河童などの「未確認動物」のことだが、この映画に出てくるクリーチャーはそもそも未確認動物ではないので、何でこんなマーケティングを行ったのか理解に苦しむ。原題の"Lake Placid"は「静かな湖」という意味を持つ地名だが、物語が展開する湖は、この名前がすでに使われていたために"Black Lake"(黒い湖)という名前になったという説明が映画の中で行われる。★

『L.A.救命士』"Broken Vessels"
L.A.のパラメディックの物語。マーティン・スコセッシの『救命士』よりも前に作られたインディペンデント映画である。原題は、「壊れた人間たち」という意味と同時に、麻薬の濫用で血管(blood vessels)がボロボロになったことも暗示していると思われる。『救命士』に便乗して付けられた邦題だが、そういう手段を使ってでも売り出す価値のある映画だと思う。★★

『ラスト・デイズ』"Chain of Command"
これは「ラストなんとか」とか「なんとかデイズ」などのタイトルからの安易なパクリだろう。「ラスト」も「デイズ」もまったく関係ない。原題は「指揮体系」のこと。アメリカ大統領の最高指揮官としての地位がいつどのような条件下で副大統領に移るかというテーマ。★

『あやしい奴ら』"Getting Away with Murder"
投げやりに付けられた邦題である可能性が高い。原題の「殺人を犯して逃げおおせる」には、二重の意味を持つという仕掛けがある。しかし映画自体がどうしようもないので、どうでもいい。★

『コンフェッション』"A Murder of Crows"
これはよくわからない。"Confession"というワーキング・タイトルがあったのか。原題は、映画のストーリーの軸となる本のタイトル。「カラスたちが犯した殺人」。★★

『ダブル・ジョパディー』"Double Jeopardy"
タイトルは「二重処罰(の禁止)」という意味の法律用語。"jeopardy"は「ある行為が有罪判決になりうる可能性」。本作の例では、主人公は夫殺しの罪ですでに有罪判決を受け、罰を受けているので、もう一回同じ人を殺しても罪にはならない。とは言ってもこれは実は嘘で、「二重処罰(の禁止)」は飽くまでも同じ行為に対する二重処罰が禁止されるということであり、別の殺人は別の殺人として裁かれる。カタカナ化は「ダブル・ジャパディー」の方がいいような気がする。『エグゼクティブ・デシジョン』や『クルーエル・インテンションズ』と肩を並べる大胆なカタカナ邦題。★★★

『マーシャル・ロー』"The Siege"
製作時のワーキング・タイトルが"Martial Law"だった。いわゆる「戒厳令」のことだが、国際的な戦争では「交戦法規」という意味になる。"siege"は「包囲」、「攻囲」。ブルックリンがアラブ系テロリストのターゲットになる。しかし率直にいって、この映画で描かれている事態はあまり"siege"という感じはしない。むしろ収容所に入れられるアラブ人たちの方が包囲されている。そこまで折り込んだタイトルなのかどうかは不明だが、たぶん違うだろう。★★★

『氷の接吻』"Eye of the Beholder"
『氷の微笑』と同じ悪女ものであるということから連想してつけられた安易な邦題なのだろう。原題は「見る人の目」。「美は見る人の目の中にある」などの使い方をするが、本作は窃視ものなのでもろに引っかけたタイトルである。ちなみに、あまり「氷」という感じはしない。★

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